こんにちわ、ゲストさん

ログイン

合法的な奨励と商業賄賂との境界線を整理する(前篇)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

無料

2017年7月14日

-タイヤ企業数社が絡む上海工商局による商業賄賂疑惑調査案件へのコメント

第510期「里兆ニューズレター」において、上海市工商行政管理局及びこれに隷属する支局(以下併せて「上海工商局」という)が有名なタイヤ企業数社の商業賄賂疑惑で立件調査をしたという情報を紹介したが、これらの案件についての調査はほぼ終了しており、且つ行政処罰決定が行われた。

公示された行政処罰決定書によると、上海工商局に「商業賄賂」として認定されたタイヤ企業の行為は主に、所属ブラントのタイヤ製品の販売促進を行うために、「販売奨励金」、「インセンティブ旅行」などの名目で、売上/仕入量が一定の数量に達した代理店/小売業者などに対して買物券、旅行券、京東ギフト券を支給し又は「販促費用」の名目による金員支給、及び現物などの様々な方式により「奨励」を行うものであった。最終的に上海工商局はこれらの奨励行為を商業賄賂に認定し、関連企業を過料に処し、違法所得を没収した。

中国現行の「不正競争防止法」第8条第1項の規定によれば、「事業者は、商品を販売し又は購入するために、財物又はその他の手段で賄賂行為を行ってはならない。(※1)」としている。また、国家工商総局「商業賄賂行為禁止に関する暫定規定」第2条では、前述規定の「財物」と「その他の手段」を区別している。

1.「財物」とは現金と現物を指し、事業者が商品を販売し又は購入するために、販促費、宣伝費、協賛費、研究費、労務費、コンサルティング料金、手数料などの名目にかこつけ、又は諸費用を経費精算するなどの方式により、相手組織又は個人に財物を供与することが含まれる。
2.また、「その他の手段」とは各種の名目による国内・海外旅行、視察など、財物供与以外のその他の利益を供与する手段を指す。

上記案件において、上海工商局は、前述の規定に基づきタイヤ企業数社の行為に対して行政処罰の決定を行ったのである。

実践では、法令執行機関は、通常、主観的観点と客観的観点から、商業賄賂行為の構成要件を認定する。主観的観点においては、事業者が係る行為を実施した目的が「取引相手が、事業者のために取引機会又は競争の優位性を獲得するように仕向けるもの」であるかであり、客観的観点においては、事業者が「取引相手(相手組織又は個人)に対し、財物又はその他の経済的利益を支払った」かどうかである。例えば、上記案件のA社の事例を例にとると、法令執行機関の調査結果は以下の通りである。

A社は小売業者に対し、ある年度における四半期のタイヤ仕入数量を設定し、尚且つ小売業者がこの期間において取次販売店を通じて購入する同ブランドの製品は仕入目標の110%に達するか、又はそれを上回るという奨励条件をつけ、小売業者の購入した製品における係るブランド・シリーズのタイヤ数量と規格によって、1本あたり数十元前後の金額で小売業者に奨励を支払うとしていた。その後、上記の「奨励」を給付するために、A社は京東モールの電子ギフト券を購入した。

また、A社は冬用タイヤ現場受注会を開催し、小売業者がある特定の期日までに取次販売店から該当冬用タイヤ製品を購入した場合、数百本ごとに相応の金額の旅行券1枚を奨励として与えることを小売業者と約束した。その後、上記の「奨励」を給付するために、A社は第三者から旅行券を数枚購入した。

上述行為について、法令執行機関は次の通り判断した。A社が「奨励」などの名目で、正常な商品取引外で小売業者に対し買物券などの財物を与えた行為は主観的観点から見ると、製品の販売を促進し、所属ブランドの乗用車タイヤのシェアを高めることを目的としたものである。一方、客観的観点から見てみると、定額外の利益を供与したことで、川下の小売市場における事業者による取引相手及び商品の選択に影響を与えることになり、これによって、他の競合相手の取引獲得チャンスを奪うことになった。このような取引獲得チャンスの争奪は製品の品質向上、付帯サービスの向上、さらに合理的な製品価格設定などの市場における正常な競争手段を通じて実現されたものではなく、正常な商品代金とは別に財物を与えることで相手方を買収するものであり、尚且つ金額も高めであったことから、市場における正常な競争秩序に実質的影響をもたらし、このような定額外の利益供与を実施していない他の事業体の利益を損うものであると判断するに足りるものである。A社の本行為は「不正競争防止法」第八条第一項の規定に違反しており、財物により賄賂行為を行い、商品を販売したという商業賄賂行為に該当する。

上記の事例から、タイヤ販売業界においては、財物贈与の方式により「奨励」を供与する行為が普遍的に存在することが容易に見て取れるが、ビジネス活動における「販売奨励金」はいずれも違法であるのだろうか。筆者は、必ずしもそうとは限らないと考える。

後篇に続く

(里兆法律事務所が2017年3月1日付で作成)

(※1)2017年2月26日に公布された「不正競争防止法(改正草案)」は基本的にこの定義を踏襲し、尚且「取引に影響を与え得る第三者」を賄賂対象に追加した。つまり、事業者は財物又はその他手段により取引相手又は取引に影響を与え得る第三者へ賄賂を供与してはならない。取引相手又は取引に影響を与え得る第三者は賄賂を受け取ってはならない。現在、当該改正草案はすでに人民代表大会の審議段階に入っており、人民代表大会が社会に向けてパブリックコメントを募集している。

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