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ログイン2005年5月20日
日系企業の4割強が悪影響を予測
2005年4月に入って、北京や上海などの都市で「反日」デモが起こり、一部のところでは日系店舗やレストランを攻撃したり、日本大使館や領事館に投石したりするといった「騒動」まで拡大し、多くの日本人に衝撃をもたらした。「反日」デモの主な参加者は、大学生を中心とする若者で、かれら(彼女)が掲げたスローガンの一つに「抵制日貨」(日本製品ボイコット)がある。
「歴史歪曲」として中国や韓国から批判を受けた「新しい歴史教科書」の企画・編修者である「新しい歴史教科書をつくる会」のホームページに掲載された情報が利用され、そのスポンサーとされている複数の日本企業は攻撃の的となっている。中にはアサヒビール、三菱重工業、日野自動車、いすゞ自動車、住友生命保険、味の素、東京三菱銀行、清水建設、中外製薬、大成建設などがスクープされている(これらの企業によると、「つくる会」のホームページに掲載された「賛同者」の行動はあくまでも個人によるもので、所属企業または元所属企業とは関係はない)。
これらの企業名が「あいうえお」順で並んだこともあって、最初に出た「アサヒビール」は、中国東北部をはじめ、まずボイコットの対象となり、一部の販売店やレストランから排除された。反日デモが発生した直後に行なわれた調査では、上海における日系企業の4割強が反日デモや不買運動などにより今後の営業に何らかの影響を受けると予測し、すでに減収や商談への影響など実害を被っているとする企業も2割強に達したという。この反日騒動に対する分析は本稿のテーマではないが、ここで「日本製品不買運動」の行方だけについて考察してみたい。
依然として高い日本製品に対する信頼
結論からいえば、「日本製品ボイコット」はただ中国の一部の若者が日本への不満を表すもので、中国の消費者行動に対して、一時的な影響があっても、決定的影響を与えることは考えられない。実際、反日騒動が進行している4月30日、イトーヨーカ堂が中国での食品スーパー1号店を北京市内に開店した際、大勢の中国人消費者は来店し、同店への強い信頼感を示している。
「日本製車を破壊せよ」とのネット上の書き込みもあって、日本メーカーの乗用車の中国市場での販売は影響を受けるではないかとの懸念が少なくなかったが、2005年4月の中国乗用車販売状況からみると、その影響はほとんど見られなかった。中国の新聞報道によると、同月中国全体の乗用車販売台数は前年同期比18.2%増の約25万7300台となっているが、日系メーカーの販売状況もかなり順調で、うちホンダの中型車アコードは前年同期比約2割増の約1万1000台と、ほぼ計画通りの台数を達成した。高級車では日産のティアナやトヨタのクラウンも目標の販売台数を確保し、マツダも好調であった。
「日本製品不買運動」が成功できない最大の理由は、中国の消費者、なかでも「中間層」の消費行動の特徴にあるとされている。改革開放以降、特にWTO加盟を受けて、中国市場は開放性を高めているが、それを表すものとして、関税引き下げや非関税措置の縮小・廃止の実行のほか、中国の消費者の外国製品・サービスを信頼するという特徴も挙げられる。日本では輸入品を「国産品」と偽って売るといった「不正」はよく摘発されているが、中国では国産品を「輸入品」と偽って売るところがあっても、反対のケースはまず考えられないのである。
中国の調査機関が大都市の消費者を対象に調査した結果、多くの消費者の「買い物の原則」には最善は輸入品、次善は外国企業のブランドで作った外資系企業の製品、三番目は中国国内の有名メーカーの製品の順となっている。近年、中国企業の製品の中にも質の面で競争力を付けたものは出ているが、全体的にみれば、外国製品の人気が依然として高く、特に高所得者にとって、「最高の選択」とされている。
中国消費者の外国製品好きは、所得格差の拡大とそれに伴う消費ニーズの多層化によるところが大きいとみられる。中国人全体の平均的所得水準はまだ低いが、中には比較的高い購買力を持つ「中産階級」、つまり「中間層」も形成されている。この「中間層」は、主にマイホームやマイカー、他の高級消費財を購入することができる層を指し、中国のシンクタンクの試算によると、「中間層」は毎年2000万人前後増のスピードで拡大している。
不買運動よりも価格・デザインがカギ
「中間層」の消費行動にはものやサービスの購入にあたって、より質を重視するという傾向がみられる。かれら(または彼女たち)は外国製品の主な顧客となっている。昨今、中国市場において日本企業と欧米企業、韓国企業とは熾烈な競争を展開しているが、日本製品、日系企業のサービスは依然として高い評価を得ている。
実際、反日デモに参加した中国人の中にも日本製品好きなものが多く含まれている。反日デモへの参加を呼びかけた団体の「上海地区日本右翼活動への抗議活動に関する説明書」には幾つかの注意事項が書かれているが、その一つに「日本製のカメラ、ビデオカメラ、携帯電話と録音機など電子製品を持たないこと」がある。このことからも上海の若者の間で、日本の電気製品が多用されていることが読み取れる。
中国社会科学院などが行なった中国人対日感情に関する調査によると、中国人、特に若者のうち、「日本嫌い」との回答者は過半数を占めているが、日本製品については「好き」や「信頼」と評価する声が多い。日本企業の対中投資の多様化に伴い、日本の製品にとどまらず、日本企業のサービスに感心する消費者も確実に増えている。
2003年のSARS=新型肺炎の蔓延は多くの中国人に日本を再認識させ、アジアで唯一ともいえる、感染者が出なかった国–日本の公共衛生水準や日本人の衛生習慣が、マスコミの賞賛対象となったと同時に、イトーヨーカ堂(中国名は「華堂商場」)をはじめ日系スーパーやコンビニの魅力も増大している。うちイトーヨーカ堂は品揃えや徹底した品質管理で食品売り場を充実するといった戦略が奏功し、北京では食品の新鮮さで人気を集めた華堂商場の食品しか買わない北京っ子も出ているほどである。
日本企業にとって、「日本製品ボイコット」よりも価格やデザインを含む競争力、中国の消費者に合う企画力がカギを握っているといえる。中国市場の需要が伸びている乗用車、携帯電話、パソコンなどの分野において、日本企業はいずれも欧米企業、ひいては韓国企業に遅れを取っているという現状を、いかにして打開するかが課題となっている。
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