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中国税務ここがポイント(9)中国の外商投資企業のIT優遇税制

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旧ビジネス解説記事

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2005年3月8日

今回から3回にわたって、企業所得税制と増値税制の両方に関係するものですが、中国のIT優遇税制について解説します。
(なお、ここに言うIT優遇税制というのは、当方にてIT関係の優遇税制を総称したものであり、中国の税務当局の方で「IT優遇税制」そのものを謳っているわけではないことに御留意くださいませ)

中国国務院は、1999年8月に「技術革新の強化と高度科学技術の発展による産業化の実現に関する決定」を公布しました。ここでは、技術革新と高度科学技術が、中国の国民経済・国力を強化し、国際競争において中国が戦略的優越性を獲得する手段であるとし、今後の技術革新の強化と高度科学技術の発展の方向性を明確にしています。

さらに、2000年6月には、「ソフト産業と集積回路産業の発展奨励の若干の政策」を公布しました。この通達では、2010年までに、中国のソフト産業の研究開発と生産能力を国際先端水準に持って行き、また集積回路製品につき国内市場の需給を満たして輸出を行い、開発及び生産技術における発展国家との差を縮小することを目標としています。

この通達の公布を受け、税制面でもIT優遇政策が次々と打ち出されましたが、2004年8月に、アメリカが中国の半導体に関する優遇税制の是正を求めWTOに提訴していた件につき、両国政府で和解が成立し、中国政府が2005年3月末までに一部優遇措置の撤廃を約束しました。その結果、2004年10月1日より、集積回路製品についての付加価値税の還付政策が撤廃されることとなりました。

本稿では、以前から継続適用されている独占的技術に関する優遇税制も説明し、さらに改正が予定される法規を明確にして、IT優遇税制の全貌をかいつまんで説明します。

.税制に関する基礎知識

1.税目

中国の法人において課税される主要税目は、企業所得税・営業税・増値税・印紙税などが挙げられます。ここでは、IT優遇税制に主に関係する企業所得税・営業税・増値税について解説します。

企業所得税は、中国国内の企業に適用される企業所得税と、外国企業が投資して設立した企業(以下、外商投資企業と言います)及び外国企業に適用される、外商投資企業及び外国企業所得税(以下、外資企業所得税法と言います)の2種類があります。なお、ここでは外資企業所得税のみ解説します。

増値税と営業税は、中国国内における商品、または役務の流通において課税される税金で、日本で言えば消費税に該当する税目です。営業税は主に、役務の提供・無形資産の譲渡等を課税対象とし、売上のみに課税され、その税額は売上からの控除項目としてコスト処理されます。従って、増値税のような仕入税額という概念がなく、輸出税額還付もありません。増値税は主に財貨の販売・輸入や、加工・修繕業務役務を課税対象とし、かつ日本の消費税の様に仕入税額控除や、仕入税額の輸出税額還付があります。

外資企業所得税及び営業税には、通常の自主納付税と源泉税の2種類に分けられます。自主納付税は恒久的施設で発生する収入や所得に課税され、源泉税は恒久的施設を持たない外国企業の取引において、その海外にある外国企業が受ける収入・所得で中国国内を源泉とするものに対して課税されます。

なお、個人の場合は、外資企業所得税の代わりに個人所得税が課税されます。

2.恒久的施設

(1)恒久的施設の意味
事業体が中国国内に恒久的施設があるかないかで、課税の方法及び税率が異なってきます。この恒久的施設とは、「事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部または一部を行っている場所」(日中租税条約《以下、条約とします》第5条1項)を言い、中国では「機構・場所」という表現になっています。具体的には、事務所・工場・作業場など、基本的に目に見える実体を有する施設を指します。また、外国企業が事務所を構えていなくとも、人を派遣して暦年の間に6カ月超にわたりコンサルタント業務を行う場合も、恒久的施設として扱います(参考:条約第5条5項)。

(2)恒久的施設に該当する場合の例

中国国内における現地法人は、恒久的施設として扱われます。ただし、日本企業が出資等により支配している現地法人は、その事実をもって日本企業本体の恒久的施設であることにはなりません。あくまで実態により判断されます。

日本企業が技術的権利の譲渡等や役務提供を行う時、下記の場合は恒久的施設があると判定される可能性があります。

  1. 日本企業の従業員が中国において、事務所・工場・作業場など、業務を遂行する場所を確保して、技術指導を行っている場合(参考:条約第5条1、2項)
  2. 中国内の企業に暦年のうち6カ月超の期間で下記コンサルタント業務を行う場合((85)財税外字第042号)

    a.建設工事の改善
    b.企業の現有の生産技術の改善
    c.経営管理の改良
    d.技術の選定
    e.投資プロジェクトのフィージビリティスタディの分析
    f.設計方法の選定
    g.現有の設備または製品で、性能・効率・品質・信頼性・耐久性等の面において中国側から提起された特定の技術目標に対し技術協力を行い、改良を要する部分又は部品を再設計し、試運転・試作を行い、契約に規定する技術目標をクリアさせること
  3. 日本企業が代理人(仲立人・問屋等の業者を除く)を立て、その代理人が当該日本企業の名での契約権限を有し、反復的に契約を行うこと(参考:条約第6条(a))
  4. 中国において主に日本企業及びその企業と支配・被支配の関係にある他の日本企業のために、何度も受注を受ける場合(参考:条約第6条(b))

