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ログイン2007年10月26日
「人情」は3つのキーワードの中で日本人が一番理解しやすい感情ではないでしょうか。中国人の考え方と日本人の考え方がよく似ているからですが、冒頭で申し上げたように日本の「人情」よりもっとドロドロとした人間としての感情を感じさせられます。
「人情」は3つのキーワードの中で日本人が一番理解しやすい感情ではないでしょうか。
中国人の考え方と日本人の考え方がよく似ているからですが、冒頭で申し上げたように
日本の「人情」よりもっとドロドロとした人間としての感情を感じさせられます。
今からお話しする事件は私が体験したことではありませんが、当時新聞沙汰になった事件であり、人情に関する特徴的な一事例と言えるでしょう。
将を得ずんば馬を射よ
土地は全て国有で、ようやく土地の借地権の売買が少しずつ行われるようになった頃、闇の不動産ブローカーをしていたFは、市の一等地が売りに出されること知り、それを転売して一儲けしようとたくらんでいました。
彼は政府への登録も無く、もちろん正式の不動産取引ができる許可証もありません。
そこを何とか無許可でも土地を手に入れようとするのですから、このFという男も相当のしたたか者と言えます。
政府筋への「関係」を自分の友人知人を通じてあらゆる方向から探してみましたが、
上層部までにはつながるものは無く、ようやくたどり着いたのは下っ端の職員でした。その彼から得た情報は「決定権のある局長は全くの堅物で、賄賂や関係は今まで受け付けた事が無い」という中国では珍しい清廉潔白な名士であるということでした。
これでは取り付く島もありません。しかし彼から「局長は可愛そうに奥さんが病気で
入院されたのに、仕事が忙しくてなかなかお見舞いにも行けないらしい。」と聞かされた時、Fにはピン!と来るものがありました。
局長の奥さんの入院先を調べた彼は、早速果物籠を持ってお見舞いに行きました。
奥さんに会うと「局長にはいつもお世話になっています。私の友人も局長の下で仕事をしており、彼から『奥さんが入院されたにもかかわらず、局長はお仕事が忙しくてお見舞いに行く事ができない』とお聞きしましたので、日頃お世話になっている局長に恩返しをするためお見舞いに参りました。」と告げました。
それからは毎日のようにお見舞いに行き、体が痛い時は何時間も体をさすったり、
最後は下の世話までするほどの献身的な身の入れ方に、奥さんの方はすっかり感激してしまったのは言うまでもありません。なぜ見ず知らずの人がこんなに親切にしてくれるのか。こんないい人には今まで出会ったことがない。何か御礼をしなければと思うのは
普通の人であれば当然でしょう。
ある時、久し振りに局長が病院に見舞いに行くと、見知らぬ男がかいがいしく妻の
世話をしているではありませんか。彼は局長の姿を見るとすぐ立ち去ってしまいました。
局長が聞くまでもなく、奥さんの方から彼がどんなに優しい心を持った人かと言う事を話し始めました。私がいくら御礼をしようと思っても当たり前のことをしているだけだと言って受け取ってくれないと言う事も話しました。局長も「今度会った時には先程の人にお礼を言わなければいけないね。」と言いました。
次回、Fは元気の無い様子で奥さんの前に現れました。いつもと違う様子に訳を聞いてみると、「新しく開発する市街地の購入について入札権を持っているという友人を信用してお金を預けたが、その友人に騙され、お金も土地の入札の権利も失ってしまった。」と説明しました。奥さんは「不動産の件なら主人の管轄だから、私が主人に相談してみましょう。」と約束し、何とかするから元気を出すように励ましました。
後日、局長が奥さんの見舞いに来た時、奥さんはお世話になったあの人が困っているので何とか助けてあげて欲しいと夫に頼みました。でも局長は監督官庁の認可の問題や不動産の営業許可証の問題など、色々な点で無理だと言います。奥さんは「貴方もお礼を言わなければと言っていたし、貴方さえサインすれば許可を与えられるのでしょう。
あんなに一生懸命尽くしてくれた人が困っている時に何にもしてあげないのは人の道から外れてしまうわ。自分のできることをちょっと利用するだけで困っている恩人を救えるのだから。このようなことは他の人もみんなやっていることでしょ。貴方には人情というものが無いの?」と迫ります。
とうとう堅物の局長は、「他の者もやっていることだし、お世話になった人への恩返しに少しくらい今の権限を使っても構わないだろう」と自分自身に言い聞かせ、生まれて初めて彼のために便宜を計る事になりました。
最終的にFは持ち前の商才を生かして莫大な利益を得ましたが、この汚職事件が明るみに出て、局長まで逮捕されてしまいました。
堅物の局長を落とすには奥さんから手を回し、奥さんから人情がらみで夫を口説き落とさせたと言う、中国人の人情にからんだエピソードです。(2,007年10月記・1,926字)
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