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温州の中小企業が苦境、コスト高にどう対応するか?

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2008年8月20日

記事概要

浙江省温州といえば、中小企業が多数あり、ライター製造など中国の工場としても名高い。また、一時上海の不動産を買い占めんばかりの勢いで投資したことでも有名だ。その温州の中小企業が、いま苦境に立たされている。原材料の高騰、金利の上昇など温州の中小企業をめぐる状況は厳しい。

 2008年7月初旬、温州市経済貿易委員会が行った市内31カ所の開発区・工業エリアの15521社の中小企業を対象とした調査で、すでに全体の6.5%にあたる1009社がすでに工場を閉めており、1.6%にあたる250社が倒産、2つあわせて8.1%にあたる1259社がほぼ閉鎖状態にあるという。この割合は1~4月期と比較すると、2.1%の増加となっている。専門家によると、この数字は政府が発表している数字だけに、実際はこれではすまない規模で倒産が進んでいるというのが大多数の見方だ。

 

 さらに顕著なのが、温州で有名な基幹産業の一つだった「ライター」製造だ。『新聞晩報』の報道でも、温州市のライター製造企業は、2006~2007年の1000社から、今では70社にまで減っている。このうち、実際に創業している工場はその半分にも満たないという。靴類の企業も同じで、温州市革靴行業協会のデータで、2005年度には4000社あった靴製造工場も、2008年には2600社にまで落ち込んだ。同じく、ボタン・ファスナーで有名な橋頭鎮でも全盛期の560社から、いまでは50社にまで落ち込んだ。

 

 こうした工場の閉鎖は、温州市の工業生産値にも影響を及ぼし始めている。2008年上半期の温州市の工業生産値は2277.82億元で、とりあえず前年比13%の増加を達成しているものの、増加幅は6.4%落ち込んだ。また、靴や化学繊維などの24の業種では、前年比マイナスとなっている。ここからもわかるように、温州市の中小企業を中心とした工業生産形態はピンチとなりつつある。

 ライター関係の中小企業に関して言えば、中小企業の淘汰がはじまってきていると言っても過言ではない。その証拠に、ライター関係の工場の閉鎖が続いても、温州全体の生産能力は維持されており、全世界のライターシェア85%というのは変わらないと言われている。相変わらず世界一の規模である。

 

 温州企業の発展に大きな力を与えたのが、いわゆる三角債と呼ばれる民間の融資システムだが、これが近年非常に複雑化し、この返済のために工場を閉じたくても閉じることができないジレンマが発生している。また、いったん工場を閉じてしまうと信用がゼロとなり、銀行からの融資も受けられないばかりか、民間の金融機関からも資金調達が難しくなる。そのためにも、なんとしてでも生きながらえる必要があるのだ。実際に工場をフル稼働をさせないでがんばっている中小企業も多い。

 

 以前の基幹産業だった温州市のライターの製造も、原材料である銅の高騰に悩まされている。2005年度は1トンあたり2万元前後で手に入ったのが、今や3倍以上の値上がりをしているなど原材料の高騰は大きい。そして、人民元の値上がりと、最近問題となっているのが新『労働合同法』による人件費のアップだ。これにより、人件費が少なくとも20%以上上昇しており、その関係で、今でも法の目をごまかしている中小企業は多い。しかし一旦政府が法規制強化に乗り出すと、それこそ温州の中小企業の倒産が続くものと予想される。

 

 一方で、製造業に見切りをつけた温州の中小企業は、新たに石油や不動産、石炭などに投資する動きも盛んだ。そして、資金力をつけて軽工業から造船業など重工業に投資を試みるケースも出始めている。いま、温州では産業の構造改革が強く求められているのだ。

 

 中国の工業生産値の増加が一段落している背景には、こうした中小企業の淘汰と一定の関係があることは否めない。(2008年8月記・1,578字)

【データ】浙江省温州エリア地図

 

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