●2007年のGDPは２回修正で4.3％増加
中国国家統計局は１月14日、2007年のGDP（国内総生産）の前年比実質成長率を、2008年
４月10日に公表した第１回修正の11.9％から13.0％に1.1ポイント上方修正した。この数
字は2008年1月24日に公表した速報値（11.4％）より1.6ポイント高い。

名目GDPの絶対数値では、今回の修正で25兆7,306億元、第１回修正値（24兆9,530億元）
と速報値（24兆6,619億元）よりそれぞれ7,776億元と１兆687億元も多く、２回の修正で2
007年の名目GDPは速報より4.3％も増加したのである。

今回の大幅な修正は内外から「憶測」を呼んでいることもあって、馬建堂・国家統計局長
は２月５日に記者取材に応じ、「米国の年度GDP統計は５回修正、カナダは３回修正、ド
イツは４回修正」の例を挙げて、中国のやり方は「国際慣例に沿ったもの」と強調している。

中国のGDP統計は速報公表後、２回修正するのが確かに「慣例」となっている。年度が終
わった20日以内（翌年１月後半）にまず速報値を公表し、翌年半ば頃に１回目の修正を、
同年末に２回目の修正を行なう（決定値の発表は翌翌年の１月になる）が普通である（馬
建堂・国家統計局長）。2007年のGDP統計の修正は「正常」といえるが、修正の幅はあま
りにも大きかったことも事実である。

例えば、2006年のGDP統計も２回修正されたが、２回目の修正値（決定値）は絶対金額で
速報より1.2％、前年比成長率で同0.9ポイントと、その幅が2007年GDPの修正より遥かに
小さい。また公表の時間では、2006年のGDP統計の１回目修正値と２回目修正値はそれぞ
れ翌年の７月と翌翌年の４月に公表されたもので、2007年のそれより約３か月遅いのも注
目される。

表１　　 2006年と 2007年の中国 GDP統計の修正

資料：中国国家統計局の発表による。

●2008年GDP統計：地方の合計は国の統計より約２兆元も多い
馬建堂・国家統計局長は、「中国の統計体制はなお改善の必要がある」と認めながら、
「真実・正確・可信（信頼できる）」という六つの字をもって、中国の統計を評価してい
る。しかし、中国のGDP統計に関して、中央の統計（国家統計局）は地方の統計とはいつ
も大きなずれがあることからみれば、その「真実・正確・可信」を疑うことも不思議では
ないようである。

2008年のGDP統計を取ってみると、国家統計局の発表では前年比実質成長率は９％となっ
ているが、各省・市・自治区の統計では北京市（９％）を除いて、いずれも９％を大きく
上回っている。うち内モンゴル自治区は17.5％、天津市は16.5％、吉林省は16％、陜西省
は15.6％、遼寧省は14.5に達している。

表２　 2008年全国及び 31省・市・自治区 GDPと成長率

資料：各省・市・自治区のデータは各地方の統計公報（速報）による。

国家統計局が発表した2008年中国の名目GDPは30兆670億元だったのに対して、各省・市・
自治区の統計は合計で全国の統計より約２兆元（１兆9,903億元）多い32兆573億元に達し
ている。両者の差額は、北京市と天津市のGDPの合計（１兆6,842）よりも多く、三つの雲
南省のGDPを上回っている。（2009年2月記2,005字）