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「デジカメ筐体は我が社がつくる-中国でライン増強」日本電産コパル

中国ビジネスレポート 各業界事情
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2005年1月18日

<各業界事情>

デジカメ筐体は我が社がつくる
中国でライン増強 日本電産コパル

アジア・マーケット・レビュー 2004年12月1日号掲載記事)

 世界のカメラシャッターシェアの70%を握るナンバーワンメーカー「日本電産コパル」。97年からスタートしたデジカメ金属外装事業の好調さが止まらない。中国での生産をメインに来年から一気に増産・販売を加速する。そこで、海外事業を統括する常務取締役の小林憲宏氏に戦略・展望をきいた。

97年からスタートした外装事業

―金属外装品が伸びている背景は。
小林 デジカメ用の金属外装品はここ数年で急激に伸びている。今年のデジカメ生産販売台数は約6,000万台と言われているが、そのうちの60%、4,000万台が台がアルミ、ステンレス、チタン、マグネシウムをいった金属ボディを採用している。従来がプラスティック製が主流だったが、デジカメの性能の向上と共に、カメラとしての高級感を追求する傾向が強くなり、結果として金属外装が好まれるようになった。 当社が金属外装を手がけるきっかけになったのは、97年にマレーシアエ場でのソニーのCDアルミケース製造だった。それまでカメラメーカーは金属筐体を日本国内で製造していたのだが、ソニー、カシオ、松下といった家電メーカーは筐体製造のノウハウがなく、困っていたところに当社の金型設計製造、プレス、表面処理の技術力が注目されたわけだ。

―生産体制はどのようになっているのか。
小林 ステンレスなど加工技術の難しい製品は郡山工場、アルミ外装はせつ江省とマレーシアで生産している。デジカメメーカーが熾烈な価格競争を繰り広げている一方、製品の品質は今以上のものを要求してくる。つまり、コストと品質のバランスが難しくなっている。そのため、郡山工場で生産していた金型ラインを一部中国、マレーシアに移管し、当社のエンジニアを現地に赴任させて、対応している。 コスト優位性と品質を兼ね備えた製品をつくるには、トータルな技術力が肝心だ。金型、プレスメーカーは日本にもアジアにも数多くあるが、当社のようにように一貫した製造工程を有するメーカーはほかにない。デジカメの形態が複雑化していくと、単に金型をつくればいい、プレスすればいいというものではない。プレス後のブラスト、研磨、アルマイト処理といった製品を美しく仕上げるための技術をもたなければならない。そうした高度な技術は当然、中国にはないので郡山工場が主導で中国工場を動かしている。

ライバルは台湾メーカー

―来年の生産ボリュームをどの程度まで引き上げるのか。
 マレーシアエ場は年間50万枚、中国は月産60万枚、台数べ一スで30万1台を量産しているが、来期は中国工場のラインを増強して200万枚、100万台分を計画している。デジカメの金型外装の当社が占めるシェアは12%だが、これを倍増して一気にトップシェアを狙っていく。

―競合メー力一は。
小林 台湾メーカーの存在が大きい。香港、深セン、珠海、東莞のエリアに製造ラインを持ち、上海へも拠点展開している。価格力を武器に日系デジカメメーカーに販売攻勢をかけており、日系の金型、プレスメーカーよりも手強いといえる。
 ただ、技術的な優位性は当社に軍配が挙がると思う。実際、台湾メーカー品は不良品が出るケースが多く、あちこちで問題を起こしていると聞く。それでも価格の安さから台湾メーカー製に手を出すメーカーは後を絶たないのだが。
 しかし、デジカメのデザインが複雑化して技術的に難しくなっているため、脱落するメーカーが増えているので、今後さらにメーカーの振るい落としは進むだろう。そうなると、台湾メーカーは比較的簡単なデザインの安い機種の製品だけに絞ってくるかも知れない。当社の場合は基本的に中級機種以上の高付加価値製品をターゲットにしているので、そういう意味でいけばバッティングは回避できる。
 また、銀塩の時代からカメラメーカーとはシャッターなど基本部品の長い取引実績があるので、外装品の販売でも信用はされている。「コパルさんを信用して製品を頼む」というデジカメメーカーもおかげさまで少なくない。最近では、松下のルミックスに使用する外装品で、当社から問題点を指摘した結果、素晴らしいデジカメができ上がったというケースもある。単純に請負ではなく、こちらから積極的に企画提案していく姿勢を貫いているのが、当社の事業の大きな強みだ。

