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高付加価値アイスで市場攻略--明治乳業の事業戦略

中国ビジネスレポート 各業界事情
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2004年12月10日

<各業界事情>

高付加価値アイスで市場攻略
明治乳業の事業戦略

アジア・マーケット・レビュー 2004年11月1日号掲載記事)

 日本を代表する乳業メーカーの明治乳業が、アイスクリームの中国市場の中で存在感を示している。50億元市場といわれるアイスクリームマーケットで、高付加価値製品に特化するかたちで、現地製造販売する。中国でアイスを製造する唯一の日系メーカーとして、欧州の競合メーカー各社と戦う。

日本で培った製品開発カ

 中国の乳製品市場は近年、拡大の一途をたどっている。1人当たりの乳製品消費量は90年が4.4kgだったのが、2002年には9.7kgまで増加、今後5年から10年は年率15%の成長が予想されている。2015年には1人当たり30kgまでは達成するだろうとの見方もあるようだ。
 その中で、アイスクリームは乳製品全体の生産額350億から400億元のうち、50億元前後を占める。明治乳業はそのうち、5%の高付加価値製品の製造販売に注力し、欧州から中国に進出したネスレ、ユニリーバといった競合メーカーと熾烈な競争を現在も続けている。
 現地法人は「広東四明燕塘乳業」で、94年に3社合弁で広州に設立。明治乳業の出資比率は49%。工場が完成して稼働したのは96年から。合弁相手の燕塘企業は中国有数の大手食品メーカー。四洲集団は香港の食品貿易会社だ。93年に四洲集団に明治乳業の製品を販売し、テストマーケティングの結果が良かったことから、現地合弁事業に踏み切ったという。
 「日本アイス市場はここ10年間、横ばいで、今後も成長は難しい状況だ。それとは対照的に中国は成長市場。製品には自信があったので、あとは販売ルートを確立するため、合弁相手を探したわけだ」と明治乳業国際本部の江原伸広氏の説明。同社が日本で培ってきた製品開発・製造技術を広州工場でも活用して、消費者にスーパー、コンビニを通して販売。中国人の味覚をとらえた。

日本アイスがそのまま差別化

 明治乳業の製品特徴はいったい何なのか。「当社はあくまで高付加価値製品にこだわっており、平均1〜2元の価格帯ではなく、4〜5元の価格を狙っている。幸い日本製品の高級感が中国人にも認められた」(同氏)という。パッケージの表記が異なるだけで、中身は日本製とまったく同じ。地元の広州でとくに人気なのは「小豆、抹茶」といった純和風のアイスクリーム。日本独自の嗜好性から生まれた製品がそのまま中国人に受け入れられた。日本製品ということだけで、それが差別化になった。
 価格的なこともあり、消費者は20代前後の若い世代。上海では和風製品だけでなく、ブルーベリー、マンゴー、ミルクティーなど西洋風アイスも売れている。原料調達はほとんど現地で賄っており、今年度から2008年度の中国で人気の和風アイスクリーム間に1万キロリットルまで増産を計画。事業は着実に拡大している。
 現在のアイテム数は50種類。品数を増やしていくとともに、「明確なターゲットの絞り込みで、もっと明治のアイスらしさを追及していきたい」としており、製品開発の企画力を武器にさらなる躍進を目指す。

北京、上海市場の本格的な攻略へ

 今の拠点は広州のみだが、将来の市場拡大と売上げ増を目指して、北京、上海といった大都市圏の事業展開を視野に入れる。市販用アイスだけでなく日系レストランの進出を背景に、業務用アイス市場の成長も期待する。中国のアイス市場の特徴として、通年を通してあまり需要の波が少ないため、比較的コンスタントに製品が捌けるという。
 安定した製品需給も中国の魅力だ。日本の夏場製品といえば「かき氷」だが、明治乳業では8年前にかき氷アイスを中国で販売した。結果は「あまり売れませんでした。しかし、上海では店頭でクラッシュアイスの販売が行われていることを考えれば、需要は間違いなくある。日本製品らしい高級感あるかき氷アイスを今後開発して投入したい」(明治乳業)とのこと。

成熟市場になってからが勝負

 中国のアイスクリーム市場が今後もばら色とは限らない。「すでに緩やかな成長段階に入ったのでは」と明治乳業は見る。確かに青天井にアイス市場が伸びるとは信じがたい。同社は日本のアイス市場で長年厳しい戦いを繰り広げてきた。パイの奪い合いの中で、生きのこる術を心得ている。
 「ピンチをチャンスに変えてきたのが当社のアイスクリーム事業の歴史。そういうときこそ、製品企画力が生きてくる。後追いではなく、常に新しいものを市場に投入してきたことが、他社と違うところだ」と江原氏。
 中国で日系では同社だけが現地生産を行っているのは、そうした自信の現れかも知れない。「他の日系メーカーが現地工場を持たないのは、アイス事業の厳しさを十分に分かって価格競争が激しく、それに打ち勝つだけの企画力を要求される。欧州の競合メーカーも尻込みしている感もあるのでは」と明治乳業の中国事業の凄さは、底からわき出るような自信と実績にあるように思われる。
 他産業の事情と同様、ヒット商品が出ると必ず模倣品が出回る。小豆、抹茶アイスがヒットすれば、後から類似品がつぎづきと出てくるという。50アイテムからなる商品群をもっているからといって、決して油断はできないのだ。
 欧州メーカーが日本風のアイスをつくるのは難しい。そういう意味では、明治乳業の強さは本物だ。中国が急速に欧米化する中で、「日本らしさ」というブランドは今後どこまで通用するか。明治乳業の製品戦略はまさに「日本ブランド」の可能性を占う事例である。

(羽石竜示)

本記事は、アジア・マーケット・レヴュー掲載記事です。

アジア・マーケット・レヴューは企業活動という実践面からアジア地域の全産業をレポート。日本・アジア・世界の各視点から、種々のテーマにアプローチしたアジア地域専門の情報紙です。毎号中国関連記事も多数掲載されます。

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