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これは知っておきたい最新中国ビジネス事項15

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2010年6月12日

記事概要

2010年3月付の東莞市政府工作会議議事録にまとめられた、来料加工独資転換に関する無償提供設備の移管のポイント、及び設備移管に際しての企業所得税・増値税課税について解説します。【2,299字】

1.東莞市政府工作会議議事録にまとめられた設備移管のポイント

「財関税[2009]48号」・「税関総署公告[2009]62号」に基づく組織転換のスケジュール、つまり、2011年6月末までに現物出資申請を行う事を前提に、来料加工廠の独資転換作業が本格化しようとしています。

来料加工独資転換に関しては、無償提供設備の移管が重要なポイントの一つとなりますが、東莞市では、設備の移管に際して実務上の問題が生じます。これは、同市では、輸入後5年未経過の設備(税関監督期間中の設備)のみ現物出資が認められ、監督期間を満了した無償提供設備は現物出資ができない事です。

ただ、資産の購入代金の対外送金は、輸入通関価額を原則として認められるのが、中国の外貨管理の原則的な考え方ですので、無償で輸入された設備の場合は、一切の外貨送金が認められません。よって税関監督期間満了後の資産の移管に関しては、合理的な対応方法がないという問題がありました。

この対応方法が、2010年3月付の東莞市政府工作会議議事録(東莞市人民政府弁公室2010年19号)にまとめられています。同議事録に記載された設備移管方式は、以下の通りです。
 
1.「東莞市の来料加工企業の操業を止めない三資企業転換に関する作業の補足通知(東外経貿[2009]108号)」に規定する通り、全ての資産・負債・人員を移管する場合、「企業の全部の資産の譲渡に関しては増値税を徴税しない問題の回答(国税函[2002]420号)」に従い、資産移管時の増値税を徴税しない。
この場合、設備の移管に関しては、増値税専用発票・普通発票を共に発行せず、新設独資企業側の固定資産計上に際しては、資産鑑定の資質を持った機関が価額を算定し、相手勘定を資本準備金として計上する。

2.上記の条件に合致しない設備の移管に付いては、2008年12月31日以前に購入した設備に付いては、2%の税率により増値税を徴収し、普通発票を発行するものとする。譲渡に際しては、譲渡額と設備の税関通関価額の差額に対して、25%の税率で企業所得税を課税する。譲渡価格が、輸入通関価額よりも低い場合は、企業所得税は課税しない。

3.来料加工廠の自己使用設備は、通常の、資産売却処理を行う事もできる。この方法を採用する場合は、一般納税義務者は17%、小規模納税義務者は3%の税率で増値税を課税する(小規模納税義務者の場合は、税務局が、専用発票を代理発行する)。この方法で課税が行われた場合は、購入側(新設独資)は、増値税の仕入控除が適用できる。

増値税の課税に付いては、東外経貿[2009]108号と同様の内容ですが、重要な追加事項として、以下が挙げられます。
 
①増値税の課税対象とならない譲渡に関しては、資産鑑定機関が価額を算定し、相手勘定を資本準備金として処理する。

②譲渡価額が無償提供設備の通関価格を超えなければ、企業所得税は課税されない。

2.設備移管に際しての企業所得税・増値税課税

(1)設備移管時の増値税課税
「財関税[2009]48号」・「税関総署公告[2009]62号」に基づいて、2011年6月末までに現物出資申請を行う事で認められるのは、輸入時の増値税(監督期間未経過の場合に課税されるもの)だけですので、移管時の増値税に付いては、国税函[2002]420号の条件に基づいて判断します。 国税函[2002]420号に基づいて、設備の移管に関わる増値税が免除されるというのは、どの様な場合でしょうか。

増値税の課税が免除されるのは、来料加工廠がそのまま独資転換される場合です。一方、課税対象となるのは、一部の営業・人員・設備のみを移管する場合、及び、既存の独資に来料加工廠の営業を移管する場合と考えてよいでしょう。

尚、無償提供設備の移管は、東莞市においては、税関監督期間が満了しているか否かによって、現物出資、若しくは、譲渡方式による移管が分かれますが、これに際しての増値税の扱いは、現物出資であっても売却であっても同様です。

(2)税関監督期間満了後の設備の移管処理
税関監督期間を満了した資産は、売却方式により移管しますが、新設独資の経理処理上、「相手勘定を資本準備金にする」というのは、無償譲渡を行う事を意味しています。この場合の手続は、以下の通りです。

鑑定機関(商検部門と判断される)での資産鑑定評価
  ↓
鑑定価額に基づき、資産譲渡契約を締結
  ↓
無償譲渡
※この際に、国税函[2002]420号に基づいて、増値税の課税対象取引と判断された場合は、鑑定評価に基づいて増値税が課税される。
  ↓
新設独資側では、鑑定評価に基づいて資産計上すると共に、相手勘定を資本準備金とする。

(3) 譲渡に関わる企業所得税
議事録には、譲渡価額が無償提供設備の通関価格を超えなければ、企業所得税は課税されないと記載されています。ここで問題となるのは、通関価格が何を意味するかという点です。

無償提供設備の輸入に際しては、税関に輸入設備のリストを提示しますが、ここには、設備の価格が記載されます。議事録に記載された通関価格が、この金額を指すのであれば、(譲渡価格は、通常、輸入時の価格を下回る事になるため)譲渡益は発生せず、企業所得税の課税は行なわれない事になります。

一方、実際の通関価格を指す場合は、無償提供設備の通関価格は0という事になり、「譲渡価格-通関価格」は、譲渡価格そのものを意味します。よって、譲渡額全体に対して25%の課税が行われる事となります。

ただ、資産の受贈益に対しては、計上科目の如何を問わず(利益計上、資本準備金の如何を問わず)課税対象となりますので、監督期間満了後の設備(現物出資が認められない設備)の移管に際しては、譲渡価格の25%に相当する企業所得税が課税される可能性が高いと思われます。

(2,299字)

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