中国・タイ・ペトナムにライン集約

―アジアでの拠点展開の方向性は。
小林 アジアの拠点は、ASEANではタイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、そして中国にそれぞれ設置している。その中で、もっとも新しい拠点が中国工場で、2002年4月に稼働したばかりだ。中国工場の基本的な役割は、大きく分けて2つある。ひとつは自社工場への部材供給基地として、もうひとつは顧客であるセットメーカーへの拠点展開に対応すること。そんな中で、アジアで組立製造を行うセットメーカーのニーズとして、先に説明した外装品のニーズが上がってきたのだ。
 同工場は金型、プレス、表面処理、最終アッセンブルまでの一貫ラインを保有しており、現在もラインを増強中だ。立地的にも便宜を考えて、日本電産グループ6社が集約している浙江省平湖経済開発区にあり、生産体制の連携が図れるようになっている。

―事業ごとのアジアを含む海外での生産比率は。
小林 3つの事業で形成される。シャッター、レンズユニット、小型モーターを製造するコンポーネント事業(構成比60%)、外装品を含む部品事業(同20%)、ミニラボ、昇華型プリンタなどのシステム関連事業(同20%)だ。主力のシャッターは98%が海外製造で、モーターは90%以上、外装部品は50%、ミニラボは30%程度で、コストダウンのためにさらに海外比率を高めていく。
 また、生産拠点を集約していく計画があり、タイエ場でシャッター、ベトナムエ場にモーター、そして中国工場に外装部品などというように、アジア3拠点を主力にこれから数年は設備投.資を集中する。会社全体でも設備投資の60%は海外で、うち50%が中国に投下している。

デジカメは死なず

―デジカメメー力一で今年度苦戦している状況が見られるが、今後の需給をどう見るか。
小林 確かに今年度中間決算の各社の数字を見ていると、デジカメ収支があまりよくないように思える。これは日本国内市場が年初に見込んでいたよりも、伸びなかったことが大きな要因だ。世界市場は今後も成長していく余地は十分にある。これまでの前年比60%増という数字は難しいだろうが、アジア、南米など発展途上国を中心に潜在的な需要がある。
 デジカメが銀塩に代わりカメラのトレンドになった今日、当初はシャッターが不要になるのではという懸念があったが、やはり高画質な写真を撮るためにはデジカメにもシャッターが必要だ。携帯電話用デジカメがメガピクセル化して、従来のデジカメの存在意義が問われているが、デジカメ独自の優位性を伸ばしていけば、十分に生き残りは可能だ。当社のような部材メーカーは、それに合わせてハイエンド用の部材供給を行っていく。

―価格下落傾向への対応は。
小林 そのためにアジアの工場集約を計画しているのであり、部材調達の面だけでなく、セル生産方式を導入するなどして徹底したコストダウンを進めているところだ。来年以降、業界はセットメーカー、部材メーカーともに強いメーカーと弱いメーカーの差が大きく開いていくだろう。

メーカーは必然的にアジアヘ

 すでに部材メーカーの日本電産コパルがアジアでの事業展開を加速しているように、セットメーカーの工場建設のトレンドもアジアに向かっている。三洋電機のベトナムでの工場新設計画もその一例だ。
 キヤノンのようにあくまで内製化を推し進めるメーカーもあれば、家電メーカーのように部材メーカーに信頼をおいて、コストダウンを図るケースもある。デジカメのような精密機械は、部材のクオリティーとともに、外観の美意識が常に要求される。
 ただの量産品ではないということであり、芸術の域にまで達しようとしているかのようである。コストと品質の両立という永遠のテーマを掲げて、カメラのレンズには「アジアの戦略イメージ」がくっきりと映し出されている。

(羽石竜示)

本記事は、アジア・マーケット・レヴュー掲載記事です。

アジア・マーケット・レヴューは企業活動という実践面からアジア地域の全産業をレポート。日本・アジア・世界の各視点から、種々のテーマにアプローチしたアジア地域専門の情報紙です。毎号中国関連記事も多数掲載されます。

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