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中国人社員の目に映った日本、日本人、日本企業(1)

中国ビジネスレポート 労務・人材
田中 則明

田中 則明

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2004年2月27日

<労務・人材>

中国人社員の目に映った日本、日本人、日本企業(1)

田中則明

 日本人と中国人は、今や庶民同士が袖擦り合って生活する時代を迎えている。日中交流史上、これは極めて画期的なことである。

 日本の大都市で電車に乗れば、あちこちから中国語が聞こえて来る。同じ職場で日本人と中国人が机を並べることは全く珍しくなくなっている。或いは、お互いが顧客になったり売り手なったりと、その関係も複雑化して来ている。或いは、日本の観光地にも一般の中国人が訪れるようになって来ている。相互往来は、日増しに高まっている。

 なぜ、これが画期的だと言えるのか?それは、従前は、日本人と中国人の庶民レベルの行き来というものが少なかったからである。長く深いお付き合いと一般に信じられている日中交流史をつぶさに調べてみると、庶民レベルのお付き合いが左程行なわれていなかったことが分かって来る。

 まさに「一衣帯水」、ドーバー海峡を挟むイギリスとフランスのように早くから王侯貴族から庶民に至るまで直接交流する機会があったのとは対照的なのである。

 その証拠を一つ挙げよう。日本語に「ちんぷんかんぷん」という言葉があるが、ほとんどの日本人はこれが大和言葉、ないしは日本固有の言葉だと思っている。しかし、中国語を「音」で学んでみると、「tingbudong kanbudong」という中国語がその語源であることに気付く。中国語の意味は、「聞いても、見ても分からない」という意味である。ことほど左様に、日本人は、生きた中国語の発音を長いこと耳にする機会に恵まれてこなかったのである。つまり、お互い会話をすることがなかったのである。

 今、日本人と中国人の距離がグッと縮まり、直接会話をするチャンスも急激に増えている。お互い、今まで神秘のベールに包まれていたものが、かなりはっきりと見え始めている。

 今回シリーズで取り上げるのは、中国人の側から見た、日本、日本人、日本企業である。日本にあるIT関連企業の独資会社(日本人は駐在しない、即ち、総経理以下全員が中国人)の従業員4人(いずれも大卒)が日本に半年滞在した折の感想文である。原文は中国語であるが、固有名詞を除き出来る限り原文に忠実に訳出した。

 元々これらの感想文は、日本人が読むことを想定していないので、その分、本音が語られており、日本人にとっては、興味深いものとなっている。


○M君―(1)

[男、2001年10月から6ヶ月日本滞在]

 2001年10月某日、飛行機が成田空港に着き、私はとうとう中国とは様々に絡み合った関係を有する国、日本に降り立った。一種の興奮と共にちょっと馴染めないという感じを覚えた。興奮したのは、初めて自国を離れたからで、ちょっと馴染めないと感じたのは、私の心の内では最初に訪れる外国が日本になることを目標とはしていなかったため、仕方ないなあ、という気持ちが生じたことによる。成田空港の出口で無事出迎えに来てくれていた○○さん(中国人)に会え、八王子へと向かう電車に乗り込み、研修生活が始まった。

 私は2001年の10月から2002年4月にかけて、半年間の研修を受けた。この6ヶ月間、主として・・・・の仕事を担当した。研修期間中、努力して学び、・・・・の技術に対する理解を深め、業務能力を向上させることが出来た。勿論、その間、○○さんや○○○さん(日本人)が公私にわたりいろいろと面倒を見てくださり、お陰で、すぐに研修環境に慣れることが出来、仕事もはかどった。

 以前にはこの国については、新聞や書籍等の媒体を通してしか情報が得られなかったが、今や研修によってその国の中に身を置くことになり、仕事上でも、生活上でも、日本社会に対して一定の理解が出来ることとなった。日本社会の道徳観、礼儀に対する考え方、日本人のセルフ・コントロール、及び日本社会の品質に対する意識、サービス精神、日本社会の富裕度など、いずれも私に深い印象を与え、発展した国とはどういうものか、高度に発展した工業文明とはどういうものか、本当の意味で理解することが出来るようになった。

◇日本社会における道徳と礼儀
人と会うときにはお辞儀をするというのが日本人の礼儀だなどと理解したのでは、全く不十分である。日本には数千年の歴史があり、その間独自の礼儀面での文化を培っており、それらは、日本社会のいろいろな方面に見られる。例えば、人の家を訪ねて、主人にお茶を振舞われた場合、客人はある決まった姿勢で茶碗を持ち、お茶を飲まなければならない。近代現代という工業化時代にあっても、日本人は実に巧みに固有の文化を保持し続け、且つその良さを引き出している。日本では、バス、電車に乗る時も、エスカレーターに乗る時も、あるいはレストラン、トイレに行く時も、進んで並び、押し合いへし合いがない。また、道を横断する際は、皆信号に従い、交差点では、車はきちっと停車線の中に停まり、横断者を待つようにしている。日本の道路を歩くと、とても清潔で気持ち良く、全てがきちっとしており、ゴミをむやみに投げ捨てる人がいないため、路面は極めて清潔に保たれている。

このような現象は日常生活だけではなく、ビジネスにおいても見られ、或る会社が経営上詐欺を働いたとなると、その会社は必ずや厳しく非難され、業界から締め出されてしまう。日本滞在期間中に、雪印がオーストラリアから輸入した牛肉を国産品と偽った事件が起きたが、この会社は、真相が暴露されてから社会の厳しい非難を浴び、最後には日本政府によって強制的に解散させられてしまった。

 私は、まさに、このようなセルフ・コントロールと社会的道徳感こそが、日本という国を豊かにし、世界トップクラスの先進国に押し上げたのだと思う。

(つづく)

(2004年2月記・2,413字)
心弦社代表 田中則明

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