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ログイン2025年9月9日
概要
全国人民大会常務委員会及び国務院が先頃相次いで公表した「2025年度立法作業計画」によれば、多方面の法律法規の制定と改正が行われることになっている。本文章では、企業に関係する「不正競争防止法」、「対外貿易法」、「渉外知的財産権紛争処理に関する国務院による規定」、「サイバーセキュリティ法」、「『中華人民共和国反外国制裁法』の実施に関する規定」「危険化学品安全法」を取り上げて考察し、企業が注目すべき内容を簡潔に紹介する。
本文
「全国人民代表大会常務委員会2025年度立法作業計画」[i]、「国務院2025年度立法作業計画」[ii](以下「2025年度立法作業計画」と総称する)が2025年5月に相次いで公表された。
全体として、2025年度の立法計画には企業に関係する内容が多く含まれており、関係する法規とその審議の進捗状況を以下簡潔に整理する。
法律/法規の名称 | 審議の進捗状況 |
民間経済促進法 (2月) | 全国人民代表大会常務委員会が審議を継続 |
不正競争防止法 (改正) | |
金融安定法 (8月) | |
中国人民銀行法 (改正) | |
危険化学品安全法 (10月) | |
金融法 | 全国人民代表大会常務委員会が初回審議を実施 |
企業倒産法 (改正) | |
銀行業監督管理法 (改正) | |
サイバーセキュリティ法 (改正) | |
食品安全法 (改正) | |
商標法(改正) | 全国人民代表大会常務委員会が予備審議を実施 |
消費税法 | |
対外貿易法改正草案 | 全国人民代表大会常務委員会に審議を付議する予定 |
税関法改正草案 | 全国人民代表大会常務委員会への付議を予定 |
出国入国管理法改正草案 | |
渉外知的財産権紛争処理に関する国務院による規定 | 国務院が制定予定(行政法規)
備考:現在既に制定・公表された |
「中華人民共和国反外国制裁法」実施に関する規定 |
解説その1:「不正競争防止法」
【立法の進捗状況】
1)2022年11月22日、国家市場監督管理総局が「不正競争防止法(改正草案意見募集稿)」を起草した。
2)2024年12月25日、全国人民代表大会常務委員会公式サイト上で「不正競争防止法(改正草案)」が公布された。
3)2025年度立法計画によると、「不正競争防止法」は、全国人民代表大会常務委員会が審議を続ける法律案にリストアップされている。
【考察ポイント】
1993年に制定された「不正競争防止法」は、2017年、2019年と2回の改正が行われているが、短期間のうちに再び新な改正が議題にあがるのは、市場主体の秩序ある競争の誘導と規制を重視する国の姿勢を十分に反映するものである。現在「不正競争防止法(改正)」は引き続き審議すべき法律案として数回の審議を経て、且つ全国人民代表大会常務委員会の第一読会を通過しており、現在の「不正競争防止法(改正草案)」について、企業は以下の注目すべき点に注意を払う必要がある。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
不正競争防止の全体としての要求がさらに明確にされている | 1) 不正競争防止の管理部門をさらに明確にし、従来の「県級以上の人民政府における工商行政管理職責を履行する部門」から「県級以上の政府の不正競争防止主管部門」へと明確にされている。(第5条)
2) プラットフォームの責任を強調し、プラットフォーム事業者は法に依拠しプラットフォームサービス協議と取引規則中でのプラットフォーム内の公正競争ルールを明確にし、適時に必要な措置を取り、プラットフォーム内の不正競争行為を制止しなければならないと定めた。(第6条) |
不正競争行為の類型と内容を最適化した | 1) 現行の賄賂実施禁止規定をベースとして、組織と個人は取引活動で賄賂を受け取ってはならないとの規定を追加した。(第8条)
2) インターネットによる不正競争監督管理制度を最適化し、事業者がデータ、アルゴリズム、プラットフォーム規則などを利用して、悪意ある取引などの不正競争行為を実施してはならないことを明確にした。(第13条) 3) 虚偽宣伝、不正な懸賞付販売、商業誹謗、優越的地位を濫用した中小企業の正当な権益の侵害などの不正競争行為に関する規定を最適化している。(第9条、第11条、第12条、第15条) |
厳しさと寛容さを使い分け、制裁の度合いを調整している | 1) 罰金額を引き上げた。組織の商業賄賂、商業誹謗の罰金の上限をいずれも300万元から500万元へと調整している。(第23、27条)
