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ログイン2004年7月30日
中国税務ここがポイント(5)中国の外商投資企業の設備免税輸入
前回は、外商投資企業の再投資優遇税制について説明しました。今回は、外商投資企業の設備輸入免税措置についてお知らせします。
1.設備輸入免税制度の説明
中国における外商投資企業の優遇税制の大きな目玉の一つに、設備輸入免税制度があります。これは、外商投資企業で奨励業種等に該当する場合、その認定投資総額や自己資金(後者は技術改良の場合のみ)の金額を限度として、輸入設備にかかる関税及び輸入増値税が免税となる制度です。
ここで注意すべき点は、設備輸入免税は、奨励業種としての認定を受けた企業(全製品を輸出する許可業種企業を含む)や、その他特定の企業の設備輸入等に認められる措置であり、奨励業種の認定を受けていない場合(許可業種・制限業種)の場合は、原則として設備輸入免税が認められないことです。
また、設立後に奨励業種の認定を受けようとしてもうまく行きません。従って、会社設立の際は、事前に設立地の対外経済貿易部門その他主管政府部門と連絡を取り、設立会社が奨励業種の認定を受けられるようにすることが肝要です。
2.適用対象輸入設備
免税の対象となる輸入設備は、次表の通りです。
なお、下表の参照箇所は、後述の .参照:設備輸入免税制度に関する主要法令通達の年表の番号を記しています。
適用対象輸入設備 | 参照箇所 |
新「外商投資産業指導目録」(2002年4月1日施行)の奨励業種の適用を受ける企業分 | 12 |
上記奨励業種のうち、製品を全額輸出する許可業種 | 14 |
加工貿易を行う外国商業者が提供する無償輸入設備等 | 7 |
国家が指定したハイテク製品の製造設備等 | 8 |
ソフト生産企業・集積回路生産企業の認定を受けた企業の関連設備等 | 10 |
外商投資研究開発センターの自家用設備等 | 9 |
中国中西部・西部地区において「外資優勢産業和優勢項目目録」に基づくプロジェクトの自家用設備等 | 9、11 |
技術改良の為の特定の設備輸入 | 9 |
3.課税価格と税額の計算方法
設備免税が承認された場合は課税価格について知る必要はあまりないかもしれませんが、参考として、課税された場合の課税価格を説明します。
課税価格は、税関が審査決定した成約価格を基礎にしたCIF価格となっています。CIF価格とは具体的には「商品価格+中国接岸後荷卸迄の輸送費用・保険料・パッキング費用等付随費用」となっています(進出口関税条例第10条)。
また、設立後に奨励業種の認定を受けようとしてもうまく行きません。従って、会社設立の際は、事前に設立地の対外経済貿課税の順序は、最初に関税が課税され、次にその関税込金額に輸入増値税が課税されます。
課税価格は最終的には税関が認定した価格となりますが、基本的には輸入設備の関連のエビデンスに基づき決定されます。ちなみに、現物出資の場合は、商品検験局から認定を受けた評価機構が設備価格の評価を行い、税関はこの評価報告書に基づき課税価格を決定します。
4.免税申請の手順
免税申請は、管轄政府部門(対外経済貿易部門等)で、設立後若しくは増資後に新営業許可証が下りた後に行います。実務上は窓口において、最初の資本金入金が行われた段階で申請を要請される場合がありますので、念のため事前確認を要します。
申請時の必要資料は下記の通り(奨励業種の免税申請手続を基本に記しています)。
・ 申請国家鼓励発展的外資項目確認書(定型の申請用紙)
・ 設立時及び増資時の、管轄政府部門発行の文書(批復)
・ フィジビリティスタディ(F/S、可行性研究報告)
・ 輸入設備リスト
・ 批准証書、営業許可証の写し
・ 製品を全額輸出する許可業種としての奨励業種の場合は、その承諾書
・ 増資の場合は、会計事務所発行の前年度末の監査報告書
・ 奨励業種の免税申請以外の免税申請の場合は、管轄政府機関が要請するその他の免税申請書類
