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中国市場販売の裏技(2)内資企業に化ける「隠れ蓑」

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2004年3月25日

<各業界事情>

中国市場販売の裏技(2)内資企業に化ける「隠れ蓑」

アジア・マーケット・レビュー 2004年2月15日号掲載記事)

 2月13日付で中国政府商務部から新たに「外商投資の投資性公司設立に関する規定」(3月13日施行)が公布され、資格条件を満たせば外商投資傘型企業が海外親会社の製品を中国市場に自由に輸入販売ができるようになった。高いハードル付きとはいえ、これは画期的な出来事である。その条件とは(1)払込登録資本額が1億米ドル以上。または5千万米ドル以上で申請前1年間の中国内投資総額が30億元以上、利潤総額が1億元以上あること、(2)2社以上の研究開発機構を中国内に設立していること、(3)以上の資格条件を満たし、かつ地区総部として認定されていること、の三点である。

1.聯商合作公司

 このように、中国政府はWTO正式加盟後も、いまだに外国企業の中国商業分野への進出に対して、外資卸売業の最低資本金8,000万元(約10億円)、小売業は5,000万元(約6.5億円)という事実上の参入障壁を設けている。その反面で、国内の、特に国有製造企業の第三次産業、サービス業への転換に対しては、対照的に所得税減税措置などの優遇税制を制定して、これを促進している。中国人個人が小資本で設立する私営企業、箇体企業(個人事業主)でも、国内販売の営業許可を取得することは極めて容易である。
 そこで、以前から台湾、香港など華僑系の企業が中心となって、外資が様々な「隠れ蓑」をかぶって内資になりすまし、中国内商業分野に進出する例は以前から存在した。たとえば中国の内資商業企業と、「聯商合作(聯営)公司」等と称して暖昧な擬似内国法人を設立するような例が典型的である。しかし、これも1995年10月10日付「外商投資企業が株主または発起人となる場合の登記管理に関する若干の規定」(対外貿易経済合作部)により、外商投資企業の有限会社(有限責任公司)として明確に登記しなおすように法律で定められた。しかしなお、現在でも内資企業として「潜伏」し続けている例は少なくないようである。これも大陸と華僑の関係、同じ中国人という特権がなせる技であろう。

2.中国人私営企業への出資

 では、我々のような純然たる外国人・外国企業が中国内資の純然たる民間企業に資本参加することは可能であろうか。まず、私営企業について見てみると、1988年6月施行「私営企業暫定条例」第11条で、私営企業を設立できる者として、(1)農村農民、(2)都市の失業者、(3)個人事業主、(4)中途退職者、(5)定年退職者が挙げられており、我々外国人(日本国籍に帰化した中国人も含めて)は少なくとも中国で私営企業を設立することが認められていない。外国人がどうしても中国で私営企業を設立したい場合は中国国籍を取得するしかないが、これも決して容易なことではない。そこで「資格」をもった中国人をダミーに立てて、彼個人に出資金を融資して私営企業を設立させ、外国人がその「社員」として雇用され、実質的に経営を自已の支配下に置こうとする迂回投資戦略が生まれてくる。しかし、中国人民銀行は銀行法により、銀行免許を持たない組織、個人が中国内で融資取引を行うことを禁止している。そこで中国人と結婚あるいは養子縁組して、配偶者あるいは養子名義で私営企業を設立して商業経営を始めようというアイデアまで生まれてくるが、実際にはそこまでしなくても、正々堂々と合法的に外国企業が中国人個人から確実な担保を取得して資金を融資し、中国企業に迂回投資する方法は存在する。その手法については次号で紹介したい。

3.マイナー出資

 以前から合弁経営企業法には、あるひとつの抜け穴の存在が指摘されてきた。それは第4条にある「合弁企業の法人形態は有限責任公司とする。合弁企業の資本金のうち外資側の出資比率は一般に25%を下回らない」という条文である。これは外国資本の出資比率が25%以上でない合弁会社は、法律上は外商投資企業とは認められず、外商投資企業のみに認められた税制優遇などの特典も享受することができないという意味の規定である。これを逆手にとって、外国企業が最初から意図的に25%を下回るマイナー出資で合弁会社を設立、あるいは既存の中国内資企業に25%を下回る出資比率で資本参加し、事実上の内資販売会社を自已の資本系列支配下に置こうとする手法である。この場合、経営支配権が最大の問題となるが、自已の出資比率が20%だとすれば、他の中国側出資者を5社以上にして彼らは均等出資とすれば、自分の出資比率は20%であっても「筆頭株主」となることができる。この手法は俗に「一夫多妻」型企業と呼ばれている。

4.出資比率25%を下回っても外商投資企業

 しかし、「一夫多妻型の隠れ蓑」手法は、2003年1月から施行された「外資企業の設立認可、登記、外貨および税収管理に関ずる問題を補強ずる通知について」(外経貿法発[2002]575号)により、規制を受けることになった。この通知にもとづき、既存の合弁企業を含め、25%未満の外国出資企業はすべて例外なく外商投資企業として再審査・認可を受けなければならなくなったのである。主な改正点は以下のとおり。

