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ログイン2005年4月25日
前々回、前回に引き続き、中国のIT優遇税制について解説します。
3.コンピューターソフト
前述の通り、本格的なIT優遇税制は、ここで紹介する財税〔1999〕273号(1999年10月1日施行)及び国発〔2000〕18号(2000年6月24日施行)の各通達に規定されています。ここでは主にこの2通達及びその後に公布された関連通達の、コンピューターソフトに関する優遇税制を紹介します。
注意すべきは、2004年8月上旬に中国政府が、自国の半導体優遇税制を、2005年3月31日までに撤廃する方針を打ち出したことです。これはアメリカが、中国の半導体に関する優遇税制の是正を求めWTOに提訴していた件につき、アメリカと中国の両国政府で和解が成立し、中国国内メーカーへの輸出税額還付をやめるということになっています。
そして、2004年8月31日付で、アメリカが撤廃を求めていた優遇税制は、通常は17%で課税している付加価値税が実質的に3%から6%となっていることから考えて、前掲の財税〔1999〕273号及び国発〔2000〕18号が撤廃もしくは修正される可能性が高くなっています。これらの増値税の優遇税制も、前述の通り、アメリカとの合意内容に基づき執行停止や廃止の措置が取られる事となります。
ただし、財関税[2004]40号通達(2004年10月1日施行)により、国内設計でかつ自らの知的財産権を有する集積回路製品につき、国内で生産する術がなく、国外でチップを加工するもの(財税〔2002〕140号通達の対象品目)については、従来は徴収後に即時還付を行うこととされていたのが、2004年10月1日以降は執行停止となり、原則税率の17%で徴収され、即時還付はなくなることとなりました。今後も、他の優遇措置撤廃の可能性がありますので、注意が必要です。
したがって、以下に紹介する優遇税制は、少なくとも増値税の優遇措置(即時還付)に関する部分は、部分的に執行停止となり、また他の部分も改正される可能性があります。
(1) ソフト企業の認定
両通達では、ソフト企業に認定された企業に対して、税務機関での承認を経て優遇税制の適用があることとなっています。
ソフト企業の認定については、「ソフト企業認定基準及びその管理弁法」(信部連産〔2000〕968号、2000年10月16日施行)、及び「国家計画における重点ソフト企業認定管理弁法(試行)」(計高技〔2001〕1351号、2001年7月24日施行)において、次の通りとなっています。
外商投資企業を対象
信部連産〔2000〕968号、及び計高技〔2001〕1351号: 【ソフト企業の認定基準】
【上記のうち、重点ソフト企業の要件】 下記のうちいずれかを満たすもの
【ソフト企業認定の申請資料】
【ソフト企業の認定(=優遇政策適用手続)】
【監督管理】
ただし、下記のいずれかの条件に当てはまる企業については、中国ソフト行業協会がソフト企業の認定を行う。
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(2) 企業所得税
1) 課税と非課税の区分
コンピューターソフトについては、コンピューターハードと一体で輸入する場合もあり、その課税方法については、まず、ソフト(無形資産)とハード(固定資産)とで分けて考える必要がでてきます。
1986年8月29日施行の(86)財税外字235号通達では、この問題についての外資企業所得税の取扱を次の様に規定しています。
国外の外国企業及び外国籍人員を対象 (86)財税外字235号: コンピューターのハードとソフトを一括購入の場合
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要は、ソフトが独占的権利を有する無形資産としての対価性を有するかどうかで判断していると考えられます。この内容は後の国税函発〔1994〕304号通達でも確認されています。
2) 免税
外商投資企業を対象 国発〔2000〕18号: ソフト企業は2免3減半(課税所得が発生してから2年間は免税、その後3年間は半分の税率で課税する優遇政策)の適用による、2年間の免税期間がある。 |
3) 減税
コンピューターソフト関係の外資企業所得税における減税政策は次の通りです(損金算入の優遇政策を含みます)
