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中国税務ここがポイント(4)中国の外商投資企業の企業所得税制

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2004年7月1日

<税務・会計>

中国税務ここがポイント(4)中国の外商投資企業の企業所得税制

永岡稔

前回は、輸出加工区の税制及び最近のトピックスについて説明しました。
今回は本論に戻り、減免税・低税率以外の外商投資企業に対する優遇税制のうち、再投資優遇税制についてお伝えします。

.再投資優遇税制

 中国における再投資優遇税制とは、投資者が、投資先企業において稼得した留保利益を、その投資先企業の増資・若しくは他の企業の設立資本金に再度資本投下する事を指します。
 外商投資企業所得税制における再投資優遇税制は、外国側投資者が一定の条件の下で再投資を行った際は、その再投資額に本来掛かっていた企業所得税の、40%若しくは100%が、投資元企業を通じて還付される事となっています。
 なお、100%還付は、再投資先がいわゆる製品輸出企業(製品の輸出売上割合が全売上割合の70%以上の企業)、若しくは先端技術企業の認定を受けた場合、海南省の海南経済特区内における外商投資企業が同経済特区内のインフラ建設プロジェクト・農業開発企業に直接再投資した場合、に限られますので、通常の外商投資企業の外国側投資者が100%税額還付を受けようとする場合は、の適用が受けられる様に工夫する必要があります。
 製品輸出企業及び先端技術企業の認定は、共に管轄の対外経済貿易委員会で行う事となります。尚、先端技術企業と似て非なるものにハイテク企業があり、認定上の先端技術企業とハイテク企業は、優遇税制の適用面で異なりますので留意が必要です。

【再投資優遇税制の説明図】

管轄税務機関
↑還付申請 ↓承認・還付
※外国側投資者等 出資→
外商投資企業
増資→ 左の外商投資企業
←送金
↓新設出資
別の新設外商投資企業

※外国側投資者が100%の持分を有する外商投資投資性有限公司を含みます。

.再投資優遇税制の適用条件と留意点

 再投資優遇税制は、2免3減・低税率等の主要な優遇税制が、生産型企業を中心に適用されているのに比べると、再投資資金の源となる外商投資企業のジャンルを問わないところが利点ですが、その適用に際しては厳格な条件が付されています。以下に、その条件と留意点を説明します。

参照:下記条件及び留意点の括弧内の記述は、参照法令通達等の略称です
外商投資企業和外国企業所得税法第10条(法10条と表記)
外商投資企業和外国企業所得税法実施細則第80条~82条(則80条、81条、82条と各々表記)
通達番号については、.の年表の通達番号の通りです。

1.再投資額に課税されていた国税が還付される場合の条件

  1. 再投資者が、外商投資企業の外国側投資者、若しくは外国側投資者が100%の持分を有する外商投資投資性有限公司である事(法10条、(94)財税字第083号)
  2. 再投資資金の出所が、その外商投資企業の留保利益である事(法10条)
  3. その外商投資企業の留保利益は、外国側投資者へ国外送金すること無く、直接中国国内で再投資の資金振替を行う事(則80条)。
  4. 再投資先対象が、その外商投資企業の増資、若しくは新設の別の外商投資企業の設立資本金である事(法10条、則80条)。
  5. その再投資先対象のその後の経営期間が5年を下回らない事。尚、この場合の経営期間とは、その外商投資企業の増資の場合は、増資資金が実際に払い込まれた日から起算し、別の外商投資企業への設立出資の場合には、その外商投資企業が実際に生産・経営活動を開始した日(試験生産・試験経営活動を開始した日を含む)から起算する(法10条、国税発[1993]009号)。
  6. 当該5年を下回らない事には、再投資先の持分の売却を5年以内に行わない事も含む(国税函[1999]031号)
  7. 外国側投資者の還付申請は、再投資資金の実際投下後の1年以内に行う事(則80条)。
  8. 還付申請の際は、再投資を証明する増資若しくは出資関係の書類を、管轄税務機関に提出し、承認を受ける事(法10条、則80条)。
  9. (100%還付の場合のみ)再投資先がいわゆる製品輸出企業(製品の輸出売上割合が全売上割合の70%以上の企業)、若しくは先端技術企業の認定を受けた場合、及び海南省の海南経済特区内における外商投資企業が同経済特区内のインフラ建設プロジェクト・農業開発企業に直接再投資した場合(則81条)

2. 留意事項

  1. 外国側投資者が中国からの配当を本国等で受け取り、再度中国国内に投資を行う場合は適用対象外となります(則80条)。
  2. 再投資額にかかっていた税金の計算方法は、再投資額÷(1-対象年度の企業所得税の適用国税率及び地方税率)×(対象年度の企業所得税率の国税率)×還付税率、となります(則82条)
  3. あくまで外国側投資者に対する優遇措置であるので、例えば中外合弁企業からの再投資については、そのうち外国側投資者の持分割合に応じて税額が還付されます。
  4. 再投資後の経営期間が5年未満の場合(対象となった持分の譲渡を含む)は原則として、再投資優遇税制の適用を受けても、還付税額の返納を要します(法10条、国税函[1999]031号)。
  5. また、100%還付の対象となる要件を満たさない場合は、100%のうち60%の金額を返納する事となります(則81条)。
  6. 経営合理化の為の企業再編の過程で、同一の外国側投資者が有する中国国内の外商投資企業に再投資優遇税制の対象持分を譲渡した場合は、再投資優遇税制適用後5年未満であっても、還付税額の返納を要しない場合があります(国税発[2000]049号)。
  7. 外商投資企業の清算字に発生する残余利益を用いた再投資は適用対象とはなりません(国税発[1993]009号)

