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中国の財務諸表の主要勘定科目の説明(その4)

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2004年3月10日

<税務・会計>

中国の財務諸表の主要勘定科目の説明(その4)

永岡稔

前回は、固定資産整理勘定、未処理財産損益の勘定を使用した、資産の除却・売却・棚差の処理について説明しました。今回は、資本の部の勘定科目について説明させて頂きます。

資本の部の勘定科目については、勘定科目対訳表を掲載した第6稿におきましても簡単に表記しましたが、今回改めて、補助科目も含め表記してみます。下表においては、まず主勘定科目(中国においては一級科目と言います)を挙げ、一マス下げて表記してあるのが、その主勘定科目の補助科目(二級科目と言います)です。

中国語勘定科目名 日本語勘定科目名
実收資本 或股本 払込資本金(または株主資本)
已帰還投資 減資払戻金
資本公積 資本準備金
資本 或股本 溢値 資本金(または株式資本金)払込差額
接受捐贈非現金資産準備 非現金資産受贈準備額
接受現金捐贈 現金受贈益
股権投資準備 持分投資準備金
拔款転入 国庫補助金
外幣資本折算差額 外貨資本換算差額
其他資本公積 その他資本準備金
盈余公積 利益準備金
法定盈余公積 法定利益準備金(内資企業向法定準備金)
任意盈余公積 任意積立金
法定公益金 法定公益金
儲備基金 準備基金(外資企業向法定準備金)
企業発展基金 企業発展基金
利潤帰還投資 未処分利益からの返還投資分振替額
本年利潤 当期利益
未分配利潤 未処分利益

1.払込資本金(または株主資本)

 これは、資本金そのものを指します。皆さんご存知の通り、中国の外商投資企業へは基本的に外貨による払い込みとなります。その場合、財務諸表及び監査報告書の注記中には、人民元建資本金の額がまず表記され、次に中国側人民元建出資額(中国との合弁企業の場合)、及び外国貨幣建出資額が表記されます。
 ところで、私たちが良く受ける質問で、「外商投資企業の資本金の最低金額はいくらですか」というのがあります。結論から先に言いますと、全国的な法律、即ちいわゆる外資企業三法(外資企業法、中外合作経営企業法、中外合弁経営企業法)には記載はなく、各地方の対外経済貿易委員会において内規で定めているのが現状です。
 但し、外資企業三法に記載のない事項においては、中国の公司法を参照することとされており、その公司法の第23条においては、最低資本金額を次の様に規定していますので、各地の外資企業の最低資本金額は、人民元換算額でこれを上回る様に定められています。

(一)生産経営を主とする公司は50万人民元
(二)商品卸売を主とする公司は50万人民元
(三)小売を主とする公司は30万人民元
(四)科学技術開発、コンサルティング、サービス業の公司は10万人民元
特定業種の有限責任公司の登録資本最低額は前項以上の額とし、法律・行政法規にて別途定める。

 筆者の知る限りの外資企業最低資本金額は、大連保税区の外資貿易企業の6万米ドルであり、上表(二)の50万人民元をやや上回る水準となっています。

2.減資払戻金

 これは、あまりなじみのない勘定科目ですが、中外合作企業の根拠法である中外合作経営企業法の第21条に規定する、外国側投資金額の先行回収が行われる際に使用する勘定科目です。従って、独資企業及び中外合弁企業では、この勘定科目は使用される事がなく、また中外合作企業においても、次の様に、使用されるケースが限定されています。
 この第21条先行回収とは、合作契約において合作期間満了時に企業の全ての固定資産が中国側投資者に帰属する事を明記している場合に、外国側投資者が、合作期限内にその投資額(資本金額を)を前倒しで回収できる、即ち減資による資本の払戻が出来る事を指します。
 具体的には、資本払戻時には下記仕訳を切り、貸借対照表上の表示では、払込資本金の下において、当該減資払戻金額を減額表記(数値は正数で表記)します。

