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中国市場を攻める「複写機の白鯨」リコーの底カ

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2005年2月10日

<各業界事情>

中国市場を攻める「複写機の白鯨」リコーの底カ

アジア・マーケット・レビュー 2004年12月15日号掲載記事)

 「白鯨」が大陸を目指す。域内の売上げ1,O00億円の目標を掲げ、リコーの事業戦略が動き出した。キヤノン、富士ゼロックスとともに「複写機御三家」と呼ばれるだけあって、その実力は侮れない。世界で勝ち抜いてきたリコーだが、競争の激しい中国でいかに勝ち組となっていくのか。

中国はモノクロ複写機大国

 複写機が単なる「コピー機」ではなくなり、複合機能を備え、軽印刷分野でも活躍するようになった今日。メーカー各社が注力している製品は「カラー機」も含めた「MFP(複合機)」といえる。
 MFPは従来の複写機の概念を大きく広げた製品で、プリンタであり、ファックスであり、スキャナーでもあることから、中小規模オフィス向けを中心に需要が拡大。省スペース多機能が評価されている。低コストでプレゼン、販促資料などを作成するのに使用されているのがPPC(デジタル印刷機)。ユーザーが作成したデータからダイレクトにプリントでき、スピード、コストパフォーマンスを大きく向上させた。また、低価格化とニーズの多様化を背景にカラー機種も全世界的に伸びている。
 さて、中国ではどうか。外資合弁企業の進出が連日のように新聞マスコミで報道されている。これは複写機メーカーにとっては大きなビジネスチャンスなのだ。オフィス、工場が新設されれば、当然のごとく複写機の需要が発生する。業種、業界を選ばない、まさに万能製品である。
 ところが、中国の劇的な経済発展にもかかわらず、メーカーの表情は厳しい。利便性、高機能、高スピード、フルカラーといった製品のスペックよりも「価格訴求」という4文字が大きく立ちはだかる。沿岸部におもに進出する先進的な企業集団は、欧米ユーザー並のスペックを求める傾向にあるが、従来からの中国企業の考え方は依然としてモノクロ機であり、低価格なのだ。
 この壁を打ち破らない限り、真の意味で中国複写機市場を攻略したとはいえない。シャープ、東芝テック、コニカミノルタが中国で「新御三家」を形成しているが、世界の御三家の一角、リコーが来年からスタートする中国事業3カ年計画で、いよいよ本格的に複写機事業を始動する。圧倒的な品揃え、ソリューションを武器に「カラーの普及」を目指して…。
 リコー海外販売推進室のエキスパート、高野哲也室長は中国について語る。「中国は確かに低価格志向、モノクロ主体の傾向は否めない。調査会社やメーカー各社のカラー機、ハイセグメントの製品需要見通しは厳しい。だが、この見通しはメーカーサイドの取り組み方、戦略いかんで変わっていくもの」と断言する。
 この自信に満ちた言葉の背景には何があるのか。

中国の生産体制

 リコーはグローバルネットワーク体制をとる。日本、欧州、米国、中国、そしてアジアパシフィックの5つのエリアに分け、それぞれ事業の中核企業を設置。中国ではr理光(中国)投資有限公司」を上海に、シンガポールに「リコーアジアパシフィックPTE.LTD.」が統括機能を発揮する。
 中国におけるリコーの事業展開の歴史は古い。3段階に分けられる。第1段階は72年、輸出をべ一スにした時代。日中国交正常化後、商社経由での完成品(複写機)の輸出。84年から中国国営企業との技術提携による生産を広州、桂林で開始した。第2段階は91年からで、中国現地生産の本格的な開始である。複写機メーカーとして初めて中国でのフル生産を行う。複写機は侮[木ヘンに匡]、ファックスを上海でそれぞれ製造。95年には独資によるサービス会社を設立した。96年に英ゲステットナー社の買収により、独資の販売会社を取得して、製造から販売までの体制を確立する。第3段階として開発から製造販売までの一貫体制づくりを2003年ヨから取り組む。傘型企業形態をとった「理光・中国」の営業を同年1月から始めた。今年7月、「リコー・ソフト研究所(北京)有限公司」を100%出資で設立したのも、その一貫だ。
 現在、年問事業規模(輸出含む)は11,000億円、主要生産・開発拠点9カ所、販売サービス拠点22都市22カ所、グループ全従業員7,000名、うち営業部員250名を数える。91年に設立した深均11工場と当初ファクシミリの生産を主力にしてきた上海の両工場で、リコー製品の一大生産拠点として全世界に供給している。
 「当社のプリンタを含む画像システム事業はMFPとPPCを基盤としており、日本と海外の売上げべ一スでの割合は50対50。日本国内営業が伝統的に強いが、今後は海外事業もさらに大きく伸ばしていく。台数べースでは海外が80%と圧倒的だが、海外はローセグメントの比率も高い。中国がまさにローセグメント主体の市場であるが、それ以外にも、全世界的にMFPもLPもカラー機の投入で市場が再び伸びそうだ。中国市場においても2005年度にはカラー機販売だけでも中国全需は年間設置1,000台はいくと予想しているのだが。上海、北京を中心とした外資合弁企業を開拓していけば、そのくらいの数字になると思う」(高野氏)という。