(1)みずから輸出比率(逆に言えば国内販売比率)を定めた定款を持つ外資系企業は、董事会会全員一致による正式な定款変更決議と工商行政管理局登記の手続きを経なければ、WTO加盟に伴う合弁法・独資法の改正にともなって、過去自已の定款に定めた輸出比率(国内販売比率)から自動的に自由になるものではない。

(2)今後は外国側出資比率25%未満の合弁企業も内資企業ではなく、外商投資企業として扱われることになる。既存の外商投資合弁合作企業についても再審査・再登記手続を経なければ処罰を受け、工商管理局の登記是正命令に応じない場合は営業許可取り消しとなる。

(3)内資企業に外国企業が資本参加する場合は、すべて外商投資企業として審査・登記が義務付けられる。

5.外商投資企業からの再投資(子公司)

 中国外からの直接投資ではなく、中国内にすでに設立された外商投資企業が中国内において再投資し、子会社を設立する場合は従来から原則として内資企業とみなされ、外資に対する特典は享受できないとされている。
(1)「外商投資企業が企業株主または発起人となることに関する登記管理の若干の規定」(1995年10月工商行政管理総局)

・公司法上の有限責任公司に対して外商投資企業が再投資する場合は以下三条件を満足しなければならない。(第3条)
a.自已の登録資本金が全額払込み済みであること
b.当初認可を受けた自已のフィジビリティ・スタディ計画項目が完成していること
C.すでに企業所得税の納付を開始していること

・再投資の出資比率は以下のとおりとする(第4,5条)
a.奨励業種の場合は無制限(ただし、政府による規制がある場合を除く)
b.制限業種の場合、出資比率は25%を超えてはならない
C.禁止業種の場合は再投資を禁ずる

・再投資金額の累計金額は自己純資産の50%を上回ってはならない(第6条)。
・外商投資企業が他の外商投資企業に再投資する場合は、通常の外商投資企業審査登記手順に従う(第11条)。
・投資性公司、保税区内の外商投資企業に対して本規定ぱ適用されない(第12条)。

(2)外商投資企業の中国内再投資に関する暫行規定(2000年9月1日対外経済貿易部、国家工商行政管理総局)
・外商投資企業が中国内で再投資する場合は、「外商投資方向指導規定」ならびに「外商投資産業指導目録」の規定に従わなければならない(第3条)。
・再投資できる相手企業は公司法上の有限責任公司または股分有限公司とする(第4条)(…私営企業等は不可)。
・外商投資企業が中国内で再投資できる資格条件は以下のとおりとする。
a.登録資本金を全額払い込み済みであること
b.利益を計上し始めていること
C.違法経営の記録が無いこと

・投資金額の累計金額は自已純資産の50%を上回ってはならない(第6条)。
・営業許可証が発給される場合、その企業類型欄には「外商投資企業投資」と注記される(第8条)。
・制限業種に属する企業に再投資する場合、外商投資企業は投資先所轄の省クラス主管部門に必要書類をそろえて許可申請しなければならない(第9条)。
・省クラスの主管部門は経営範囲業種分野に応じて、同クラスまたは中央政府の管理部門に意見を求めなければならず、同意もしくは不同意の意見を受けた日から10日以内に書面による許可もしくは不許可を通知する(第10条)。
・外商投資企業は再投資企業設立登記日から30日以内に、自已の審査認可機関に対して再投資関連書類を提出しなければならない(第12条)。再投資により自已の資産を提供、自己の経営規模、内容が変化する場合は、再投資前に自已の審査認可機関から同意を得なければならない。かかる申請は15日以内に決定が下されるものとし、15日を過ぎても回答が無い場合は同意したものとみなされる。(第13条)。
・外商投資企業が再投資により自已の経営範囲を変更する場合は登記変更手続きを行う。
・外商投資企業が中西部に再投資し、再投資先企業の外資比率が25%以上の場合は外商投資企業としての優遇措置を受けることができる。
・再投資企業に外商投資企業としての優遇措置を享受させたい場合は、通常の外商投資企業設立申請手順に沿って、同様の申請書類を設立地域所轄の省級審査認可機関に提出する(第17条)。
 以上の規定によれば、外商投資企業が中国内で再投資するためには一定の条件を満たすことが必要であり、なおかつ原則として外商投資企業としての待遇を受けることのできない居民企業でありながら(例外は上記17条)、外商投資企業と同様に政府の定める「外商投資産業指導目録」に沿った審査認可が必要ということである。ただし、一部の外資系メーカー、商社のなかには、この再投資方式により販売代理店に出資して販売子会社を中国内に設立し、営業活動を展開している例も少なくない。この場合も「一夫多妻」型企業と同様に出資比率が25%以下と制限されるため、いかにして経営をコントロールするかが問題となる。

(http://members.aol.com/chinainformation/寛武雄)

本記事は、アジア・マーケット・レヴュー掲載記事です。

アジア・マーケット・レヴューは企業活動という実践面からアジア地域の全産業をレポート。日本・アジア・世界の各視点から、種々のテーマにアプローチしたアジア地域専門の情報紙です。毎号中国関連記事も多数掲載されます。

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