2) 本来の不正競争行為の認定を詳細化し、主観的過失のない混同商品の販売者に対しては行政処罰を科さず、販売停止を命じることした。(第22条) 3) 事情聴取メカニズムを設定し、法律を柔軟に執行できるようにした。事業者が本法の規定に違反した疑いがある場合、監督審査部門はその法定代表人又は責任者に事情聴取を行い、措置を講じて遅滞なく是正するよう求めることができるようにした。(第18条) 4) 商業賄賂の処罰対象は、従来は他人に賄賂を行う事業者だけに限定していたが、個人としての責任を負う法定代表人、主要責任者、直接責任者、及び取引において賄賂を受け取る組織と個人にまで拡大した。(第23条) |
解説その2:「対外貿易法」
【立法の進捗状況】
1)2024年9月13日、商務部は「対外貿易法(改正草案意見募集案)」に関するパブリックコメント募集の通知を発布した。
2)2025年度の立法計画によると、「対外貿易法」は全国人民代表大会常務委員会に審議を付議する予定の法律案にリストアップされている。
【考察ポイント】
「対外貿易法」は2022年に改正されたが、2年を経て再び改正されようとしている。経済のグローバル化が絶えず進んでいくにつれ、対外貿易が一国の経済のモデルチェンジとグレードアップにもたらす重要性は、グローバル・バリューチェーン分業体系において、ますます顕著になっており、企業は以下の内容に注意を払うとよい。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
貿易制度性開放を着実に拡大する | 1) 貿易における制度性開放の着実な拡大を強調する。規則、規制、管理等の制度を国際高い標準に合わせることにより、透明で安定した予想可能な制度環境を構築し、質の高い外資を誘致する。(第5条)
2) WTOの核心地位を重ねて言明し、後発発展途上国に積極的に市場を開放し、並びに高い標準自由貿易試験区のネットワークを拡大する。(第6条) |
対外貿易、経済貿易秩序を多面から規制することになる | 1) 「修理、再製造」を監督管理範囲に組み込み、輸入物資を修理し又は再加工して再輸出することを認める。同時に、法律上、国内販売の遵法性を初めて確認し、再輸出することのできない物資及び完成品については、割当額、許可証などの監督管理要求を満たしたうえで中国国内市場で販売できる、とした。(第22条)
2) 「サービス貿易総協定」の枠組みにおける4つのサービス貿易様態である、国境を超える取引(第1モード)、海外における消費(第2モード)、業務上の拠点を通じてのサービス提供(第3モード)、自然人の移動によるサービス提供(第4モード)を初めて立法に盛り込み、第3モードを除く他の3つの様態は越境サービス貿易であることを明確にし、外商投資と差異化した監督管理を実施することを明確にした。(第26条) 3) 越境サービス貿易の「ネガティブリスト」管理モデルを確立し、リスト上の分野においてのみ海外サービス提供者を制限し、リスト以外では全面的に開放する。第3モードには、「外商投資法」を適用することを明確にし、越境サービス貿易との二元的管理制度を形成し、監督管理の衝突を回避する。(第31条) 4) 対外経済貿易の規制をサプライチェーンの全プロセスへと拡大し、通関業者、物流会社、決済業者、ECプラットフォーム等の第三者が違法な輸出入に対しサービスを提供することを明確に禁止する。「知っておくべき推定」を導入し、直接の故意がなくとも、合理的な審査業務を果たさない場合(例えば、物流会社が貨物の品名が通関書類と違うことをチェックしていない等)、責任を問われることができる。(第39条) |
解説その3:「渉外知的財産権紛争処理に関する国務院による規定」(すでに制定、発布済み)
【立法の進捗状況】
2025年3月、国務院総理が第801号国務院令に署名し、「渉外知的財産権紛争処理に関する国務院による規定」が正式に発布され、5月1日から実施された。
【考察ポイント】
「渉外知的財産権紛争処理に関する国務院による規定」の立法過程は、国家が渉外知的財産権の保護を非常に重視していることを示している。2024年7月、司法部が意見募集案を公表して以来、1年近くの研究・実証及び制度の最適化を経て、ようやく正式な文書となった。企業は以下の内容に注意を払うとよい。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
企業知的財産権のコンプライアンス義務を強調している | 1) 企業がコンプライアンス意識を高め、内部の規則制度を構築し整備し、知的財産権分野の人材確保を進め、知的財産権の保護と運用の強化を明確にする(第11条)