北京中関村の外商投資企業を対象 財税〔1999〕192号: 北京中関村内の認定ソフト開発生産企業は実際給与発生額を企業所得税の課税所得から控除できる 外商投資企業及び外国企業を対象
外商投資企業を対象
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(3) 営業税
1) 課税と非課税の区分
営業税においても、企業所得税と同様に、課税と非課税の区分が規定されています。
国税発〔2000〕179号では、営業税を徴収しないものとして (a) 関税及び増値税の課税対象となるソフト単体の商品、およびハードに付随するソフト、(b) 恒久的施設を有しない外国企業が単独で収受するソフト賃貸料、が挙げられています。
ここで間違いやすいのは、 の6「恒久的施設に該当しない場合の納税方法」において説明した様に、財税字〔1998〕059号においては、技術の譲渡・賃貸・指導等で支払うべき対価についてはまず営業税(5%)を源泉徴収し、次に対価から営業税を控除した残額に外資企業所得税(10%)をかけて源泉徴収することになっており、国税発〔2000〕179号の内容と見た目には矛盾する点です。
しかしながら、財税字〔1998〕059号は特許権使用料が発生することを前提としており、国税発〔2000〕179号では特許権使用料とは書かれていません。したがって、後者については、前掲(a) は特許権等で保護されていない内包ソフト、 (b) については特許権使用料には該当しない単なる貸付ソフトのリース料、と考えることができます。
このことは、北京中関村の優遇政策について規定した国税発〔1999〕156号においても規定されています。
北京中関村の外商投資企業を対象 国税発〔1999〕156号:
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また、国税発〔2000〕166号では、財税字〔1999〕273号を受けて、営業税が免税となる範囲を定めています。
国税発〔2000〕166号:
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免税とは、課税を免除すると言う意味ですから、免税対象が即ち元来は課税対象であることを意味します。上記 (i)より、非特許技術においても、所有権・使用権の譲渡が有償である場合、営業税の課税対象となります。
なお、「輸入貨物特許権使用料の見積価格についての弁法」(海関総署令2003年第102号、2003年7月1日施行)においては、ロイヤリティ以下の特許権を有する無形資産がこれを内包するハードと共に輸入された場合に、その使用料を関税及び輸入増値税の課税対象とすることとなっており、国税発〔2000〕179号の内容と好対照をなしています。
再整理すると、中国恒久的施設を有しない外国企業のソフト関連の収入は次の通りとなります。
営業税 | ソフトの譲渡等 | ソフトの貸付 |
源泉徴収有り | 特許権等の独占的技術権利が設定されたソフトの、所有権等の権利付有償譲渡 | 特許権等の独占的技術権利が設定されたソフトの、使用権の有償貸与 |
源泉徴収なし(増値税課税) | 特許権等の独占的技術権利の設定のないハード内包ソフト、又は直接に独占的技術権利の譲渡及びこれに対する支払を要しない商品ソフト | 特許権等の独占的技術権利が直接に設定されていないソフトのリース |
2) 免税
コンピューターソフトに関する営業税のみでの免税規定は定められていませんので、当該ソフトにも適用される、1.独占的技術及びテクニカルサービス (2)営業税 1)免税 の内容に基づいて免税措置が受けられることとなります。なお、営業税の減税措置はありません。
(4) 関税・増値税
関税・増値税とも主に財貨に課税され、関税は輸入時に課税、増値税は輸入時及び国内取引時に課税され、輸出時には輸出貨物を構成する物質の購入時に課税された仕入増値税か還付されることとなります(来料加工形態を除く)。
したがいまして、コンピューターソフト関連での関税・増値税の減免税及び還付の優遇税制は、コンピューターソフトの権利譲渡・使用とは関係がなく、製品販売・輸出入に関するものとなります。
1) 免税
中国においては、生産型外資企業のうち奨励業種の認定を受けたものについては、投資総額の範囲内で輸入設備の関税及び輸入増値税の免税措置が受けられることになっています。ソフト開発企業においても、これと同等の優遇政策の適用が受けられます。また、輸出還付税が全額還付されるものもあります。