代理店と直売の両面作戦

 生産体制は整った。販売戦略をどう展開していくか。コニカミノルタが中国でいよいよメーカー直売制に乗り出すなど中国マーケットにおける複写機業界は風雲急を告げる。高野氏はリコーの販売戦略をつぎのように説明する。「香港拠点を最初の足がかりとした当社の複写機事業は実はOEM(他社ブランド生産)がスタートだった。ゲステットナー社を買収したきっかけは同社のOEM取引だ。4年前にはレニエ社も買収した。ゲステットナー社が以前から中国で展開していた販売拠点を獲得したことで、短期間に効率的に販路構築を確立できた。今、中国の営業部門の雰囲気は活気に満ちており、来年からの3カ年計画に向けて奔走しているところだ。直売制については、やはり買収を契機に沿岸部を主体に行っている。もちろん、代理店制による売上げが大半ではあるが、直売と代理店の比率の見直しを検討中だ」。
 今、成長が著しい内陸部は新たな代理店契約で、ハイスペックなニーズの強い上海、北京など沿岸部は直売制中心にするという両面作戦でいく構えのようだ。とくに広州の外資企業の進出が最近目立っているが、同地域のような先進地域を重要エリアと位置づけ、「集中的に攻略していく」という。

中国でソリューションは有効か

 リコーの強みであるMFPの幅広い品揃えを中国でどう活かすか。中国はローセグメント中心であるが、同社はそれだけで攻めていくつもりはないようだ。「当社は一般普及機種だけでなく、広幅機、高速機などかなり奥行きのある製品ラインナップをもつ。おそらくそれに比肩できるのは富士ゼロックスくらいだろう。さきほどカラー機の普及について述べたが、充実したラインナップをうまく利用して、できるだけ高付加価値な市場も開拓するのが、売上げ拡大のポイントだ」(同氏)。
 オフィス向けのシステムで重要なのは、ソリューションといわれる。顧客のニーズに合わせシステム構築することで、文書管理、セキュリティーといったソフト面の支援を行う。だが、低価格志向の中国ユーザーに果たして通用するのか。高野氏は「それは非常に良い質問」と声高に応える。「日本、米国のユーザーは情報の漏洩問題に極めて敏感。常に厳しいチェックを怠らない。情報管理の重要性のきっかけとなったのは、米国で起こった大惨事9・11事件で、オフィスの崩壊とともに大事なデータが消失してしまったというケースがあった。こうした大きな惨事だけでなく、日ごろから複写機の利用で情報が漏れたり、なんらかのシステムダウンで消失したりということは、大いにあり得る。ユーザーからの直接的なニーズとして、カラー化や多機能化よりもソリューションを重視する声が現実に高まっている。MFPに対してもプリンティング、スキャニングオプションを備えた文書管理機能の高い機種が売れているのだ。中国でもそれとまったく同様の機種が販売好調だ。3年から5年後には欧米、日本と遜色ない程度に中国の複写機ユーザーのレベルは加速的に向上していくだろつ」。

リスク分散としてのサプライチェーン

 中国で事業展開する企業は多い。しかし、つねにリスク回避ということをメーカーは考えなければならない。リコーの場合、サプライチェーンマネージメントによって前述した世界5極体制を活用して、中国だけに生産を集中しないよう工夫している。
 中国工場ではユニットやモジュールを生産、それを各エリアの生産拠点で現地のユーザーからの要求する仕様に合わせ、完成品にするというもの。生産のリスク回避につながるだけでなく、在庫低減効果もある。
 昨年、発生したSARS事件のときにもサプライチェーンマネージメントが力を発揮した。「同マネージメントを活用して生産を前倒しで作り貯めして海外の他の生産拠点に分散したり、一時的に日本などに移管したおかげで、混乱を最小限にとどめることができ、ユーザーに迷惑をかけずに済んだ」と高野氏は振り返る。グローバル展開が適地生産・販売の考え方からリスク回避までを包含しており、他メーカーでも同様な体制づくりに取り組み中だ。

中国での勝利が世界王者の道

 中国でのナンバーワンシェアの確保はこれからの課題だが、リコーがアジアパシフィックエリアで2003年に、約20%のシェアを確保してナンバーワンに輝いた(1ぺ一ジ参照)。2004年も数字は正式に固まっていないが、引き続きトップだろうという。 リコーは来年度の見通しについて、「今年度は海外市場は好調であり、カラー機も順調だ。モノクロ機種も伸びている。さきほどの文書管理のニーズが高まっていることから、モノクロ機でもソリューションがしっかりしていればニーズに適合するからだ。これから、ソリューションベンダーと協力しながら、販売強化を図る」。
 中国は価格競争が激しい状況はしばらく続くと見られており、今のところ世界の御三家は中国で苦戦している。「長い目で見れば、世界の御三家は中国でもこのままでは終わらないだろう」と高野氏は締めくくった。
 競合メーカーが多い複写機業界。中国市場でも例外ではない。だが、日系メーカー同士の競争になっているのであり、その意味では中国の複写機は日の丸機種で占められているということだ。アジア諸国は中国だけでなくさらに複写機需要は拡大していく傾向。どれだけ複写機メーカー各社が売上げを伸ばせるかに興味がある。アジアが将来、複写機の生産から販売までの大市場になっていくのは間違いない。

(羽石竜示)

本記事は、アジア・マーケット・レヴュー掲載記事です。

アジア・マーケット・レヴューは企業活動という実践面からアジア地域の全産業をレポート。日本・アジア・世界の各視点から、種々のテーマにアプローチしたアジア地域専門の情報紙です。毎号中国関連記事も多数掲載されます。

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