2) 企業における渉外知的財産権の注意事項を強調し、企業が渉外知的財産権の活動を行う際に、遵法意識を高めるべきであり、法に依拠して生産活動を行い、自身の合法的権益を積極的に保護する。(第11条) |
解説その4:「サイバーセキュリティ法」
【立法の進捗状況】
1)2025年3月28日、国家インターネット情報弁公室は「サイバーセキュリティ法(改正草案意見再募集案)」について、パブリックコメントを改めて募集している。
2)2025年度の立法計画によると、「サイバーセキュリティ法」は全国人民代表大会常務委員会が初回審議を行う法律案にリストアップされている。
【考察ポイント】
「サイバーセキュリティ法」はサイバーセキュリティ分野の基礎的な法律として、2017年の施行以来、サイバースペースの主権、国家安全、社会公共の利益を守り、また法人とその他の組織の合法的権益を保護する等の分野で重要な役割を果たしている。今回の改正内容は多くの条項に関わるものであり、企業は以下の内容に注意を払うとよい。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
サイバーセキュリティに危害を加える行為に対する罰則を調整する | 1) 処分・処罰の精緻化を引き上げ、違法性質、主観的悪質性及び損害結果によって、違法行為を「一般的な違法行為」、「是正拒否又はサイバーセキュリティに危害を加えるなどの結果をもたらす」、「重大なサイバーセキュリティに危害を加える結果」、「非常に重要なサイバーセキュリティに危害を加える結果」などに分類し、それぞれに段階的措置処罰をもって対応する。(第59条)
2) 罰金額を引き上げ、サイバー運営者がサイバーセキュリティ保護義務を履行せず、関係部門から是正を命じられたにもかかわらず是正を拒否した場合、又はサイバーセキュリティに危害を加える結果をもたらした場合の罰金上限を十万から五十万に引き上げた。(第59条) 3) 軽微な事情の場合の免責メカニズムを導入し、サイバー運営者が違法行為の危害的結果を自主的に削除し又は軽減させ、違法行為が軽微であり、適時に是正し且つ危害の結果をもたらさず、又は初めての違法であり且つ危害の結果が軽微であり、適時に是正したなどの情況に対し、「行政処罰法」の規定に依拠し、処罰軽減又は行政処罰を与えないものとする。(第72条) |
法律新に追加し法律の空白を埋める | 1) セキュリティ認証セキュリティ検査を受けていない、又はセキュリティ認証に不合格であり、セキュリティ検査の要件を満たしていないネットワーク重要設備とサイバーセキュリティ専用製品の販売又は提供を規制する。(第61条) |
解説その5:「『中華人民共和国反外国制裁法』の実施に関する規定」(既に制定、発布済み)
【立法の進捗状況】
2025年3月24日、国務院総理が第803号国務院令に署名し、「『中華人民共和国反外国制裁法』の実施に関する規定」が正式に発布された。
【考察ポイント】
「『中華人民共和国反外国制裁法』の実施に関する規定」は、2021年に「反外国制裁法」が発効されて以来、中国が反制裁、反干渉、越境管轄権への反撃のための「ツールボックス」を更に充実させるための重要な取り組みである。企業は以下の内容に注意を払うとよい。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
反制裁措置の適用範囲を更に明確にした | 1) 不当な制限措置に対し反制裁措置を講じることを明確にした。具体的には、外国国が国際法と国際関係法の基本準則に違反し、諸々の口実又は自国の法律を依拠し中国を封じ込め、抑圧し、中国国民、組織に不当な制限措置を講じることである。(第3条)
2) 危害行為に対する直接の適用を強化し、「反外国制裁法」が「危害行為」に直接適用できることを明確にした。(第3条) |
反制裁措置を絶えず整備する | 1) ビザ及び出入国について:ビザの発行拒否、入国拒否、ビザの取り消し又は国外追放は、外事、国家移民管理局等の関係部門が職責と権限に従って実施する。(第6条)
