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未成年に対してインターネットゲームを3時間に制限する制度

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2007年4月20日

記事概要

中国で一大産業とした発展してきたオンラインゲーム産業だが、一方で未成年に対する影響も深刻化してきた。業界も取り込んだ対策がいま行われようとしている。

新しいページ 1未成年に対してインターネットゲームを3時間に制限する制度

 

いま、中国で未成年者がインターネットによるオンラインゲームにのめり込み、家庭内暴力を起こすなどの事件が、社会問題化し始めている。トイレに行く時間を惜しんで、「紙おむつ」をつけてまでゲームに勤しむ少年の姿が、メディアなどにもたびたび登場している。

上海でも、こういったインターネット中毒者(中国語で:網癮)が未成年の間で増えており、上海市も様々な対策を打ち出してきた。今回は、政府中央から出された通知をもとに、中国が取り組み始めたネット中毒者への対策をみてみる。

 

1.オンライゲーム運営会社への対策

 

4月9日、中国の新聞出版総署、中央文明弁公室、中国教育部、公安部など関係8部門が、「未成年の心身保護のためのインターネット中毒防止プログラム実施の通知」を発表した。2004年からシステムの開発がすすめられていて、関連企業とも試験が繰り返されていた。

そして、2007年4月15日から全国のオンライゲーム運営会社に対してこのプログラムの設置を義務付け、また7月16日よりすべてのオンラインゲームでの稼働させることを通知として発表した。もちろん、7月以降登場する新しいゲームに対しても、このプログラムがなければ批准しないことも明言している。

 

 では、この中国防止プログラムとはどういうものなのだろうか。興味深いのはゲームの中身と、このプログラムが関連し合っているという点だ。

もし、3時間以内オンラインゲームを楽しんだ場合は、「健康」であるとして、通常通りゲームが楽しめる。3時間を超えて5時間までは「疲労状態」であるとし、ゲームでの経験値やオンライン上で売買されたバーチャルな物品に対する「売上」が半分になる。さらに5時間を超えれば、「不健康」であるとして、経験値や収益などがゼロになる仕組みだ。この3時間という時間制限が興味深いが、研究機関の分析により、3時間以内なら青少年に対する影響が少ないと中国では考えられているようだ。

このように、ゲームをしている本人が、ゲーム内容と直接関係あるような規制を設置することで、長時間ゲームにのめり込まない様にしたわけだ。

 

 すでに大手ゲーム会社、盛大・網易・九城・光通・金山・新浪・捜狐など各社がこのシステムを導入しており、またこれら大手7社では、中国社会に対して未成年保護に力を入れることを確約している。

 

2.いかにして年齢を判別するか

 

 中国での大人は18歳からで、今回のシステムでも未成年者をインターネット上で識別する必要性がある。今回定められた「インターネットゲーム中毒防止システム実名認証方案」では、身分認証システムについても言及されている。中国では、成人になると身分証明証の番号で国民全体が管理されているため、まずユーザーはこの身分証明証番号を登録しなければならない。今まで、適当に15ケタもしくは18ケタの身分証明証番号を入力しても問題なかった認証システムが、正規の番号でなければ認証を通過することができなくなったとしている。

 

3.いたちごっこになる可能性も

 

 しかし、今回のシステムに対して、ユーザーからも反発が多いのも確かで、一方で効果が本当にあるかどうかでも、疑問点が多い。前述した身分証明証の番号の問題でも、すでにネット上には身分証明証発生プログラムが流布されていて、このプログラムを利用すれば、システムを通過できる身分証明書番号を作ることができるという。もちろん、これに対抗して、自分の身分証明番号がゲームで悪用されていないか、ということも調べるシステムも登場している。

 

 これまでのインターネットカフェの取り締まりにしてもそうだったが、未成年が入れない様にしても、結局地下のインターネットカフェが増え、今だに未成年を完全に締め出すことに成功していない。

 

 さらに、表に出てこない非合法なサーバーを利用したオンラインゲームが増えてくる可能性も指摘されている。一部大手のオンラインゲームでも、プログラム自体が漏れており、こういった非合法なサーバーでオンラインゲームが行われているということだ。今後、サーバー管理に関しても厳格化される可能性もある。

 

 いずれにしろ、今回のシステムが有効に機能するかどうかは、まだまだ試行段階といえよう。

 

4.心理的カウンセリング

 

 日本のマスコミなどでもたびたび紹介されたが、中国にはこういったインターネット中毒になってしまった少年たちを更生するための組織が続々と作られている。

上海でも、大学などの専門機関が中心となって、少年たちだけでなく家族も一緒になってインターネット中毒から解脱するための訓練プログラムが行われている。たとえば、華東師範大学心理カウンセリング工作室では、2007年5月より上海市で初めてのインターネット中毒者とその家族のためのキャンプが行われ、20人の未成年が、家族と一緒に参加することになっている。このキャンプでは、7日間にわたって、外界と遮断された空間で訓練が行われるということだ。

 家族と一緒にというのは、インターネットにのめり込む少年たちの背景に、親の教育姿勢と深く関係があると考えられているからだ。たとえば、父兄が暴力的に子供たちに接した場合、子供が愛情と開放感を求めるためにオンライゲームにのめり込むという実態が指摘されているのだ。

 

政府は、このインターネット中毒防止プログラムをオンラインゲームなどインターネットに関係するゲームすべてに対して設置することを通知したが、これは一方でオンラインゲームを徹底的に管理する方針とも見て取れる。さらに、今回オンラインゲームで実施された実名制は、今後予定されているブログの実名制に向けての試金石になっていることも十分に考えられる。

社会問題となりつつあるインターネット中毒の問題に対して、やっと本格的に動き出したといえよう。(2007年4月記・2,388字)

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