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日中比較文化論(6)日本式サービスと中国式服務

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2007年12月10日

記事概要

 「サービス」と言う言葉を辞書で引くと、服務、接待、招待とあり、一般的に「サービス」は“服務”を用いる、と書いてあります。同じサービスでも日本式サービスと中国式服務では驚くべき違いがあることは、皆さんの中にも実際に経験された人がおられるかも知れません。なぜこのような現象が起こったのか、その背景を見てみましょう。

 新しいページ 1 「サービス」と言う言葉を辞書で引くと、服務、接待、招待とあり、一般的に「サービス」は“服務”を用いる、と書いてあります。同じサービスでも日本式サービスと中国式服務では驚くべき違いがあることは、皆さんの中にも実際に経験された人がおられるかも知れません。なぜこのような現象が起こったのか、その背景を見てみましょう。

 封建時代におけるサービスと言った概念は、身分の下の者が上の者に対して行う行為であり、主人に対していかにお仕えするか、どのように奉仕するか、ということが昔の服務のあり方であり、身分が対等の間の服務というものはありませんでした。これが広く一般庶民の間にも広がってきたのは、封建制度が崩壊し、社会主義国家となった

1949年以降からです。

新中国では「為人民服務!」(人民のために奉仕せよ!)と言ったスローガンに見られるように、プロレタリアート独裁、つまり「労働者こそ我が国の主人公である」と言うことを謳っている国ですので、本来なら他の国々よりももっとすばらしいサービス精神が培われて行くはずだったのですが、社会主義ならではの問題が立ちはだかっていて、大きく理想とは外れた方向に行ってしまったようです。   

 

働いても働かなくても給料は同じ

 「すべての人が等しく豊かになる」と言うのが社会主義中国の目指した方向ですが、理想とは裏腹に、「すべての人が等しく貧しい」という状態が続いていました。人民公社にみられるように、従来より個人単位で行っていた農業を集団で行う組織にし、給料制(配給制)にして、すべての人に等しく分配するといった制度に改めてしまったため、

働いても働かなくても給料は同じ、という現象が起きてしまいました。こうなると人間誰でも同じ給料なら楽な方がいいと考えてしまうのは当たり前です。儲けることに最も熱心な国民に共産主義を押し付けたこと自体が問題であったと言えるでしょう。

人民公社が廃止されてもう大分たちますが、国営企業から国有企業に変ったとはいっても、そこで働く人々の中には、まだまだ旧態依然の考え方が残っています。

 

あっても「没有」(無い!)と言う服務員

 私が北京に駐在員として赴任していた時のことですが、春休みに妻が子供達を連れて中国にやってきました。何か中国のお土産を買おうと、その当時外国人しか入れなかった友諠商店に買物に行きました。いろいろ売り場を見ていましたが、妻の目にとまったのは日本では高価なカシミアのセーターでした。「サイズが合えば買いたい」と言うので、私は売り場の服務員に「すみません、これ見せていただけますか?」と呼びかけましたが、女性の服務員は同僚と世間話に夢中で、一向にこちらの方を見ようとはしません。何度か呼びかけましたが、相変わらずおしゃべりに夢中です。聞こえないのかと思い、近くまで行ってショーケースの中の品物を見せてくれるように言いました。服務員は「せっかく人が楽しく話している最中にじゃまをして、もう…」と言うような態度で「ちぇっ!」と舌打ちまでするではありませんか。この手のサービスに慣れっこになっているはずの私も、さすがにこの時はキレてしまいました。妻が手を引っ張って止めなければ、大声で怒鳴りつけているところでした。

 気持ちを落ち着け、あとは妻に任せることにしました。妻が「これを見せてください」と言うと、面倒くさそうに「没有!」(mei you!)と言ったきり、指を指している物さえ見ようともしません。「無い!って言っても、ここにあるでしょ!これよ、これ!」だんだん妻も興奮してきました。何回もガラス越しに指を指し、「ここにあるこれ!」と次第に声も大きくなってきます。服務員は無愛想に「それは売らない」と言います。「売らない?どうして」「サンプルだから。」「じぁどれなら売るの?」とひつこく食い下がると、「うるさい日本人だなぁ。もう。」とでも言わんばかりに、「売るものは無い!」「エッ?……」妻は思わず絶句していました。「もう二度とここでは買物しないから!」と言い捨て、私より足早に友諠商店を出て行きました。

