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「会社法司法解釈(四)」を簡潔に読み解く

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2018年3月7日

通常、会社法には、投資・融資及びその撤退に関する法律制度、コーポレートガバナンスに関する法律制度、会社の合併・買収・組織再編に関する法律制度という3つの方面の制度が含まれる。2005年の「会社法」改正後、最高人民法院は直ちに「会社法司法解釈(一)」を公布し、新法と旧法との整合性を維持しながら適用するという問題を主に解決した。2008年と2011年には、最高人民法院は「会社法司法解釈(二)」と「会社法司法解釈(三)」をそれぞれ公布したが、主に株主の出資における紛争及び会社解散・清算時の紛争に係る事案審理における法律適用問題を解決するものであり、そのいずれも投資・融資及びその撤退に関する法律制度の範疇に該当する。

2016年4月12日、最高人民法院は「『中華人民共和国会社法』適用の若干問題に関する規定(四)」(意見募集案)(以下「『意見募集案』」という)を公布し、株主権利の保護及びコーポレートガバナンスをテーマとして、広くパブリックコメントを募集した。2017年8月28日、「会社法司法解釈(四)」が正式に公布され、会社決議の効力、株主の知る権利、利益配当、優先購入権及び株主代表訴訟という5つの方面から新たな解釈が行われた。以下、これらの内容について逐一解説する。

一、決議の效力上の瑕疵に関する訴訟制度を整備した

「会社法司法解釈(四)」では、主に以下の方面から、決議の效力上の瑕疵に関する訴訟についての法律適用規則を整備した。
1.会社決議の効力上の瑕疵の種類は3つあり、それぞれ、不存在、取消し、無効である。「会社法」第二十二条では、会社決議の取消しと無効の制度を規定しているが、取消しの場合も無効の場合も、論理的観点から見るならば、取消すことのできる又は無効と認められ得る対象が存在しなければならない。法理上、これを網羅するために、「会社法司法解釈(四)」は会社決議制度に関し、決議不存在確認制度を導入し、決議不存在に関する具体的なケース(※1)も明確に列挙した。
2.決議の効力をめぐる事案の原告範囲を明確にした。決議無効又は不存在を訴える原告には株主、董事、監事などが含まれること、決議の取消しをめぐる訴えの原告が提訴するときには株主の資格がなければならないことを定めた。
3.軽微な決議の瑕疵の許容制度を確立した。「会社法司法解釈(四)」第四条では、会議の招集手続き又は議決方法に軽微な瑕疵しかなく、決議に実質的な影響が生じない場合は、株主による取消し請求を認めないと定めた。
4.決議の無効又は決議の取消しの法的効力を明確に定めた。即ち、「株主会又は株主総会、董事会における決議が人民法院の判決によって無効又は取消しが確認された場合、会社が本決議に基づき善意の相手方と形成した民事法律関係は影響を受けないものとし」、内外の区別、善意の相手方の適法な利益を保護する原則を徹底させた。

上述した規定に関して、注意を傾けるに値するのは以下の2点である。
1.現時点でさらなる規範化が行われなければ、不存在確認制度と取消し制度の間に法条競合の状況が存在することになる。「会社法司法解釈(四)」では、決議不存在確認の請求権行使期間は定めていないのだが、決議の取消しは「会社法」第二十二条に定める60日の制限を受けることになる。実務において、この2つの請求権をどのように取捨選択するかは、権限ある機関によるさらなる解釈が必要とされる。
2.軽微な決議の瑕疵許容制度においては、瑕疵が株主、董事の実体的権利(例えば、会議への参加、意見表明、議決など)に影響し又は制限することはできない。さもなければ、議決の結果に影響しなくとも、決議手続きが違法であると認定されることによって決議が取消されてしまう可能性が極めて高くなる

二、株主の知る権利の保護を法に依拠して強化した

「会社法」第三十三条、第九十七条は、会社定款、決議などの文書資料を閲覧し複製する権利を株主に付与している。「会社法司法解釈(四)」第七条ないし第十二条では、株主の知る権利に係る紛争が実践で直面した論争の多い問題点について、以下の通り規定している。
1.有限責任会社の旧株主による制限付き訴権を規定している。つまり、旧株主はその持分保有期間において適法な権益が損害を受けたことを証明できる一応の証拠を有し、法に依拠してその持分保有期間における会社の特定文書資料の閲覧又は複製を請求する場合、法院はこれを受理しなければならない。
2.株主が会社の会計帳簿を閲覧する際にあり得る「不正な目的」を明確に列挙し、会社による閲覧拒絶権利の境界線を定めている(※2)。
3.会社は会社定款、株主間協議書などにより、法で定められた株主の知る権利を実質的に剥奪してはならないと規定している。
4.株主の知る権利の代理行使制度を規定し、株主は仲介機構の職員を起用して閲覧を補佐させることができるとした。
5.株主が閲覧できない場合の賠償制度を規定し、株主は法に依拠して職責を履行しなかった会社の董事、高級管理職に対し損失賠償を請求することができるとした。

なお、残念なことに、「意見募集案」第16条の規定「有限責任会社の株主が訴訟を通じて、会社の会計帳簿及び会計帳簿の記載内容に関連する記帳証憑又は原始証憑などの資料の閲覧を求める場合、法に依拠し受理されなければならない」と比べると、「会社法司法解釈(四)」では、会計帳簿の原始証憑は株主の知る権利の対象範囲に入れられていない。現在、実務では少なからぬ会社に「二重帳簿」の状況が存在しており、原資証憑による裏付けのなされない会計帳簿では、会社の財務状況を事実通りに反映することができないことが多い。

