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民事訴訟時効制度の概観

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2020年2月18日

2018年7月18日に「『中華人民共和国民法総則』訴訟時効制度適用の若干事項に関する最高人民法院による解釈」(以下「法釈[2018]12号文」という)が公布され、「中華人民共和国民法総則」(以下「『民法総則』」という)で定められていた訴訟時効制度の調整が行われた。「民法総則」及び法釈[2018]12号文の関連規定を踏まえ、調整後の訴訟時効制度を以下の通り簡潔に整理する。

一、訴訟時効制度が適用されない状況

継続して存在する特別な請求権が幾つかあることから、「民法総則」第196条ではこれらを明確に列挙し、訴訟時効制度の適用対象から除外した。一つ目は、、侵害差し止め、妨害の排除、危険性除去の請求であり、二つ目は、不動産物権及び登記された動産物権の権利者による財産の返還請求、三つ目は、養育費、扶養費又は扶助費の支払請求、四つ目は、その他、法に依拠し訴訟時効が適用されない請求権である。

上記の請求権に対しては訴訟時効制度が適用されないことから、権利者は自己の権利を守るために、これら請求権を随時行使することができる。  

二、訴訟時効期間

現在の中国法体系では、訴訟の時効期間を通常訴訟の時効期間と特別訴訟の時効期間という2タイプに分けており、通常訴訟の時効は「民法総則」及び法釈[2018]12号文をもって確定されるが、特別訴訟の時効は特別法に基づき規定される。

  1. 通常訴訟の時効期間

2017年10月1日以降、通常訴訟の時効期間は3年であり、「中華人民共和国民法通則」(以下「『民法通則』」という)で定められている2年の訴訟時効期間は以降適用されない。

また、通常訴訟の時効期間について、旧法から新法へ移行する際に生じ得る問題に注意を払わなければならない。つまり、2017年10月1日までの時点で、訴訟時効期間が「民法通則」で規定する2年又は1年が満了していなければ、3年の訴訟時効期間を適用することができる。「民法通則」で規定する2年又は1年の訴訟時効期間がすでに満了している場合は、3年の訴訟時効期間を適用することはできない。

  1. 特別訴訟の時効期間

「民法総則」第188条規定では、「法律に別段の定めがあるときは、その定めに従う」としている。係る法律で規定する特別な訴訟時効について、下表に簡潔に整理する。

期間

適用される状況

備考

90日

■「海商法」での、貨物運送における賠償責任を負う第三者に対する求償請求。

——

1年

■「海商法」での共同海損分担請求、海上曳航契約に基づく請求、海上貨物運送に係る運送人に対する損害賠償請求、第三者の死傷につき連帯賠償責任を負う船舶からその他の船舶に対する求償請求。

■「競売法」での、競売目的物の瑕疵について公告していなかったことによる賠償請求。

法釈[2018]12号文では、「民法通則」での下記事項について、1年の訴訟時効期間は以降適用しないことを明確にした。

■身体を負傷し、賠償を請求する場合。

■品質不合格の商品を販売し、未だ公告を行っていない場合。

■賃借料の支払を遅延し又は拒否している場合。

■預けた財物が紛失し又は破損した場合。

2年

■「海商法」に基づく航海傭船契約、海上旅客運送に係る運送人に対する賠償請求、船舶賃貸借契約に基づく請求、船舶衝突による請求、海難救助による請求、海上保険契約に基づく保険てん補額の支払請求。

■「民間航空法」に基づく航空輸送、地上の第三者に対する損害賠償。

■「製品品質法」に基づく製品欠陥による損害賠償。

■「特許法」に基づく特許権侵害に関するもの。

■「相続法」に基づく相続権をめぐる紛争。

■「保険法」に基づく生命保険以外の他の保険の被保険者又は受益者から保険者に対する賠償又は保険金の支払請求。

——

3年

■「海商法」に基づく船舶油濁損害請求。

■「環境保護法」に基づく環境損害に関する賠償。

——

4年

■「契約法」に基づく国際貨物売買契約及び技術輸出入契約をめぐる紛争。

——

5年

■「保険法」に基づく生命保険の被保険者又は受益者から保険者に対する保険金の支払請求。

——

三、訴訟時効の起算、停止及び中断

訴訟時効制度の核心は、訴訟時効期間の計算であり、また訴訟時効の起算、停止、中断は訴訟期間に影響する重要な要素である。訴訟時効の起算、訴訟時効の停止、訴訟時効の中断に関する制度について、以下に整理する。

項目

期間の計算

備考

訴訟時効の起算

権利者は権利が侵害を受けたこと及び義務者を知った又は知るべきであった日から計算する。

1. 起算点について:

■従来(2017年10月1日より前、以下同じ)は、権利が侵害を受けたことを知った又は知るべきであった時からの起算。

■現在(2017年10月1日以降、以下同じ)は、「権利が侵害を受け、尚且つ義務者を知った又は知るべきであった」日からの起算。

 

2. よくある特別訴訟時効の起算点について:

■同一債務の分割履行:最後の一期の履行期限の満了日から計算する。

■無因行為、不当利得:無因行為、不当利得に係る事実及び相手方当事者を知った又は知るべきであった日から計算する。

■履行期限を約定していない契約:期限がある場合には、履行期限の満了日から起算するが、履行期限がない場合は、債権者が債務者に義務履行を要求する猶予期間の満了日から計算する。ただし、債務者が債権者から初めて権利が主張された際に義務不履行を明確に表明したときは、債務者が義務不履行を明確に表明した日から計算する。

■なお、上記の特別訴訟時効の起算点は、状況により起算点が異なる場合もある。

訴訟時効停止

時効停止事由が解消されていない場合、時効停止の事由が解消された日から満6ヶ月になる日をもって、訴訟時効期間が満了する。

1. 訴訟時効停止の発生時期:訴訟時効期間の最後の6ヶ月間。

 

2. 停止事由が解消された後、残る訴訟時効期間については、

■従来は、6ヶ月以内。

■現在は、満6ヶ月になる日。

 

3. 訴訟時効の停止事由:

■不可抗力に該当する場合。

■権利侵害を受けた民事行為無能力者、制限民事行為能力者に法定代理人がなく、又は法定代理人の死亡、代理権喪失、行為能力を喪失している場合。

■相続開始後、相続人又は遺産管理人が未確定の場合。

■権利者が義務者又はその他の者に制御され、権利の主張ができない場合。

■その他、権利者が権利を主張できないことを招く客観的な状況。

訴訟時効中断

訴訟時効中断の場合、中断時、係る手続の終結時から、訴訟時効期間は改めて計算し直す。

1. 訴訟時効中断の起算点について:

■従来は、中断時からの起算。

■現在は、中断時、係る手続の終結時からの起算。

 

2. 訴訟時効の中断事由:

■権利者が義務者に履行の請求をした。

■義務者が義務履行に同意した。

■権利者が提訴し又は仲裁を申し立てた。

■その他、提訴又は仲裁申立と同等の効力を有する状況。

訴訟時効制度は権利者の権益と密接にかかわることから、企業は法定期間内に速やかに訴訟権利を行使するのが望ましい。

(里兆法律事務所が2018年10月23日付で作成)

 

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