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ログイン2010年6月21日
中国で現地法人を設立する場合、増値税の一般納税人資格が取得できるかどうかは、大変重要な要素となりますが、一体、一般納税人資格とはどのようなものでしょうか。また、一般納税人資格が取得できないと、何が不利になるのでしょうか。【2,290字】
中国で現地法人を設立する場合、増値税の一般納税人資格が取得できるかどうかは、大変重要な要素となります。特に販売会社の場合は、生産型企業に比べて審査が厳しいため、設立時点(一定の課税売上高実績を積む前)で一般納税人資格を取得するためには、資本金・人員などをはじめとする、大きなハードルが設定されています。
では、一般納税人資格とはどのようなものでしょうか。また、一般納税人資格が取得できないと、何が不利になるのでしょうか。ここでは、一般納税人資格の意義と、2009年以降実施された規制緩和について解説します。
1.一般納税人資格とは
増値税の一般納税義務者と小規模納税義務者の違いは以下の通りです。
販売時の税率 : 一般納税義務者 17%・小規模納税義務者 3%
仕入控除・輸出還付 : 一般納税着者 可能・小規模納税義務者 不可
増値税発票の自社起票: 一般納税着者 可能・小規模納税義務者 不可
以上の通り、仕入控除・輸出還付・増値税発票の自社起票が認められるのが一般納税義務者、認められないのが小規模納税義務者ということになります。
販売税率が、小規模納税者は一般納税義務者に比べて低い(3% vs 17%)ため、一見したところ得に見えますが、仕入控除が認められない(仕入増値税全額がコストになる)ので、実際の税負担は一般納税義務者よりも重くなります。
一般納税義務者の場合
100で仕入れた商品を、(利益なしで)200で販売した場合、一般納税人資格を有していれば、商品仕入時に17の増値税をサプライヤーに支払い(仮払処理)、販売時にはバイヤーから34の増値税を回収します(仮受処理)。
・ 仕入時
仕入 100 | 現預金 117
仮払増値税 17
・ 販売時
現預金 234 | 売上 200
仮受増値税 17
増値税に関しては、以下の通り、仮受増値税が34、仮払増値税が17計上されていますので、これを相殺して、差額を納税することとなります。
・ 納税時
仮払増値税 17 | 仮受増値税 34
⇒ 相殺後、仮受増値税が17となるため、17(付加価値=販売価格と仕入価格の差額の17%)を納税することになる。
小規模納税義務者の場合
小規模納税義務者の場合は、仕入時に支払った増値税(17)はそのまま仕入原価となってしまいます。その上で、販売時に6(3%)の増値税をバイヤーから回収し、これを税務局に納税(6に関する発票は、税務局が代理発行)することとなります。
・ 仕入時
仕入 117 | 現預金 117
・ 販売時
現預金 206 | 売上 200
仮受増値税 6
・ 納税
仮受増値税である 6を納税。
以上の通り、仕入コストは117・販売収入は200、売買損益は83となり、一般納税義務者に比べて仕入増値税分(17)採算が悪化します。よって、同一の採算とするためには、販売価格を217とせざるを得なくなります。結果として、バイヤー側にしてみれば、小規模納税義務者から購入すると、税コストが販売価格に転嫁され、購入価格が割高になる可能性が高いため為、小規模納税義務者が敬遠されるものです。
2.増値税の一般納税義務者に関する基準緩和
2009年1月の増値税暫定条例・同実施細則改定、及び、2010年3月の「増値税一般納税人資格管理弁法(国家税務総局令[2010]22号)」・「増値税一般納税人の指導期間に関する管理弁法(国税発[2010]40号)」の施行により、以下の規制緩和が行われています。
① 一般納税資格取得のための年間売上高
従来、一般納税資格取得のためには、製造業は年間100万元・商業企業は年間180万元の課税売上高が必要でしたが、増値税暫定条例実施細則の改定により、製造企業50万元・商業企業80万元に緩和されました。
また、「国家税務総局令[2010]22号」では、年間課税売上高の定義を、「連続する12ヶ月を超えない経営期間内の累計売上高を含み、免税売上高を含む」と規定しました。つまり、納税年度が単位ではないこと(年度変更による足切りはない)、輸出専門企業(課税売上が無い企業)でも増値税の一般納税人資格を受けられることが明確になりました。
ちなみに、輸出専門企業(課税売上が無い企業)が、増値税の一般納税人資格を受けることができるかどうかについては、「新設商貿企業に関する増値税徴収管理許可問題の緊急通知に関する補充通知(国税発明電[2004]62号)」でも、所管税務局の許可を受ければ、一般納税人となり得ることが規定されていましたが、より明確な形で認められたことになります。
② 商業企業に対する指導期間
新設商業企業は小規模納税義務者から開始すること、一般納税人資格を取得した場合でも、一定の指導期間を経なければならないことが、「国税発明電[2004]37号」に規定されています。これが、「国税発[2010]40号」により、以下の通り緩和されました。
1)一般納税人資格取得条件・指導期間等に影響を及ぼす、商業企業の規模の分類基準が、「大中型企業(資本金500万元以上・従業員50人以上)・小型企業(要件を満たさない企業)」から、「大型企業(資本金80万元超・従業員10人超)・小型企業(要件を満たさない企業)」に変更されました。
2)商業企業に対する指導期間が、6ヶ月から3ヶ月に短縮されると共に、小型商業企業が指導期間中に発行する発票の最高額が、1万元から10万元に緩和されました。
国税発[2010]40号により、新設商業企業の増値税一般納税人資格の取得が、実務的にどの程度緩和されるかは、まだ不透明です。ただ、資本金80万元・従業員10名超という規模は、従来に比べて大幅な緩和(多くの企業にとって、対応可能な規模)です。この条件を満たせば、新設段階で一般納税人資格の取得の取得が認められるのであれば、新規進出企業にとって、新設時の税コストの削減につながる、メリットの大きい制度改定といえます。
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