藤田　康介

春節を迎え、上海では毎年この時期に十大ニュースの発表が行われる。これは、上海市新聞工作者協会ならびに上海の各新聞やテレビなどのメディアが選定するもので、その年に話題となったニュースを経済ニュースと社会ニュースにわけて発表する。

上海市の重点的な政策の1年間の成果が紹介されるので、非常に興味深いものとなる。ここでは、十大経済ニュースについて具体的に取り上げてみる。

１．上海国際航運中心の建設が大きく進展 

(洋山港）

　本サイトの中国ビジネス解説で度々取り上げられているのが、2005年12月10日に完成した洋山深水港区の第一期工事完成ならびに中国で初めての保税港区の完成だ。これは上海の世界戦略に大きな意味をもつ出来事の一ついえよう。さらに2005年12月22日には浦東国際空港の2期工事が全面的にスタートした。計画では今年中にターミナルビルの骨組みが完成し、北京オリンピックの2008年完成を目標に、急ピッチに工事が進められている。

　さらに、上海市の重点プロジェクトの50%以上を担当している上海建工集団では、すでに浦東国際空港と地下鉄2号線竜陽路を結んでいるリニアの施工技術をほぼ把握したと表明し、更なるリニアの商業利用へ一歩前進した形となっている。 

２．中国人民銀行上海総部の設立

 （陸家嘴にある中国人民銀行）

　2005年8月に中国人民銀行上海総部が設立された。この総部は主にこれまでの中国人民銀行上海分行の業務内容のほかに、外貨取引を行う中国外匯交易中心、不正金融取引の監督を行う中国反洗銭監測分析中心、人民銀行データー処理中心などの部門の管轄を直接行うほか、中国銀聯や上海黄金交易所の協調管理を行う。

これにより、中国人民銀行上海総部は中央銀行がおこなう銀行業務を履行するほかに、一定の金融管理機能を備えることになる。国際金融の中心を目指す上海にとっては、非常に重要な窓口となる。

３．上海不動産市場の健全な発展

（古北新区）

 　2005年の上海市の不動産市場は、引き続き厳しい規制政策が続けられた。上海市では「居住住宅を中心、市民による消費を中心、高級商品房物件ではなく普通商品房を中心」とするいわゆる「三個為主」政策のもと、主に中低所得層の市民が居住用の物件を購入できるように不動産価格の抑制に動いた。

　具体的にはインターネットを使って不動産取引の監視を強め、各地区の不動産交易センターにおける契約状況や違反行為がないかをチェックしている。また、不動産値上がり分に対しては営業税も導入された。また購入後1年以内の住宅ローンつきの物件に関しては転売を難しくし、転売による投機行為に制限をかけた。そういう意味では規制の多い1年であったといえる。 

４．上海非公経済38条 

　上海非公経済38条とは上海市発改委が2005年5月18日に制定した『上海貫徹「国務院関於鼓励支持和引導個体私営等非公有制経済発展的若干意見」的実施意見』の通称で、13項目38条に及ぶために「上海非公経済38条」と呼ばれている。

民営企業の発展が著しい浙江省などと比較して、上海では出遅れが指摘されていたが、ここにきて政府が本格的に民営企業の成長に本腰を入れ始めたことが伺われる。この中には、民営企業にあったさまざまな制限を順次なくしていき、公平な待遇と開放分野の拡大をうたっている。さらにこれら民営企業にハイテク科学技術産業への進出を促し、資金面でも政府がバックアップしていく。

また、民間資本が金融・物流・医療・教育・通信・文化などのいわゆる「現代サービス業」といわれる分野に投資できる環境をつくる。たとえば医療方面では市民に必要な基本的医療サービス以外での公立医療機構の改革、医療投資会社の設立なども認めていく方針だ。 

５．重大工業プロジェクトおよび現代製造業の発展 

　2005年6月、上海賽科（SECCO）が90万トンのエチレンクラッカーを稼動させた。このプロジェクトは、英国BPとSINOPEC（中国石化上海石油化工股有限公司）による共同出資。またハイテク関連では液晶関係のプロジェクトで、2005年11月に上海平板顕示産業基地としてNEC液晶顕示器有限公司が竣工した。 

６． 上海で現代サービス業集聚区の建設がはじまる 

　現代サービス業集聚区とは、第十一五ヵ年計画において、上海市が重点的に開発に取り組むプロジェクトの一つで、市内20箇所に計画されている。ここでは企業が開発、管理、営業、運営などの業務を総合的に一括して行えるようなインフラ設備を整えた地区で、大型のオフィスやSOHO用の小型オフィス空間も提供する。さらに弁護士事務所やコンサルティングなど企業の業務支援、ホテル・レストラン・サービス式アパートメントなどの商業施設もそなえる。

　その手始めとして、徐家匯の南に位置する漕河