(3) 恒久的施設に該当する場合の納税の方法
このような恒久的施設では、企業や駐在員事務所と同様に税務登記等の手続を行い、帳簿をつけて課税所得を計算し、税務申告書を提出して納税を行うこととされています(参考:租税徴収管理法第15条、外資企業所得税法第3、4、14条)。この場合は、国内取引高に対して営業税(5%)、収益から各種費用を差引いた課税所得に対して企業所得税(33%)が課税されます。なお、売上高のみが判明して課税所得が計算できない場合は、売上高に推定利益率を課税して推定課税所得を算出する、推定利益課税が行われることもあります。設備等の物の国内取引の場合は増値税(17%)が課税されます。

なお、駐在員事務所は、中国の駐在員事務所関連の法律では、営業行為を行ってはならないことになっており、これに基づきそのまま解釈すれば、全ての駐在員事務所が恒久的施設には該当しないと解釈できますが、中国の税法においては、この法令に関係なく実態に鑑みて課税することとなっています(国税函〔1999〕607号)。

(4)恒久的施設に該当しない場合
同じく技術関係では、恒久的施設に該当しないケースの例を若干挙げると下記の通りです。

  1. 日本企業が中国国内事業体に、人員を派遣せずに技術の譲渡・貸与・指導等を行う場合(参考:条約第5条全般)
  2. 日本企業が中国においてその従業員等を通じて、機械設備の販売及び賃貸に関するコンサルタント業務を行う場合(条約の議定書第1条)
  3. 他の恒久的施設があっても、業務がこれと関係の無い場合(参考:財税字〔1998〕059号)

(5) 恒久的施設に該当しない場合の納税の方法
この様な場合は、基本的に技術の譲渡・貸与・指導を受ける、中国側事業体が源泉徴収義務者となります(外資企業所得税法第19条。営業税実施条例第29条)。手順は、日本企業に支払うべき対価につきまず営業税(5%)を源泉徴収し、次に対価から営業税を控除した残額に外資企業所得税(10%)をかけて源泉徴収し、各々税務機関に申告の上、金融機関を通じて国庫に納付します(参考:財税字〔1998〕059号)。設備等の物の取引においては、日本から輸入する際に、関税及び輸入増値税が課税され、中国側事業体が申告納付を行います。奨励業種等の免税輸入取引に該当する場合は、関税及び輸入増値税は免税となります。ただし、後述の様に、源泉徴収を要しない所得もあります。

【まとめ】

項目
企業所得税
営業税
増値税
恒久的施設あり
(居住者課税)
課税所得×税率33%
(推定課税方式有)
売上高×5% 売上高×17%
恒久的施設なし
(非居住者課税)
(取引高?営業税)×10% 取引高×5% 輸入者の方で輸入貨物に関税と共に課税
各税目の特徴 収益?費用±税務調整項目=課税所得 役務提供に課税
仕入税額控除なし
財貨等取引に課税
仕入税額控除あり

注:税率については通常適用税率を記載しています。

3.増値税課税と営業税課税の判別

増値税は基本的に財貨の取引に対して課税され、営業税は基本的に役務提供に対して課税されます。特許権やソフトなどは、フロッピーディスクやCD-ROM、DVDなどの記憶体に保存して販売することも可能であるし、電子メールで送付したり、その知識を持つ人間が現地に出向いて教えたりすることもできます。特にソフトウェアは、増値税の課税対象になるのか営業税の課税対象になるのかが判別しない場合があります。

税法の本法レベルでの基本的な考え方は、次の通りです。

  1. 増値税課税…財貨の販売、或いは加工・修繕業務の提供、財貨の輸入(増値税暫行条例第1条)
  2. 営業税課税…役務の提供、無形資産の譲渡、不動産の販売(営業税暫行条例第1条)

中国国内企業が外国から、コンピューター本体(ハード)とその本体で運用するソフトを一緒に輸入する場合は、次の通りです(後掲の、本稿  IT優遇税制の種類 2.コンピューターソフト  営業税 1)課税と非課税の区分 でも説明しています)。

課税内容
ソフトの譲渡等
ソフトの貸付
販売者の外国企業の収益に営業税源泉課税あり 特許権等の独占的技術権利が設定されたソフトの、所有権等の権利付有償譲渡 特許権等の独占的技術権利が設定されたソフトの、使用権の有償貸与
購入者の中国内企業に増値税課税あり 特許権等の独占的技術権利の設定のないハード内包ソフト、又は直接に独占的技術権利の譲渡及びこれに対する支払を要しない商品ソフト 特許権等の独占的技術権利が直接に設定されていないソフトのリース

また、地方法規を見てみますと、上海市の滬財税政[2000]15号通達では、ソフトウェアについては次の通りとなっています。

  1. 増値税課税…開発契約書に、ソフト所有権が開発者にある事が明示されている場合、あるいは、所有権の帰属が明示されていない場合(自社開発ソフト)
  2. 営業税課税…ソフトの委託開発の販売行為に対して、開発契約書にソフト所有権が委託者にある事が明示されている場合、又は開発者・委託者の共同所有が明示された場合(委託開発ソフト)

(2005年3月記・4,378字)

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