 

すみません、買う時には声をかけますから…

 あれから20年ほどが過ぎ、2度目の中国駐在で広州に来ることになりましたが、友諠商店に買物に行くと、その変わりように驚かされます。

トースターを買おうと電気売り場を見て歩いていると、すぐ服務員が寄って来て「こちらの製品はパンを焼くだけでなく、蒸し器にもご利用いただけ…」と説明を始めるのです。その服務員を避けるように足早に次のコーナーに逃げて行くと、今度はまた違う服務員が「いらっしゃいませ、電子レンジをお求めでございますか?こちらの商品ですと15%引きでサービスさせて…」。そこも何とか振り切って、頃合を見計らって再び本来の目的箇所、トースターのコーナーに戻ったところ、「待ってました」とばかり先ほどの服務員が寄って来て、またひつこく説明を始めるのです。

 「すみません、買う時には声をかけますから、ゆっくり選ばせくれませんか。」そう言って1人で見せてもらうようお願いしました。

服務員の給与が基本給+歩合制になったおかげで、彼女達の販売意欲は猛烈に向上し、その結果、自分の担当カウンターに買いそうな客が来ると、すぐ飛んで来ては聞いてもいない商品の性能がどうのこうのと説明をまくし立て、買いなさい、買いなさいと急き立てるのです。

不満そうに離れて行く服務員を見ながら、昔なら買いたいと言っても売ってくれなかったのに、今では反対に買え、買えとうるさく付きまとう。この変わりようは一体何なのだ!と思わずにはいられませんでした。

 

蹴っ飛ばしたらサービスが変わった。

 広州に来て三度目の冬を迎えた時のことです。冬といっても広州の冬は日本から比べると暖かく、寒いと感じる日はほんの2~3週間くらいだけなので、一般的に広州の家には冷房のみで暖房装置の付いていない、いわゆる「クーラー」しかありません。

 この冬は異常気象の影響で寒い日が続き、たまらずに暖房器具を買いに行きました。中国にも最近は家電専門大型店ができ、そこでは結構多くの種類を取り揃えているので自分の気に入ったものを選ぶことができます。私は電熱線が2本入っている縦型ファンヒーターを2個買い、それぞれリビングとベッドルームで使うようにしました。

 買った当日は「おー、あったか~い」と喜んでいたのですが、翌日リビングで使っていたファンヒーターの電熱線1本がつかなくなってしまったのです。

日本では考えられませんが中国ではありうることですので、翌日買った電気店に持って行き、交換するようクレームをつけたところ、何と「修理屋を紹介するからそこへ持って行け」というではありませんか。私は「買って1年もたつのであればわかるが、これは3日前に買ったものだから、明らかに欠陥商品だ。新しい商品と交換して欲しい」と講義しましたが、店員はそういう規則になっていると言い張ります。

 仕方がないのでこの売り場の責任者を呼んでもらい再度事情を説明しましたが、彼も先程の店員と同じように規則がどうのこうのだとか、修理屋へ持って行けばすぐ直してくれるなどと言うではありませんか。頭にきた私は持ってきたファンヒーターの箱を壊れるくらい蹴っ飛ばして、「こんな欠陥商品なぞ要らない!もうこんなサービスの悪い店には二度と来ないからな!」と大声で怒鳴りつけました。わざわざ修理屋にまで持って行き、修理代を払ってまで直すくらいなら、もう捨てて帰ろうと思ったからです。

私の剣幕に驚いたのか、そのマネージャーは「わ、わかりました。修理屋に行かなくて結構です。私共で新しい商品とお取替えさせていただきます」と急に態度を豹変させ、係の者に新しいファンヒーターを持って来るように言いました。

 普段やさしくてめったに怒ったりしない?私にしてはめずらしいひとこまでしたが、やはり言うべき時ははっきりと言う中国人に、ちょっぴり近づいたかなと感じた出来事でした。(2007年12月記 3,270字)

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