借 方
貸 方
減資払戻金 已帰還投資投 ×× 銀行預金

銀行存款

××

3.資本準備金

 資本準備金とは、資本の性格を持っている投下資金のうち、資本金とならなかった部分の金額を指します。利益準備金が、企業の経営活動に伴い産出された利益を源泉とする資本の部の増加額であるのに対し、資本準備金は、そうでないもの、即ち資本払込時の為替換算差額や他者からの贈与等を源泉とする資本の部の増加額です。

 資本準備金には、7つの補助科目があります。以下にその補助科目名別の説明を表にしましたのでご参照下さい。

勘定科目名 説明
資本金(または株式資本金)払込差額 投資者の資本払込額のうち資本金を超過した部分
非現金資産受贈準備額 非現金資産(固定資産、無形資産等)の受贈額
現金受贈益 現金資産の受贈額
持分投資準備金 当該企業の投資先企業への長期投資勘定において持分法を採用している場合で、投資先企業が受贈等により資本準備金が増加した際の、当該企業の持分増加額
国庫補助金 技術改良・技術研究等において国庫より補助金を受けた場合の貸方側計上科目
外貨資本換算差額 契約等に外貨資本金とその人民元建資本金が記されており、資本払込時に契約レート以外のレートであった場合の、資本金の為替差損益金額
その他資本準備金 上記以外の性質の資本準備金。債務免除益等。

4.利益準備金

 利益準備金とは先ほども説明しましたが、企業の経営活動に伴い産出された利益を源泉とする資本の部の増加額です。より簡単に言えば、企業が稼いだ利益が企業内に留保される場合の、その留保部分を表す勘定科目です。

 資本準備金には、7つの補助科目があります。以下にその補助科目名別の説明を表にしましたのでご参照下さい。

勘定科目名 説明
法定利益準備金(内資企業向法定準備金) 中国国内企業において、税引後可処分利益から一定の割合で積み立てた利益準備金
任意積立金 菫事会、株主総会において、税引後可処分利益から定款等の内規により積み立てた任意積立金
法定公益金 中国国内企業において、法令法規に基づき、従業員全体の福利引当目的として、税引後可処分利益から一定の割合で積み立てた準備金
準備基金(外資企業向法定準備金) 外資企業において、税引後可処分利益から一定の割合で積み立てた利益準備金
企業発展基金 外資企業において、法律法規に基づき、税引後可処分利益から一定の割合で積み立てた準備金で、企業の生産発展に用いる為のもの。
未処分利益からの返還投資分振替額 前述の2.減資払戻金 に関連する科目で、中外合作企業が外国側出資者に先行投資額の返還を行う際の会計処理で、対照勘定的に使用する勘定科目。

5.当期利益

 これは、企業の税引後の当年度の当期利益を表記する勘定科目ですが、実務上は、例えば監査報告書の貸借対照表での表示上は、その下の未処分利益に合算されて、数字が出ない事になっています。また、貸借対照表上でこれを記載していない場合もありますので、目下貸借対照表における意味はほとんどありません。何となれば、当期利益は損益計算書を参照すれば直ぐ分かるから、という事が理由なのかもしれません。個人的には、日本の様に、(うち当期利益)という風に、貸借対照表にも当期利益情報を記載する方が分かりやすく、望ましい事と思っています。

6.未処分利益

 これは、資本の部において、資本金・資本準備金・利益準備金等に属しない、企業の留保利益を指します。配当可能利益と考えて頂いて結構です。

 ここで、配当可能利益を算出するまでの過程で欠くべからざる、外商投資企業の積立金の要積立額について解説をしておきますと、下表の通りとなります。

 

積立金勘定科目 独資企業 中外合弁企業 中外合作企業
準備基金 資本金の50%に達するまでは、税引後利益の10%以上の積立義務あり 合弁契約、定款に基づくか、董事会決議で決定 合作契約、定款に基づくか、董事会決議で決定
従業員福利奨励基金
(負債科目)
任意 同上 同上
企業発展基金 任意 同上 同上

【注】

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