2) 財産について:差押え、押収、凍結は公安、財政、自然資源、交通運輸、税関、市場監督管理、金融管理、知的財産権等の関係部門が職責と権限に従って実施する。反外国制裁法第六条のその他の各種類の財産には現金、手形、銀行貯金、有価証券、ファンド持分、株式、知的財産権、売掛金などの財産及び財産権利が含まれる。(第7条) 3) 取引連携について:中国国内の組織、個人が関連取引、連携などの活動を行うことを禁止し又は制限する。教育、科学技術、法律サービス、環境保護、経済貿易、文化、旅行、衛生、スポーツ分野の活動が含まれるが、これらに限定されない。(第8条) 4) その他の必要な措置:中国と関係する輸出入活動への従事の禁止又は制限、中国国内での投資の禁止又は制限、関係物資の輸出の禁止、データや個人情報の提供の禁止又は制限、関係者の中国国内での就労許可や滞在資格若しくは在留資格の取消又は制限を含むがこれらに限定されない。(第9条) |
解説その6:「危険化学品安全法」
【立法の進捗状況】
1)2024年12月25日、全国人民代表大会常務委員会は公式サイト上で「危険化学品安全法(草案)」を正式に公表し、パブリックコメントを募集した。
2)2025年度の立法計画によると、「危険化学品安全法」は全国人民代表大会常務委員会が審議を続ける法律案にリストアップされている。
【考察ポイント】
「危険化学品安全法」は、「危険化学品安全管理条例」を法律の次元に昇格させたものである。2017年初稿草案が公布されて以来、数回の審議が行われ、危険化学品分野の安全ガバナンス機能をさらに強化している。企業は下記の内容に注意を払うとよい。
注目すべき点 | 実際の条項文言 |
各主体の安全生産責任を強化した | 1) 企業の主体責任を強化し、「3つの管理と3の必須事項」の原則、即ち、業界を管理するには安全管理は必須であり、業務を管理するには安全管理は必須であり、生産経営を管理するには安全管理は必須であることを明確にした。(第4条)
2) 全員による安全生産責任制度を実施し、「二重予防メカニズム」を構築し、安全生産の基準化、情報化の制定を強化した。(第5条) 3) 安全生産責任を個々人に明確に割り当て、企業の主要責任者は本組織の危険化学品安全生産作業に対し全面的に責任を負うことを明確にした。(第5条) |
危険化学品の安全問題を多方面において昇格させた | 1) 危険化学品の生産と貯蔵における安全を強化した。危険化学品生産企業の管理者と従業員の条件を引き上げた。パイロット生産の危険化学品が販売する前の要求を明確にした。輸入企業が危険化学品のSDSとGHS標識を提供する義務があると明確にした。危険化学品の生産、貯蔵企業に対し安全リスク等級別管理制度とプロセス安全管理制度(PSM)を構築するよう求めた。自動化、情報化である本質的安全防護手段を強調し、自動制御システムと安全計装システムの整備を求めた。危険化学品の工程、技術、製品などの開発プロセスにおける安全管理要求を追加した。(第22条–第44条)
2) 危険化学品の使用における安全を強化した。危険化学品を使用する組織(企業、学校、科学研究、検査、医療機構等)は使用安全管理の規則制度を制定し、整備しなければならず、且つ危険化学品の種類と用量に応じて、安全リスク分類管理を行うこと、危険化学品を使用する専門技術人員は審査に合格すること、使用する組織は従業員に標識とSDSを提供し、応急措置を告知しなければならないことを明確にした。(第45条–第50条) 3) 危険化学品経営安全を強化した。劇毒物、爆発物生成可能な学品の許可、記録、届出などの管理要求を厳しくした。責任者と安全生産管理人員は審査に合格すると規定した。経営企業が危険化学品を販売する際に、法律法規を満たしたSDSと標識を提供しなければならない。インターネットを通じて劇毒物、爆発物生成可能な化学品を販売し、購入するこを禁止する。(第51条–第61条) 4) 危険化学品の運輸安全を強化する。危険化学品運輸車両の名義借り経営を明文化し禁止した。危険化学品荷送人が運送請負人に危険貨物託送リスト及びSDSを提供しなければならなく、危険化学品のパッキング(外部包装)に標識つけることを明確にした。危険化学品の不正混入が疑われる郵便物、宅配便に対し、関係部門はこれらを開封し、検査することができるとした。(第62条–第82条) |
(作者:里兆法律事務所 董紅軍、山月)
[i] 「全国人民代表大会常務委員会2025年度立法作業計画」は下記の通りである。
http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202505/P020250513550316685290.pdf。
[ii] 「国務院2025年度立法作業計画」は下記の通りである。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202505/content_7023697.htm。
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