免税申請が認可されれば、早ければ約10日程度で「鼓励項目確認書」が下ります。
輸入通関の際は、通関に通常必要な書類と共に「鼓励項目確認書」等の免税認可書類を提出し、免税手続を行います。
中古設備や現物出資による免税輸入の場合は、上記以外にも様々な手続きがあります。
1.免税輸入が認められる設備の範囲
法律的には投資総額の枠内まで免税輸入が可能ですが、これはあくまでMAXを意味し、実際は設備輸入リストに記載された範囲内でしか免税は認められません。また、設備輸入リストに記載してあるもの全てが免税輸入が認められるわけではないことに留意してください。
2.中古設備の場合
中古設備を、購入の形なり現物出資の形なりで免税輸入することも原則可能ですが、新品設備に比べ免税輸入がすんなりといく確率は低くなります。
これは、中古設備は、環境衛生・安全面への配慮から、「輸入可能品目に制限があること」「商務部の機電弁公室およびその下部組織等による輸入許可証が必要な場合があること」「商品検験検疫局が認証した国外の検査機関により船積前の安全検査または書類審査があること」「中古設備ながら新品設備と同様に中国国内での調達が困難である等の条件をクリアしなければならないこと」等々の様々な制限があることによります。
一般に、日系のフォワーダーは中古設備の輸入には消極的ですので、もし中古設備を免税輸入したい場合には、中国系フォワーダーに事前確認をするのがよいでしょう。
3. 製品全額輸出の許可業種としての奨励業種の場合
製品全額輸出の許可業種としての奨励業種において設備免税輸入を行う場合は、設備輸入時に一旦関税および輸入増値税の全額を納付します。その後5年間にわたり監督官庁の確認を経て毎年20%づつ納付額が還付されます。途中で製品を全額輸出しなくなった場合は、還付は実施されず、また過去の還付税額も返還を求められ、かつ処罰の対象ともなり得ます(.の表の14参照)。
現在は全額輸出でも、近い将来に得意先が中国国内に拠点を移して中国国内販売が発生しそうな場合は、とくに御注意ください。
4.税関の監督期間と転売処理の留意点
免税輸入した設備は、税関が指定する監督期間内において他者に転売等する場合は、主管政府部門(対外経済貿易委員会等)の認可を必要とします。また、その時点での減価償却額を勘案した上で関税及び輸入増値税を計算し、追加納付しなければなりません(海関対外商投資企業進出口貨物監管和征免税弁法第18条、.の表の2参照)。
ただし、設備面前優遇政策を受けるその他の企業に売却した場合は、追加納付が不要な場合もありえます(署税[1999]791号第五条)。
税関監督期間は下表の通りです。
品目 | 税関監督期間 |
船舶、飛行機及び建築材料 | 8年 |
業務用車両、家庭用電器設備 | 6年 |
機械設備、その他設備、材料等 | 5年 |
.参照:設備輸入免税制度に関する主要法令通達の年表
1 | 法令名 | (既に廃止となった法規) |
/通達番号 | 関於中外合作経営企業進出口貨物的監管和征免税規定/(83)署税字第995号 | |
関於中外合資経営企業進出口貨物的監管和征免税規定/(82)署税字第233号 | ||
中華人民共和国海関対外商投資企業履行産品合同所需進口料件管理弁法 | ||
/(86)署貨字第1183号 | ||
公布/施行 | (下記2の中華人民共和国海関総署令第29号施行と共に廃止) | |
関連部分概要 | – | |
2 | 法令名 | 中華人民共和国海関対外商投資企業進出口貨物監管和征免税弁法 |
/通達番号 | /中華人民共和国海関総署令第29号 | |
(参考:上記弁法の公布を発表する税関の通達) | ||
関於印発《中華人民共和国海関対外商投資企業進出口貨物監管和征免税弁法》的通知/署監一[1992]1099号 | ||
公布/施行 | 1992年7月5日/1992年9月1日 | |
関連部分概要 | 外商投資企業の設備輸入免税等を記述: | |
