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「外商投資産業指導目録」改正案を読み解く

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2017年3月22日

「外商投資産業指導目録」(以下「『目録』」という)は1995年に初めて公布されて以来、経済発展及び対外開放上の必要から、6回の改正が行われた。2016年12月7日、国家発改委、商務部は関係部門と共同で「目録」を改正し、2016年12月7日から2017年1月6日までの期間、パブリックコメントを募集した。※①

1.「目録(改正案)」の改正に至った背景

2016年10月8日に、商務部は「外商投資企業の設立及び変更届出管理暫定弁法」を公布し、国がその参入に対し特別管理措置を実施することが定められていない外商投資企業を設立し、変更する場合、届出管理が実施されることになった。同日、国家発改委、商務部は公告を行い、外商投資参入特別管理措置の対象範囲は、「目録」の制限類と禁止類、並びに奨励類中の持分・高級管理職に関する要求の関係規定に従い実施がなされることを明確にした。

この度の外商投資企業届出制改革に歩調を合わせようと、国家発改委、商務部は「目録」の改正を行い且つ「目録(改正案)」を発表し、制限類の項目を大幅に削減するとともに、外商投資に対するネガティブリスト管理の全面実施を実現するため、内容構成を調整し、奨励類で持分比率の要求のある項目、及び制限類、禁止類を外商投資参入特別管理措置(外商投資参入ネガティブリスト)へと一本化した。

「目録(改正案)」が社会に向けて発表された後、2016年12月28日に開催された国務院常務会議では、対外開放を拡大して外資を積極的に活用する政策措置、外資に対する「投資前の内国民待遇+ネガティブリスト」管理方式の全面実施の推進、「外商投資産業指導目録」及び関連政策法規を改正すること、外国投資者によるハイエンド・インテリジェント・エコなどの先端製造業、及びインダストリアルデザイン、現代物流などの生産型サービス業へのより多くの投資を奨励し、「中国製造2025」戦略の政策措置が同等に内資・外資企業に適用されることを改めて明らかにした。※②

2.「目録(改正案)」の主な内容

「目録(2015年版)」と比べると、「目録(改正案)」では、外商投資奨励産業目録、外商投資制限産業目録及び外商投資禁止産業目録のいずれについても改正を行っており、対外開放を一層拡大すると同時に、経済の発展に伴い、時代にそぐわなくなった個別の表現を調整した。

(1)外商投資奨励産業目録の主な改正内容

外商投資奨励産業目録のうち、持分比率に要求のある産業を減らし、外資比率の制限がなくなり、ネガティブリストに記載されていない産業であれば自由に従事することができるもの これまで通り優遇措置を受けるもの 坑内ガスの利用、自動車電子バス・ネットワーク技術、電気式パワーステアリング電子制御機器の製造とR&D、民間用衛星の設計と製造、民間用衛星ペイロードの製造、その他
優遇措置が取り消されるもの 軌道系交通輸送設備、海洋エンジニアリング装備(モジュールを含む)の製造と修理、船舶用低速・中速ディーゼルエンジン及びクランクシャフトの製造、総合水利中枢施設の建設・経営、会計、会計監査、その他
追加された奨励類産業 医療用映像設備中核部品再製造、複写機などのオフィス機器再製造、光モジュールの開発と製造、排煙脱硫設備、排煙除塵設備の製造、都市駐車場施設の建設・経営、その他
削除された奨励類産業 レーザー切断及び溶接プラント設備、レーザー精密加工設備、数値制御式低速ワイヤカット放電加工機、その他
調整された奨励類産業 「無汚染・無公害飼料及び添加剤の開発」が「安全・高効率・環境保全型飼料及び飼料添加剤の開発」へと調整され、 「第三世代以降のモバイル通信システムの携帯電話、基地局、コアネットワーク設備及びネットワーク検査設備の開発と製造」が「第四世代」へと調整された。その他

(2)外商投資制限、禁止産業目録の主な改正内容

外商投資に対する制限が取り消され、ネガティブリストから削除されたもの 貴金属(金、銀、白金族)の探査・採掘、リチウム鉱の採掘・選鉱、米・面粉・原料糖の加工、バイオ液体燃料(バイオマスエタノール、バイオディーゼル)の生産(中国側の持分支配)、道路旅客輸送会社、ビジネスジェット、遊覧飛行、撮影、鉱物探査、工業などの汎用航空会社、外国貿易船の積荷検数、信用調査と格付けサービスを提供する会社、自然保護区と国際的な重要湿地の建設・経営、その他
内資・外資の管理を一本化し、ネガティブリストから削除されたが、法律上の制限を受けるもの 大型テーマパークの建設・経営、軍事、警察、政治及び党校などの特別分野における教育機構、ゴルフ場・別荘の建設、賭博業(賭博性の競馬場を含む)、風俗業、その他
追加項目あり。
制限類/禁止類の産業を新たに追加した。
制限類産業:公共航空輸送会社に「法定代表者は中国国籍を有すること」との制限条件が追加された。従来の「食糧の買付、食糧・棉の卸売り」が「籾、小麦、トウモロコシの買付、卸売り」へと調整した。電力網の建設・経営(中国側の持分支配)、その他
禁止類の産業:地盤移動計測

3.「目録(改正案)」の適用

「目録(改正案)」によると、2015年版「目録」の93条の制限措置(奨励類のうち持分比率が要求された項目は19条、制限類の項目は38条、禁止類の項目は36条)が62条にまで削減され、外商投資企業は道路旅客輸送、外国貿易船の積荷検数、信用調査と格付けサービス、軌道系交通輸送設備、電気自動車の動力エネルギー源となるバッテリー、希有金属の製錬などに自由に従事することができるようになったが、電力網の建設・経営及び地盤移動計測においては、制限を受けることになる。

「目録(改正案)」の制限類及び禁止類産業目録から削除された「大型テーマパークの建設・経営、ゴルフ場・別荘の建設」などの項目については、外商投資企業がそれらに従事することができるようになったわけではなく、内資・外資一致原則に従ったものであり、以降は「目録(改正案)」に例示されないだけである。従って、外商投資参入特別管理措置(外商投資参入ネガティブリスト)対象外でありさえすれば、外商投資企業がそれらの産業に自由に従事できるというわけではなく、「ネガティブリスト」に記載されていなくとも、法律上、制限又は禁止される項目については、内資・外資を問わず、同様に制限し又は禁止されることになる。このような進め方は、中国が内資・外資企業に対し一致した管理政策を実施していこうとする動きが表れているものではあるが、多少なりとも不明瞭化を招くことにもなり、内資・外資を問わず制限又は禁止される産業を整理して列挙し、目録を別途作成しておくのがよい。

なお、ネガティブリスト制度を全面的に推進するため、従来の各自由貿易区のネガティブリストは全て廃止され、「目録(改正案)」が可決された後は、各自由貿易区(上海、広東、天津、福建地区)を含め、全国範囲で施行されることになるが、「大陸と香港とのより緊密な経済・貿易関係に向けた協定」及びその補充協定とサービス貿易協定、「大陸とマカオとのより緊密な経済・貿易関係に向けた協定」及びその補充協定とサービス貿易協定、「海峡両岸経済協力枠組み協定」及びその後の協定などの実施には影響しない。

(里兆法律事務所が2017年3月6日付で作成)

※① 下記のURLをご参照ください。
http://wzs.mofcom.gov.cn/article/n/201612/20161202088897.shtml
※② 下記のURLをご参照ください。
http://news.xinhuanet.com/mrdx/2016-12/30/c_135943775.htm

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