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CRH新幹線型高速列車と外国技術導入

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2007年7月15日

記事概要

 2007年4月18日より中国全国で導入されたCRH新幹線型高速列車で、長江デルタエリア・珠江デルタエリア、環渤海エリアなど中国国内の都市圏の移動が非常に便利になった。区間によっては数時間の短縮もあり、夜行列車が必要でなくなったところも出始めている。

  2007年4月18日より中国全国で導入されたCRH新幹線型高速列車で、長江デルタエリア・珠江デルタエリア、環渤海エリアなど中国国内の都市圏の移動が非常に便利になった。区間によっては数時間の短縮もあり、夜行列車が必要でなくなったところも出始めている。

 高速鉄道導入といっても、貨物列車や寝台列車、普通客車が走る在来線での高速化であったため、最高時速は時速200キロ程度だが、これで在来線の高速化ではついに極限レベルに達した。その次の高速化は、いよいよ新幹線級の専用線の建設となるだろう。そのためには外国からの鉄道技術の導入は必要不可欠であった。新幹線型高速列車の導入に対して、一時は「純国産」であることを強調し、その舞台裏が明らかにされていなかったが、ここにきて様々な開発秘話が報道され始めている。

 

1.甘く見過ぎていたシーメンス社

 

 新華社の報道では、中国鉄道部は今回の高速列車技術の外国企業からの導入にあたって、かなり周到な準備を行っている。国内に十数社あると言われている鉄道関係の製造工場に関しては、今回の技術導入を認めた会社は四方股份と長客股份の2社に限定していた。ほかの企業に関しては外資系企業との接触を認めなかった。このことについて、鉄道部は「国家と民族の利益のため」とコメントしている。

 

 そこで、2004年にまずは採用確実と見られていたシーメンス社が入札に参加する。シーメンス社は、上海の地下鉄など中国国内での鉄道関連の実績は非常に多い。落札に自信をもっていたシーメンス社は、列車の価格を1編成3.5億人民元、技術移転費を3.9億ユーロで提示、この強気の姿勢は入札期限最終日まで変わらなかった。これに対して、中国側は列車の価格を1編成2.5億元、技術移転費を1.5億ユーロ以下でなければ、入札は成功しないと通告、それでもシーメンスは強気で変更する姿勢は見せなかったという。

 

 その結果、落札できたのは日本の川崎重工、カナダのボルバルディア社、フランスのアルストム社の3社となった。意外にも、その中にシーメンス社の名前は無かった。その後、シーメンス社の株価が下落、トップが辞任するなどの一連のゴタゴタが発生している。

 

 そして、再び翌2005年の入札にシーメンス社が列車価格を1編成2.5億元、技術移転費を8000万ユーロで提示、これにより中国は低価格での高速列車導入に成功している。関係者によれば、このプロジェクトだけで90億人民元の節約に成功したという。 さらに世界各国の高速鉄道導入と比較してもきわめて効率的に技術移転が行えたとしている。列車の導入価格にしても、スペインと比較して14%、韓国と比較しても20%、さらに台湾で導入された日本の新幹線と比較しても40%安く購入できたそうだ。

 

2.国産化を目指して

 

 こうやって導入された外国の技術を、今度は国産化する取り組みが行われる。関係者によれば、2004年から足かけ3年の時間を経て、中国は高速列車を開発するための9つの革新技術を把握したと宣言し、国産化率は70%に達しているという。

 さらに、今回導入された160編成の列車のうち、6編成は完成した列車を輸入し、12編成は部品輸入して中国国内で組み立て、142編成は外国企業の技術を吸収した国内企業が製造した。高速列車を単に走らせるだけでなく、もっぱら技術の掌握に力が注がれていることが分かる。

 今回の高速鉄道導入の契約では、製造技術や点検技術の中国側への導入のほかに、中国人技術者の育成も盛り込まれている。この鉄道高速化を契機に、一気に新技術を導入したい中国鉄道部の目論見がわかる。

さらに、設計段階でも中国側の要求が多く取り入れられている。たとえば、フランスのアルストム社の列車に対しては、オリジナルでは車体幅が2.9メートルしかなかったのに、中国での列車は3.3メートルに拡大された。さらに、北京-ハルビン線で運行されているCRH5型列車に関しては、列車全体の知的財産権が、中国に属しているという。

日本からの技術を導入したCRH2新幹線型列車にしてもまた然りで、中国側の製造会社である四方股份は、時速200キロの高速化技術から改良を加え、2008年度には登場すると見られている時速300キロクラスの高速列車の開発に成功したと報道されている。これは、北京-上海間の高速列車線建設に大きな役割を果たすものだ。

 

 いずれにしろ、この高速列車の導入で、中国の鉄道技術が短期間の間に飛躍的に向上したことには変わらない。その背景には、中国では、今後第十一五カ年計画期間中に、時速200キロクラスの高速鉄道を全国に7000キロ敷設する計画がある。これは、現在ある世界の高速鉄道網の総延長距離に匹敵するほどの規模で、このマーケットがいかに大きいかがわかる。これまで技術移転に非常に慎重だった世界各国の鉄道メーカーも、これは契機と続々と技術移転に乗り出した点は興味深い。(2007年7月記・2,000字)

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