外商投資企業を対象 財税〔1999〕273号:
国発〔2000〕18号: |
2) 減税
コンピューターソフトの販売については、IT優遇政策を推進する観点から、主に増値税の減税政策が採用されています。主な減税政策は下記の通りです。
北京中関村の外商投資企業を対象 財税〔1999〕192号: 北京中関村のソフト開発生産企業が自社開発生産ソフトを販売する場合、簡便法として製品売上高の6%で増値税額を計算する事ができる。 外商投資企業を対象
外商投資企業を対象 外商投資企業を対象 |
4.集積回路
集積回路に対する優遇税制についても、国発〔2000〕18号に、コンピューターソフトと共に規定されています。また、その後に公布された、当該通達と関連のある通達にも規定されています。
従って、以下に紹介する優遇税制も、2005年4月1日以降の適用はなく、また他の部分も改正される可能性があります。
(5) 集積回路企業の認定
集積回路の認定については、「《集積回路設計企業及びその製品の認定管理弁法》に関する通知」(信部連産〔2002〕86号、2002年3月27日施行)に規定されています。
外商投資企業を対象 信部連産〔2002〕86号: 【集積回路企業の認定基準】 下記の全てを満たす事
【税務機関での認定申請手順】
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(6) 企業所得税
1) 免税
外商投資企業を対象 財税〔2002〕70号: 集積回路生産企業のうち、集積回路の幅が0.8マイクロメーター以下の製品を製造する企業は、認定の後、2002年度より、企業所得税の「二免三減半」(課税所得が発生して2年間は免税、その後3年間は税率を半分とする)の優遇措置を受けることができる。ただし外商投資企業・外国企業所得税法の規定により当該優遇政策の適用をすでに受けている場合を除く |
2) 減税
外商投資企業を対象 国発〔2000〕18号:
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3) 再投資還付税制
外商投資企業を対象 財税〔2002〕70号:
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(7) 営業税
集積回路企業の優遇税制を規定している通達には、営業税の優遇措置はほぼ記載がありませんが、集積回路設計及び生産の過程で使用する特許権の譲渡等や関連コンサルティング・テクニカルサービスの提供がある場合には、前掲の1.独占的技術及びテクニカルサービス (2)営業税 の項を参照下さい。
(8) 関税及び増値税
1) 免税
免税の場合はソフト産業と同じく、使用設備輸入時の関税及び増値税の免除になります。
外商投資企業を対象 国発〔2000〕18号:
財税〔2002〕136号: |
2) 減税
(注:輸入増値税にかかるものについては、財関税[2004]40号通達により優遇措置の執行停止となる。後述3)を参照の事)
国発〔2000〕18号: 自社開発集積回路を販売する増値税一般納税人は、2010年まで実際税負担が6%を超過する部分については、徴収後に即時還付を行い、集積回路の研究開発と生産拡大に供するものとする。 財税〔2002〕70号: |
したがって、2010年までは、集積回路の生産販売企業も、結果としてソフト企業同様に、その製品販売における増値税の実際税負担額は3%となります。
3) 注意点:減免税の執行停止
これらの増値税の優遇税制も、前述の通り、アメリカとの合意内容に基づき執行停止や廃止の措置が取られることとなります。ただし、財関税[2004]40号通達(2004年10月1日施行)により、国内設計でかつ自らの知的財産権を有する集積回路製品につき、国内で生産する術がなく、国外でチップを加工するもの(財税〔2002〕140号通達の対象品目)については、従来は徴収後に即時還付を行う事とされていたのが、2004年10月1日以降は執行停止となり、原則税率の17%で徴収され、即時還付はなくなることとなりました。今後も、他の優遇措置撤廃の可能性がありますので、注意が必要です。
資料:IT関連通達法規の年表
以上
(2005年3月記・9,027字)
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