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【中国深読みコラム】第34回~中国の鉄鋼業界再編~

中国ビジネスレポート 各業界事情
松本 健三

松本 健三

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2016年9月30日

 ダントツの世界一になった中国の粗鋼生産量(年間8億トン)ですが、9月4~5日杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議で、中国の鉄鋼などの過剰生産能力が世界経済の波乱要因として減産を求められ、その成果として最近大きな動きがありました。9月22日に上海宝鋼集団(年産3,493万8,000トンで世界5位)が武漢鋼鉄集団(同2,577万6,000 トンで世界11位)と経営統合すると発表しました。合計すると6,071万4,000 トンに上り世界最大手のアルセロール・ミタル(9,713万6,000トン、本社:オランダのロッテルダム)に次ぐ世界2位となる巨大鉄鋼メーカーが誕生することになります。これ以外にも中国の大手鉄鋼会社の経営統合が伝えられており、今月は中国の鉄鋼業界再編を深読みします。

 上海宝鋼集団と武漢鋼鉄集団の経営統合後の名称は「中国宝武鋼鉄集団」で製品や技術の研究開発、販売ネットワーク、購買、物流など多くの分野で統合効果の発揮を模索するとしており、鉄鋼業界で課題となっている過剰生産能力の解消については生産ラインの調整や低効率な設備の淘汰などを進めるとしています。これによって、3位は中国河北鉄鋼集団4,770万トン、4位は日本の新日鉄住金4,640万トン、5位は韓国ポスコ4,200万トンと上位の世界順位が入れ替わります。

 一方、9月19日付け証券之星の報道によりますと、中国鋼鉄工業協会の遅京東副会長が「鞍鋼集団(鞍山市、3,250万トンで世界7位)と本鋼集団(本渓市、1,950万トンで世界21位)の合併・再編が年内にも発表される。鉄鋼業界の継続発展に向け、合併・再編を推進する」との発言があり、宝鋼集団と武漢鋼鉄集団に次ぐ合併・再編対象企業は鞍鋼と本鋼の2社であることを明らかにしました。2社の合計は5,200万トンとなり宝武鋼鉄集団に次ぐ世界3位の巨大製鉄会社の誕生となります。

 これ以外に中国の大手製鉄会社の概要を下記します。(2015年度生産実績)
世界6位:江蘇沙鋼集団、3,420万トン
(8位:日本JFEスチール:2,980万トン)
世界9位:北京首鋼集団、2,910万トン
(10位:印タタスチール、2,630万トン)
世界12位:山東鋼鉄集団、2,260万トン
(13位:韓国現代製鉄、2,050万トン)
(14位:米Nucor Corporation、1,960万トン)
世界15位:馬鞍山鋼鉄、1,880万トン
以上世界大手15社の内、中国の鉄鋼会社が8社あります。世界上位50社では28社が、また上位100社では40社が中国企業です。中国には500~700 社程度の鉄鋼メーカーが存在するといわれ、うち国有企業は100 社程度。国有企業のなかでも中央政府が管轄するのは宝鋼集団、鞍鋼集団、武鋼集団の3 社であり、それら以外は地方政府の管轄下にあります。

 現在問題になっており、日本を含む世界経済に影響を与えているのは、中国の過剰生産と、それに付随する安価な中国製鋼材の膨大な輸出(世界シェア35%、アジア市場シェア57%)が世界経済を攪乱している現象です。中国の粗鋼生産能力は15年度で11億7,000万トン、実際の生産は8億トンなので余剰生産能力は3億7,000万トンとなり、これが需要の縮小と相俟って鋼材価格の下落を惹起。2015 年は重点大・中堅企業101 社のうち51 社が当期赤字であり101 社の合計損益額は645 億元(約1.2 兆)の赤字に達する等、鉄鋼メーカーの収益性は大きく悪化しています。

 赤字が続いているにも関わらず、倒産せず操業を続けるいわゆる「ゾンビ企業」も続出。こうした企業の生産能力は合計約1 億トン(全体の約9%)に上るとも言われています。中国の地方政府は主に雇用の維持を目的として、国有・民営を問わず地場の鉄鋼メーカーに対して補助金支給等の支援を実施しており、鉄鋼メーカーは当座の資金を回すため、こうした支援を拠り所に採算を度外視して生産を継続しているのが現状です。

 このような状況下、中央政府は2016 年1 月の国務院常務会議において、2020年までに生産能力1.0~1.5 億トンの削減を目指す方針を発表しており、海外諸国よりの圧力もあっていよいよ本格的に中国鉄鋼業界の合併・再編がこの秋より本格的にスタートしました。中国の鉄鋼業界再編は日本経済にも大きな影響を与えますので引き続き注目したいと思います。

以上

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