(対外経済貿易部門の)批准済の輸入設備リスト等を管轄税関に提出し、徴税・免税の手続を行う。その後、税関発行の徴税・免税証明により通関を行う。徴税・免税証明の有効期間は3ヶ月間であり、税関の承認により更に3ヶ月以内の延長が可能(第10条)。 | ||
外商投資企業は投資総額内、及び承認済の追加投資額内で輸入した貨物については、税関の減免税優遇措置を受けられる(第12条)。 | ||
中外合弁企業・独資企業は、以下の貨物につき関税等が免税となる(第13、14条)。 | ||
・契約に基づき外国側出資者が現物出資した機械設備・部品・その他資材 | ||
・投資総額内の資金で輸入した機械設備・部品・その他資材 | ||
・中国国内で生産供給が保証できない機械設備・部品・その他資材で、資本増強により輸入したもの | ||
国家規定に基づき投資総額内で輸入した車両・事務用品(設備)は、関税等を免除する(第17条、後に執行停止)。 | ||
減免税の対象貨物は、税関規定の監督期間内に、管轄政府部門の承認を経て売却等を行った場合は、関税等を追納する事(18条) | ||
(中略)機械設備、その他設備、材料等・・・5年~ | ||
3 | 法令名 | 国務院関於調整進口小汽車関税税率和減免税政策的通知/国発[1993]87号 |
/通達番号 | (参考:上記公告の公布を発表する税関の通達) | |
関於調整進口小汽車関税税率和減免税政策的緊急通知/署税[1993]1559号 | ||
公布/施行 | 1993年12月22日/1994年1月1日(国発[1993]87号) | |
1993年12月30日/1994年1月1日(署税[1993]1559号) | ||
関連部分概要 | 政府組織関係の減免税待遇対象以外は、輸入小型車については関税・輸入増値税を徴収する(署税[1993]1559号第3条) | |
4 | 法令名 | 国務院批転関税税則委員会、財政部、国家税務総局関於第二歩清理関税和進出口環節税減免規定意見的通知/国発[1994]64号 |
/通達番号 | (上記公告の公布を発表する税関の通達) | |
海関総署関於貫徹第二歩清理関税和進口環節税減免規定的緊急通知 | ||
/署税[1994]892号 | ||
公布/施行 | 1994年12月29日/1995年1月1日~(国発[1994]64号) | |
1994年12月30日/1995年1月1日(署税[1994]892号) | ||
関連部分概要 | 事務用品については、免税措置を与えない(意見第2条)。 | |
指定の事務用品等については減免税を停止する(署税[1994]892号第5条) | ||
5 | 法令名 | 国務院関於改革和調整進口税収政策的通知/国発[1995]34号 |
/通達番号 | (上記通達の公布を発表する税関の通達) | |
海関総署関於貫徹《国務院関於改革和調整進口税収政策的通知》的緊急通知 | ||
/署税[1995]1061号 | ||
公布/施行 | 1995年12月29日/1996年4月1日(新通達による免税停止の発効日) | |
関連部分概要 | 輸入設備免税政策の執行停止: | |
1996年4月1日以降に新設の批准を受けた外商投資企業の投資総額内における機械設備・原材料については、関税・輸入増値税を徴収する(第2条、即ち設備免税輸入の停止) | ||
1996年3月31日以前に新設の批准を受けた外商投資企業等については、別途規定する期限内においては減免税優遇措置の適用を受ける(第2条) | ||
6 | 法令名 | 外商投資産業指導目録(旧) |
/通達番号 | /国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会、対外貿易経済合作部第21号令 | |
公布/施行 | 1997年12月29日/1998年1月1日(現在は廃止) | |
以上
(2004年7月記・8,033字)
上海邁伊茲諮詢有限公司
税理士 永岡稔
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