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ログイン2004年3月23日
<税務・会計>
期間限定の個人所得税の徴税における優遇措置について
2004年3月5日に、国家税務当局より「外国籍人員の個人所得税徴税管理を強化する事に関する通知(国税発[2004]27号)」が公布されました。
この規定は、数ページに及ぶものですが、内容は精神論が大半であり、見るべき内容は、次の数行に集約されます。
● 2004年6月以前に、外国籍人員、若しくは源泉徴収機関が自発的に過年度の未納税額を申告した場合、要納税額とそれに伴う延滞金(0.05%/日)は徴収するが、罰則は適用しない。
● 上記期限内に自発的に申告・納税を行なわなかった場合、その後発覚した虚偽申告・未納税については、徴税管理法に基づいて、徴税、及び滞納金の徴収・罰則を行なう。
つまり、過年度に納税義務者(個人)、若しくは源泉徴収義務者(給与を支払う機構等)が過少申告、若しくは申告漏れとなっている場合、2004年6月以前に自発的にこれを申告すれば、税金、及び延滞金(0.05%/日)は徴税するものの、罰則は適用しないというものです。
罰則とは、租税徴収管理法(現行のものは、2001年5月1日施行)に基づけば、「未納付、若しくは過少納付税額の50%以上5倍以下(犯罪を構成する場合は刑事責任を追及)」となっています。
今回の通達は、通達の名称はさておき、上段だけ読むと、一種の優遇措置と受け止められますし、実際に各種のレポートでは、徴税管理の優遇措置と解説されています。
但し、下段を含めて見れば、趣旨は徴税管理の強化であり、所謂「飴と鞭」と言った意味合いの通達であると言うことができます。
中国では、この様な規定が出された直後は、一定期間に渡り、徹底した管理強化が行なわれる事例が見受けられる為、7月以降、外国籍社員を対象とした徴税強化が行なわれる可能性は否定できません。
● 個人所得税の納税義務を有する外国籍人員
中国内で納税義務を有する外国籍人員とは、以下の場合が挙げられます。
1.中国に納税拠点を移している場合。
2.中国内に暦年で90日(租税条約締結国の居住者の場合は183日)を超えて滞在する場合。
3.中国内の滞在日数が90日(若しくは183日)には満たないものの、中国の機構が当該人員の人件費を支払っている、若しくは負担している場合。
● 個人所得税の未納付・過少納付の類型
これを前提とした上で、当該規定の適用を検討すべき状況、つまり外国籍人員が個人所得税の未納付・過少納付を行っている状況を分類すれば、以下の通りと言う事ができます。
1) 実質所得を適正に申告していない場合。
個人所得税を納税するに当たっては、所管の税務局に給与証明を提出し、これに基づいて申告・納税を行なう事となります。
「実質所得を適正に納税していない場合」とは、この給与証明を適正に作成せず、実際の所得より低い額を基に、申告納税を行っている場合を指します。
これに該当するケースで目に付くのは、「中国外で支払われている給与・手当を除外している場合」、更には、「賞与等を申告していない場合」です。
2) 見做し課税方式が適用された結果、実質所得に基づく納税額に比べて、申告・納税額が過少となっている場合。
これは、過少申告となっている点においては1)と同様ですが、納税者が虚偽の申告を行なっている訳ではなく、所管の税務局から標準的な課税所得額が提示され、それに基づいて申告・納税を行なった結果、実際の所得よりも少額の申告・納税となっている場合です。
これは、実務経験がない方にはぴんと来ないかもしれませんが、外資誘致の一環として、特定の地域が低めの標準所得額を設定し、それに基づいて査定利益課税を行なっている場合があり、この様な場合に生じる事例です。当然の事ながら、国家(税務総局)認定の下にこの様な措置が行なわれている訳ではありません。
3) 年間累計滞在日数が90日(183日)を超えているにも拘わらず、申告・納税を行なっていない場合。
個人所得税の納税拠点を中国には移していないものの、長期出張、若しくは、頻繁に中国に出張するような外国人が、結果として上記の日数以上に達して、中国で納税義務が発生したにも拘わらず、申告納税を行っていない場合です。
4) 外国籍人員(短期滞在者)の給与の一部、若しくは全部を中国の機構が負担しているにも拘わらず、個人所得税の申告納税を行っていない場合。
中国の国内法、日中租税条約、香港と内地の租税協定共に、中国内の機構が非居住者の給与・報酬を負担している場合、この部分については上記の滞在日数ルール(90日・183日ルール)の対象外であり、中国で個人所得税の納税義務が生じる事を規定しています。
では、この様な動き(通達の公布)を受けて、どの様な対応を行なうかですが、基本的には「適正な納税をすべきであり、過年度の申告額が不適切な場合は、当該通達の公布を機会に、本来あるべき姿に戻すべきである」という事しかいえません。
特に、1)・3)・4)については、現在、適正な申告・納税を行なっていない状況である為、将来的な税務リスク(過年度に遡った徴税・ペナルティ)の回避を図る意味でも、今回の通達をきっかけにして、あるべき姿に戻す事を検討すべきといえます。
一方、少々検討に値するのが2)のケースです。
これは、源泉徴収義務者である企業や、納税義務者である個人が過少申告を行なっている訳ではなく、所管の税務局側から見做し所得額を提示され、これに基づいて納税を行なった結果として、(実質所得と比べると)過少申告になっている、という状況です。
この様なケースは、まま見受けられる事例です。
特に、変則的な来料加工が盛んな広東省の地域では、少なからず耳にします。
これは、この様な地域で来料加工を行なう外国企業の場合、(実質的な)駐在員が香港の居住者となっており、出張ベースで大陸で業務を行なうケースが多い。更には、地方側も、加工賃に対する徴収(10〜30%)で採算を考慮しており、企業所得税・個人所得税が二の次になっている場合が多い、という点が背景として挙げられます。
この様な場合において、どう対応すべきであるか、という点ですが、ポイントとなるのは、「納税義務者が虚偽の申告を行なっているわけではなく、所管の税務局側が、(実質的な所得の算定を放棄して)査定利益方式を適正な納税方式として採用し、課税を行なっている」という点です。
租税徴収管理法第52条には、「税務機関の責任により、納税者・源泉徴収義務者に未納付、又は過少納付が行われた場合、3年以内は差額を徴収できる」事となっています。
従って、今後、この様な事例において、過年度に遡った差額の徴収が行なわれないという保証はありません。但し、同法・同条では、この様に、所管の税務機関の責任によって、未納付・過少納付が生じた場合は、滞納金・ペナルティは徴収されない事が規定されています。従って、所管の税務機関に今後の対応を確認する意義はあるとは言えますが、少なくとも今すぐに実質所得納税に切り替える必要が有るかどうかは疑問と言えます。
但し、昨年より、東莞・深センでは、(広東流)来料加工廠においても企業所得税の徴税が開始された様に(今まではやはり、上記の通り、加工賃からの徴収で地方の採算が図られていた背景より、この様な来料加工廠は、企業所得税を徴収されないケースが多かった)、個人所得税の納税についても、あるべき論に立ち返った対応が行なわれる可能性が有る事は、念頭に置く必要があるといえます。
又、この様な動きがあった場合において、租税徴収管理法に基づき、過去に遡及(3年間)した徴税が行なわれる可能性もゼロとはいえませんので、万一の備えをしておいた方が良いかもしれません。
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