.参照:再投資優遇税制に関する法令通達の年表

法令通達番号 公布/適用開始時期 概要(再投資優遇税制の部分のみ)
財政部税務総局関於合営者将分得的利潤匯出国外以後再用於来華投資不能按再投資退税的批復 (81)財税外字第82号 1981年9月16日/- 中外合弁企業の合同経営者が、その分配利益を国外に送金し、その後再度当該合弁企業に投資した場合、再投資還付税制の適用は受けられない。
中華人民共和国外商投資企業和外国企業所得税法中華人民共和国主席令第45号 1991年4月9日/1991年7月1日 第10条にて、再投資優遇税制を記述。

  1. 外商投資企業の外国投資者である事
  2. その外商投資企業が稼得した利潤を直接再投資する事
  3. 対象はその外商投資企業(増資)及び新設の他の外商投資企業(新設出資)である事
  4. 再投資後の投資先の経営期間が5年以上である事
  5. 基本還付率は、再投資額に掛かっていた国税の40%である事
  6. 経営期間が5年未満の場合は、還付税額を返納する事
中華人民共和国外商投資企業和外国企業所得税法実施細則国務院令第85号 1991年6月30日/1991年7月1日 第80条から82条にかけて、上記外商投資企業所得税法第10条を補足説明する形で、再投資優遇税制を詳述。
第80条:
1. 再投資の定義の詳述
2. 税額還付申請の証明資料の解説
3. 還付申請期限(再投資資金投入後1年以内)
第81条:
1.
100%還付の対象要件の説明
2. 100%還付対象要件外となる場合の説明
第82条:還付税額の計算方法

国家税務局関於貫徹執行外商投資企業和外国企業所得税法若干業務処理問題的通知国税発[1991]165号 1991年10月15日/- 第12条:1991年6月30日以前に再投資を行った企業は、旧税法に基づき税額還付を受け、1991年7月1日の新税法公布後に再投資を行った企業は、それが旧税法適用期間中に発生した利益であっても、新税法の適用を受ける。
国家税務総局関於外商投資企業的外国投資者再投資退税若干問題的通知国税発[1993]009号 1993年6月15日/同日
  1. 再投資対象会社の再投資後の経営期間の起算日を解説
  2. 再投資優遇税制適用申請時に、再投資利益の獲得年度を証明する資料が提出できない場合は、税務機関が帳簿に基づきこれを推算等する。
  3. 清算所得は再投資優遇税制適用対象外
  4. 再投資優遇税制適用後にその要件を満たさない場合の条件・手続を記述。

財政部 国家税務総局関於外商投資企業従事投資業務若干税収問題的通知(94)財税字第083号 1995年1月13日/- 外商投資投資性公司(100%外資に限る)が出資している外商投資企業については、これを外国側投資者とみなし、その分配利益を直接再投資に回した場合も、再投資優遇税制の適用を受ける。
国家税務総局関於外商投資企業再投資退税有関問題的批復国税函発[1995]154号 1995年4月12日/- 上記(94)財税字第083号に規定する以外で、外商投資企業が別の外商投資企業に投資している場合には、その投資者としての外商投資企業は再投資優遇税制の適用は受けられない。
国家税務総局関於外商投資企業敵外国投資者再投資退税有関問題的批復国税函発[1996]113号 1996年3月18日/- 100%税額還付の適用の条件となる投資対象先の製品輸出企業及び先端技術企業から、これを証明する書類が申請期限の1年以内に入手できなかった場合の処理:先ず40%還付を行い、次に、製品輸出企業については生産・経営開始の日若しくは再投資資金投入後3年以内に、先端技術企業については生産・経営開始の日若しくは再投資資金投入後1年以内に、その各々の企業性質が確認された場合に、残りの60%の還付を行う。
国家税務総局関於上海納鉄福伝動軸有限公司的外国投資者再投資退税有関問題的批復国税函[1999]031号 1999年1月15日/- 再投資優遇税制適用後5年以内にその持分の譲渡を行った場合には、当該優遇税制の適用を受けられず、還付税額を返納する。また、持分譲受を受けた企業側も、優遇税制の適用は受けられない。
国家税務総局関於外国投資者今日図再投資退還所得税優恵有関問題的通知国税発[2000]049号 2000年3月14日/- 経営合理化の為の企業再編の場合、再投資優遇税制適用後に、外国投資者、及び外国側投資者が100%の持分を有する外商投資投資性公司が、その再投資持分を同外国側投資者等が直接或いは間接的に100%所有する会社に譲渡した場合は、再投資認定の撤回及び還付税額の返納請求を行わない。
国家税務総局関於外国投資者再投資退税有関問題的通知 2001年7月30日/- 利益分配の前に、関連企業との取引により生じた利益を再投資しても、再投資優遇税制の適用は受けられない。

次回は、設備購入に関する優遇税制についてお伝えします。

お詫び:税務シリーズ初回原稿の訂正

最後に、以前の回の訂正を申し上げます。
「中国税務ここがポイント(1)中国の外商投資企業の企業所得税制」の回で、.外商投資企業の企業種類別の企業所得税(国税)優遇税制 において、4.国務院が定める税率15%の適用企業の【適用減免税制度】が、単に「2免3減」としていましたが、正しくは「2免、2免3減、5免5減等」です。大変失礼致しました。この場をお借りして訂正を行うと共に、お詫びを申し上げます。

(2004年6月記・4.539字)
上海邁伊茲諮詢有限公司
税理士 永岡稔

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