実際には、「原始証憑は株主の知る権利の対象範囲に該当するのかどうか」という争いについて、地方の司法実践では早くからこの行き詰まりを打開しており、江蘇省高級人民法院が2003年に公布した「会社法適用事案の審理に係る若干事項に関する意見(試行)」第66条では、「有限責任会社の株主は、前項規定に掲げる資料を閲覧する権利があるほか、董事会決議、会社帳簿及び係る原始証憑を閲覧することもできる」と明確に規定している。最高人民法院の本件問題における保守的な姿勢は、株主の知る権利を十分に守ることについて言うならば、かえって不利となってしまうかもしれない。

三、株主の利益配当権に対する司法救済を整備した

会社利益を配当するかどうか、どのように配当するかは、原則上、ビジネス判断及び会社の自主管理の範囲に該当するものであり、通常、司法が介入すべきものではない。しかしながら、近年、会社の大株主が「同一持分・同等の権利」の原則に違反し、小株主の利益配当権を損なうケースも時折発生していることを踏まえ、「会社法司法解釈(四)」第十五条では、「株主が具体的な配当方案を明記した株主会又は株主総会決議を会社に提出せずに配当利益を求める場合、人民法院はその訴訟請求を却下しなければならない。但し、法律規定に違反し、株主権利を濫用したことにより、会社が利益を配当せず、その他の株主に損失をもたらした場合は除く。」としている。

四、株主の優先購入権の行使及び損害の救済を規範化した

有限責任会社は人的繋がりがやや強いことから、「会社法」では、株主が株主以外の者に持分を譲渡する場合、その他の株主が同等の条件下で優先購入権を有することを規定している。但し、株主優先購入権の行使に関する通知、行使方法、行使期限、損害救済などに関して、会社法では具体的に規定されていない。「会社法司法解釈(四)」第十六条ないし第二十二条では係る内容に対し規定が追加されている。
1.株主優先購入権行使の手続き規則を細分化した。例えば、株主優先購入権の行使期限は、定款規定の期限、譲渡側株主の通知期限、及び30日の最短期限という順を追って確定しなければならない。「同等条件」の判断材料には、譲渡持分の数量、価格、支払方法・期限などが含まれていなければならない。
2.株主による一方的な譲渡の取消し及び損害救済制度を明確にした。会社株主の人的繋がりの利益を保護することは、株主優先購入権制度の立法の趣旨であり、その他の株主が持分を確実に譲り受けられるようにするためではないことから、「会社法司法解釈(四)」は、株主の一方的な譲渡取消し制度を規定した。また、譲渡側株主が当該規則を悪意をもって利用し、その他の株主の優先購入権を損害することを防ぐため、損害救済制度を規定した(※3)。
3.株主優先購入権を損害した持分譲渡契約の効力について明確にした。「会社法司法解釈(四)」の規定によると、このような契約は、原則として有効であり、株主以外の持分譲受人は、株主による優先購入権行使のため契約の目的を実現できなかった場合、法に依拠して譲渡側株主に対し係る民事責任を負うよう請求することができるとしている。

五、株主代表訴訟メカニズムの整備

●会社直接訴訟における会社の訴訟地位を明確にした。会社の董事会又は執行董事、監事会又は監事が会社の機関としてその法定の職責を履行するために会社を代表して提訴する場合、会社が原告となる。
●株主代表訴訟制度を整備した。「会社法司法解釈(四)」第二十四、第二十五、第二十六条では、株主代表訴訟における当事者地位、勝訴利益の帰属先、訴訟費用の負担などの問題について、それぞれ具体的な取扱規則を定めている。

(里兆法律事務所が2017年10月19日付で作成)

(※1)「会社法司法解釈(四)」第五条:株主会又は株主総会、董事会の決議に以下に列挙する状況のいずれかがある場合で、当事者が決議の不存在を主張する場合、人民法院はこれを認めなければならない。
(一)会社が会議を開催しなかった場合。但し、会社法第三十七条第二項又は会社定款において、株主会又は株主総会を開催せずに直接、決定を下すことができるとの規定があり、尚且つ株主全員が決定書にサイン、捺印している場合を除く。
(二)会議において決議事項について採決を行ていない場合。
(三)会議の出席者数又は株主が有する議決権が会社法又は会社定款の規定に適合していない場合。
(四)会議の採決結果が会社法又は会社定款規程の賛成の割合に適合していない場合。
(五)決議不存在となるその他状況。
(※2)「会社法司法解釈(四)」第九条:有限責任公司に、株主が下記のいずれかに該当することを証明できる証拠がある場合、人民法院は株主に会社法第三十三条第二項規定の「不正な目的」があることを認定しなければならない。
(一)株主が会社の主要業務と実質的な競争関係のある業務を自ら経営し、又は他者のために経営する場合。但し、会社定款に別段の規定又は全株主間で別段の約定がある場合は除く。
(二)株主が係る情報を他者に通報するために会社の会計帳簿を閲覧し、会社の適法な利益を損害する可能性がある場合。
(三)株主が会社に閲覧を申し出た日から遡って三年以内に、会社の会計帳簿を閲覧したことにより、他者に係る情報を通報し、会社の適法な利益を損害したことがある場合。
(四)その他、株主が不正な目的がある場合。

(※3)「会社法司法解釈(四)」第二十条:有限責任会社の譲渡側株主は、その他の株主が優先購入を主張した後、持分譲渡に同意しない場合、その他の株主による優先購入の主張を人民法院は認めない。但し、会社定款に別段の規定があり、又は全株主間で別段の約定がある場合は除く。その他の株主が譲渡側株主に対して行う損失賠償の主張が合理的である場合、人民法院はこれを認めなければならない。

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