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中国労働争議仲裁豆知識

中国ビジネスレポート 労務・人材
劉 新宇

劉 新宇

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2010年9月23日

記事概要

労働争議の解決手段としての訴訟については仲裁先置主義がとられており、現に多くの労働争議が仲裁によって最終解決を迎えるなど仲裁の重要性が高まっている。そこで、その対象となる労働争議の範囲、その具体的な手続などをQ&A形式で紹介するものとしたい。【2,049字】

労使間紛争の解決方法として、中国労働法(1994年7月5日公布、1995年1月1日施行)77条をはじめとする労働関連法令は、当事者双方による和解のほか、第三者機構による調停、仲裁、訴訟の4つを定めている。しかし、労働法79条のほか、2008年5月1日施行の労働争議調停仲裁法(2007年12月29日公布)5条、47条等によると、労働争議を解決する手段として当事者が選択可能なのは和解、調停、仲裁に限られ、労働争議にかかる訴訟の提起は、法律に別段の定めがある場合を除き、労働争議仲裁を行った後の段階でなければならないものとされている。

このように、労働争議の解決手段としての訴訟については仲裁先置主義がとられており、現に多くの労働争議が仲裁によって最終解決を迎えるなど仲裁の重要性が高まっている。そこで、その対象となる労働争議の範囲、その具体的な手続などをQ&A形式で紹介するものとしたい。

Q.労働争議仲裁委員会が受理する労使間紛争の範囲は?
A.各地の労働争議仲裁委員会が受理するのは、外商投資企業を含む中国法人とその従業員との間において発生した次の6つの労働争議、すなわち、①労働関係の確認をめぐる紛争、②労働契約の締結、履行、変更、解除、終了をめぐる紛争、③除名、解雇、退職、離職をめぐる紛争、④勤務時間、休憩休暇、社会保険、福利、研修、労働保護をめぐる紛争、⑤労働報酬、労災医療費、経済補償金等をめぐる紛争、⑥法令に定めるその他の労働紛争である。

Q.外国人労働者による労働争議仲裁の申立は可能?
A.「外国人在中就業管理規定」(1996年1月22日公布、同年5月1日公布)18条、22条等によると、中国において就業する外国人労働者も、その勤務先である中国国内の企業との間において労働争議が生じたとき、労働争議仲裁を申し立てることができる。ただし、その前提として、この外国人労働者が法の定めに従い「就業ビザ」、「就業許可証」、「居留証」を取得していること、かつ、「外国人就業許可証書」を有する中国国内の企業のため労働に従事していることが必要となる。

Q.労働争議仲裁の申立時効は?
A.現行労働法は、仲裁申立の期間を労働争議の発生日から60日以内と定めている。これは、労働争議の早期解決を図ることを目的とする規定であるが、実務的にみてこの期間はあまりに短く、かえって労働者の権益保護に不利な結果となっていた。そこで、労働争議調停仲裁法は、労働争議の早期解決を目的として、当事者がその権利を侵害されたことを知った時または知りうるべき時から1年以内であれば、仲裁の申立を認めるものとした。さらに、労働関係の存続期間において労働報酬の支払遅延により発生した労働争議については、この1年間を経過しても仲裁を申し立てることができる。ただし、労働関係が終了したときは、その終了日から1 年以内に仲裁を申し立てなければならない。

Q.労働争議仲裁における立証責任は?
A.原則として、労働争議仲裁の当事者は、自己の主張について立証責任を負うが、使用者の保管管理する人事ファイルなどの資料が必要な場合には、使用者がその提供義務を負う。その提供を拒んだ使用者は、自己に不利な仲裁結果を受忍しなければならない。

Q.労働争議仲裁の費用は?
A.労働争議仲裁の費用、すなわち労働争議仲裁委員会に支払う費用は、国家財政負担とされた。こうして、労働者が仲裁を申し立てる経済的負担が排除されたため、労働者による仲裁申立が大幅に増加している。

Q.労働争議仲裁委員会の管轄はどのように定まるか?
A.労働争議は、労働契約の履行地ないし使用者所在地に位置する労働争議仲裁委員会の管轄を受ける。当事者双方がそれぞれ労働契約の履行地、使用者所在地における労働争議仲裁委員会に対して同時に仲裁を申し立てたときは、労働契約履行地の同委員会の管轄が優先する。関連規定によると、「労働契約の履行地」とは、労働者が実際に勤務する場所、「使用者の所在地」とは、使用者の登録・登記地をいう。なお、仲裁申立が受理された後に、これら「労働契約の履行地」、「使用者所在地」に変更が生じたとしても、仲裁の管轄はその影響を受けない[1]

Q.労働争議はどのように審理されるか?
A.労働争議仲裁委員会は、「一案一廷」制度に則って労働争議を処理しなければならない。基本的に、仲裁は、仲裁委員会の下位組織である仲裁廷又は仲裁員がこれを担当するが、申立人が10人以上の集団事件、その影響が重大な事件、仲裁委員会が必要と判断したその他の事件については、3名の仲裁員が仲裁廷を構成し、そのうち1名が主任仲裁員を務める体制で仲裁が行われる。これ以外の労働争議は、1名の仲裁員が単独で仲裁を行う[2]

Q.労働争議仲裁の判断に不服があるときは?
A.労働争議仲裁委員会による仲裁判断や、同委員会の書面による不受理の裁決・決定・通知[3]を不服とするときは、仲裁判断書を受領した日から15日以内に、裁判所(人民法院)に訴えを提起することができる。

(2,049字)

[1]労働人事争議仲裁事件取扱規則12条。
[2]前注(2)13条。
[3]「労働争議の審理における法律適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の解釈」(2001年4月16日公布・施行)

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