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日系企業社員の告発状を読む(9)

中国ビジネスレポート 労務・人材
田中 則明

田中 則明

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2006年11月21日

記事概要

このシリーズを書いている過程で、数人の中国人の方から、「効果的な告発状、直訴状、親書を書きたいので、教えて欲しい」とのリクエストがありました。予想外のことでしたが、良く考えてみれば、「切なる思いを経営者、それも異文化というオブラートに包まれた経営者に直接正確に伝えるということ」は、そう簡単ではないのです。

  このシリーズを書いている過程で、数人の中国人の方から、「効果的な告発状、直訴状、親書を書きたいので、教えて欲しい」とのリクエストがありました。予想外のことでしたが、良く考えてみれば、「切なる思いを経営者、それも異文化というオブラートに包まれた経営者に直接正確に伝えるということ」は、そう簡単ではないのですね。中国人が中国人に書く手紙と日本人が日本人に書く手紙では、その形式や言葉使いや起承転結にかなりの違いがあるのですね。日系企業には、こうした、「本当の気持ち、本当の姿を直接伝えたい」とする中国人社員がかなりいるでしょうが、事の性質上、周りの日本人や日本滞在の経験者に「どう書いたらよいのか?」を聞くわけにはいかないでしょうから、やはり、書かれたものは、日本語であっても、すぐれて中国的なレターになってしまうのは無理もないでしょう。

「何とか、この思いを直接経営者に伝えたい」との切なる思いが、単なる言葉や手紙の形式の違いによって実現しないということは、大変大きな残念なことですし、書く側にとっても、経営者にとっても大変大きな損失と言わざるを得ません。

  実は、この稿で私は、もともと最後に「どうせ書くなら、こういうレターを書いたら効果があるはずですよ」という話に持って行こうと考えていました。つまり、そのような結論付けは、想定の範囲内だったと言えます。が、「教えてください」という声が届くことは、想定外でした。

  取り合えず、上記の中国人の方々には、「物事は“如理作意”、根源にある問題を把握し、ステップ・バイス・テップで思考して行かなければ、最終目的である『日本の経営者の心を揺さぶるレター』は書けませんよ。もう少し董事長の心理分析にお付き下さい」とお答えしております。

  さて、董事長の次の感想ですが、
○会社の問題=A総経理の問題、と単純化してしまっている。

  会社を経営しているものなら誰にとっても自明の理ですが、会社には実にいろいろな問題があり、社長一人が問題で、それ以外には問題がないなどということは夢にも考えられません。社員と社員、社員と社長、社員と顧客、会社と顧客、会社と地域社会・・・・・・・・。

  前に私は「企業に対する満足度」という問題に関して考察し、『中国投資・会社設立ガイドブック』(明日香出版社)のp.482に次のような形でまとめました。

 企業に対する満足度 と 満足度を測るものさし
 顧客の満足度      商品・サービスの品質
 株主の満足度      ROE
 経営者の満足度(10) 対外的アピール度
             外界に対する感度
             社員の定着率
             ベクトルの一致度
             情報の共有化・蓄積度
             定常業務推進力
             情報分析力
             意思決定力
             危機管理力
             開発力
 社員の満足度      千差万別

  これに基づいて、件の告発状の内容を見てみると、社員の満足度のうちの一つ「総経理が、能力的に見ても、人格的にみてもその任に耐えない」という一点に全ての問題を集約してしまっていることが分かります。

  一方、経営者(董事長)にとっては、社員の定着率も、ベクトルの一致も大事だが、何をおいても「定常業務推進力、開発力が決定的に不足している」ということが大事なのです。経営者の不満足度と社員の不満足度のベクトルが大きくズレてしまっています。

  社員から、個別に、千差万別のレター、「総経理がダメだ」「日本人駐在員がダメだ」「会社への交通の便がよくない」「トイレが汚い」「営業人員を全て入れ替えろ」「給料が低い」「長期計画がない」等等が経営者に寄せられたら、経営者はどう思うでしょうか、想像してみてください。
 恐らく、ため息を付き、「私の悩みが全然分かってないな」とつぶやくに違いありません。(続く)
(2006年11月記・1,513字)

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