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中国不正競争防止法の改正の動きに焦点を当てる-改正草案送審稿からの改正草案-前篇

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2017年6月6日

中国現行「不正競争防止法」 (以下「現行の不正競争防止法」と言う)は1993年に施行されてからすでに20年余りが経過しているが、公平な競争の奨励と保護、経済の健全たる発展に重要な役割を果たしている。しかし、その間、市場経済が絶えず成長するにつれ、現行の不正競争防止法では経済成長の趨勢には次第に適応できなくなりつつあり、更なる見直しが速やかに行われる必要がある。このため、中国国務院法制事務室は2016年2月25日に国家工商総局より提出された「中華人民共和国不正競争防止法(改正草案送審稿)」 (以下「改正草案送審稿」と言う)を公表し意見を募り、そして各方面からの意見をもとに「中華人民共和国不正競争防止法(改正草案)」 (以下「改正草案」と言う)を完成させた。改正草案は2017年2月22日に中国全国人民代表大会常務委員会の第一回審議に提出され、2017年2月26日に意見公募手続きを行っている。

改正草案送審稿が公布された後、筆者はそれにつき寄稿し分析を行った。改正草案送審稿から今回の改正草案作成までに、係る条項、規定には一定の変更や調整が行われており、本稿ではこの2つの改正草案送審稿と改正草案を対照比較し、主な違いを整理し、現行の不正競争防止法に対し改正を行うことの立法趣旨と判断原則についての理解を深めたい。

一、「不正競争行為」の画定

改正草案第二条1、2項では、「事業者は市場取引において、自由意思、平等、公平、信義誠実の原則に則り、公認の商業モラルを遵守しなければならない」、「本法に言う不正競争行為とは、事業者が前項の規定に違反し、不正手段により市場取引を行い、他の事業者の適法な権益を毀損し、競争秩序を乱す行為を指す。」とそれぞれ定めている。

前述の2つの規定は、正と反の2つの視点から何をもって「不正競争行為」と画定するかについて定めている。改正草案送審稿と比べると、改正草案では行為の構成要件の方面で「不正手段により市場取引を行う」という内容が追加されており、ある行為が不正競争行為に該当するかどうかを一層客観的に評価し、判断しやすくなっている。同時にその行為によってもたらされる結果に関する要件の方面では、改正草案送審稿における「消費者の適法な権益を損なう」という内容が削除されており、このことは、不正競争防止法が事業者間の関係調整に重点を置いていることを意味するものであり、消費者の適法な権益が不正競争行為により侵害を受けた場合は、「消費者権益保護法」 を適用して救済を受けなければならないと考えられる。

なお、将来発生し得る様々な新しいタイプの不正競争行為を規範化し、立法の立ち遅れを克服するため、改正草案送審稿と改正草案はいずれも「その他不正競争行為」の認定に関する「雑則的条項」を定めている。改正草案送審稿では、不正競争防止法で明確に列挙し、定義付けが行われていない不正競争行為については、中国国務院工商行政管理部門がその認定を行うと定めていた。一方、改正草案では、その他不正競争行為は、中国国務院工商行政管理部門又は国務院工商行政管理部門が国務院の関係部門と共同で研究し、不正競争行為として認定するべきであるとの意見を中国国務院に提出してから、中国国務院が決定すると定めている。従って、将来、不正競争防止法第二条に定める基本原則に違反していながら、第二章で明確に規定されていない不正競争行為が実務で発生した場合は、中国国務院が最終的に認定することになる。

前述の規定により、認定がみだりに行われることをある程度回避し、法律適用の権威性と正確性を高めることができるものの、業界では「工商行政管理部門が認定意見を提出し、国務院が決定する」とした改正意見に対し疑疑問の声も上がっており、具体的には、工商行政管理部門及び国務院は行政機関であって法律の執行者であるため法解釈の権利はないこと、またもしも全ての「難題」について国務院の認定を必要とするならば、不正競争防止法執行の効率及び社会の利益に影響が生じるおそれがあると考え、不正競争防止法の正式文書では、法律で具体的規定のない「その他不正競争行為」については裁判所が解釈と認定と行うことをを明確にしておくのがより妥当であるとする意見が業界内から出ている。

二、重要ポイントとなる不正競争行為

(1)商業賄賂

改正草案送審稿では、「列挙+概念的定義」との形式を採用し、商業賄賂行為の特徴的概念と該当事例をかなり完全且つ明確に定めており、係る事業者の行為が列挙されている行為のいずれかに該当すれば商業賄賂に該当する、としていた。
しかし、改正草案では前述の立法形式を改めて変更し、商業賄賂について原則的規定を行うだけであり、ひいては、現行の不正競争防止法で明確に定めている「簿外でひそかにリベートを与え又は受け取る」行為を商業賄賂行為として列挙していない。改正草案送審稿と比べると、改正草案では「商業賄賂」行為を判断し認定するうえでの不確実性をもたらすことになり、司法、法執行実践及び企業の法令順守に対し明確且つ適切な指針を示すことができない。筆者が知る限りでは、改正草案の意見募集段階において、商業賄賂条項が現時点で最大の争点となっており、また各方面から反映された意見が最も多い条項である。最終稿において、改正草案における当該条項がこのまま残されるか、それとも変更されるのか、大きな不確実性が残されたままである。

また、改正草案送審稿の内容をベースに、改正草案では商業賄賂の相手方として「第三者」の範囲と性質について定めており、「職権を利用し取引に影響をもたらす可能性のある組織と個人」であることを明確にしている。従って、代理入札機関、評価機関、又は格付け機関、監査機関、取引の場となるウェブサイト、取引相手の関連会社、代理店、取次販売店、取引相手の政策決定者の近親者などを含む各種主体がこの中に組み入れられることが考えられる。従って、企業は実際の経営活動において、前述の第三者に経済的利益を供与し又は経済的利益の供与を約束することで、商業賄賂と認定されてしまわないよう注意する必要がある。

後篇へ続く

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