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緊密化する中韓経済関係(2)

中国ビジネスレポート 金融・貿易
馬 成三

馬 成三

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2006年12月12日

記事概要

 中国は1970年代末から対外開放政策の一環として外国直接投資の受け入れに踏み切ったが、韓国企業も1980年代半ばから香港や日本を経由して対中投資を行ない始めた。

1.日本に追いつく韓国の対中投資

 

中国は1970年代末から対外開放政策の一環として外国直接投資の受け入れに踏み切ったが、韓国企業も1980年代半ばから香港や日本を経由して対中投資を行ない始めた。中国側の統計によると、1985~1992年の間、韓国企業の対中直接投資は認可件数で973件、契約金額で6.2億ドル、実行金額で1.6億ドルとなっている。実行金額をベースに計算すれば、中国の直接投資受け入れ総額に占める韓国の対中投資のシェアは0.5%にとどまっていた。

 

中韓国交樹立(1992年)を契機に、韓国企業の対中投資は大きな伸びを示してきた。中国商務省の統計によると、1992年に認可件数で650件、契約金額で4億2000万ドル、実行金額で1億2000万ドルだった韓国の対中投資は、2005年にはそれぞれ6115件、198億ドルと52億ドルへと急拡大し、中国の外国直接投資受け入れ全体に占める韓国のシェアもそれぞれ1992年の1.3%、0.7%と1.1%から、2005年の13.9%、10.5%と7.1%へと急上昇した。

 

1992年から2005年にかけて、アジア通貨危機の影響が深刻だった1998年と1999年を除いて、韓国企業の対中投資は実行金額ベースで一貫して増加傾向を示していた。中国商務省の統計では、2005年末までに韓国企業の対中投資(累計)は、認可件数で約3万9000件、契約金額で708億ドル、実行金額で313億ドルとなっている。実行金額をベースに計算すれば、中国の直接投資受け入れ総額に占める韓国のシェアは5%と、香港、日本、米国、台湾に次ぐ第5位を占めている(中国商務省『2006年中国外商投資報告』)。

 

韓国企業の対中投資の拡大ぶりは、日本企業の対中投資との比較からもよく分かる。2001年までは韓国企業の対中投資額(実行ベース)は累計で日本企業のそれの3分の1強(36.5%)にとどまっていたが、2002~2005年には日本の約9割まで拡大した。単年度では、2004年の韓国の対中投資は実行金額ベースで前年比4割増の62億ドルに増加し、一挙に米国(39億ドル)と日本(55億ドル)を抜き、香港と英領バージン諸島に次ぐ対中投資相手に躍進した。

 

2.中国は韓国の最大の投資先へ

 

韓国にとって、中国は同国の投資先としての地位も急速に高めている。韓国輸出入銀行の統計によると、2000年に4.3億ドルだった韓国の対中直接投資額(実行ベース)は、2004年と2005年にそれぞれ約23億ドルと26億ドルに拡大し、韓国の対外直接投資全体に占める対中投資のシェアも2000年の1割から2004年の38%と2005年の40%へと急上昇した。韓国にとって、中国は2004年から米国を抜き、韓国の最大の投資先に浮上した。

 

韓国の対中投資の急拡大をもたらした要因の一つに、中韓国交樹立に伴う制度的環境の整備もある。中韓国交が樹立してから、両国政府は相次いで「貿易協定」や「投資保護協定」、「海運協定」、「二重課税防止協定」、「漁業協定」などを締結したり、「経済貿易と技術協力合同委員会」を設立したりして、相互投資を含む両国の経済関係を発展させるための環境作りを行なってきたのがそれである。

 

韓国企業の対中投資は、中小企業による紡績・服装・玩具・履物の生産や電子電気機械の組み立てからスタートしたが、1990年代末から大企業の対中進出の本格化に伴い、業種的にも自動車製造や情報産業、輸送、建築などに拡大している。対中進出の動機の面でも安い労働力を狙うものから中国市場を狙うものへのシフトがみられる。現代自動車や他の大手企業の対中投資は、主に中国市場を狙うものとされている。

 

地理的に近いということもあって、韓国企業の対中投資は地域的には最初から山東半島や遼寧省、吉林省に集中していた。しかし、中国の対外開放の拡大、特に上海浦東開発と内陸部開発の進展に伴い、韓国企業の対中投資も他の沿海地区と内陸部に拡大している。21世紀初頭現在、韓国企業の進出先として、山東省、天津市、江蘇省、遼寧省、上海市、浙江省などが大きなシェアを占めている。

 

韓国の対中直接投資(実行ベース)

  金額(億ドル) 構成比(%)
2000年 4.3 10.3
2001年 5.1 14.2
2002年 9.9 27.5
2003年 15.5 40.1
2004年 22.9 38.3
2005年 26.2 40.4

資料:ジェトロ『ジェトロ 貿易投資白書』各年版(元出所は韓国輸出入銀行)。

 

 

3.目立つ中国企業の韓国進出

 

1990年代半ば以降、中国企業の韓国進出も多くみられるようになった。中国商務省によると、2005年末までに同省が認可し、または同省に登録された中国企業の対韓国投資(金融類投資を除く)は、累計113件、中国側の出資額(契約ベース)が9億2000万ドルで、うち2005年だけで約6ドルと、2004年までの累計を大きく超えている。

 

中国企業の対韓国投資には中国企業による韓国企業の合併・買収(M&A)が注目される。上海自動車集団による双龍自動車の買収、京東方科技株式会社による韓国のHYNIX(元現代電子)のTFT液晶ディスプレイ分門の買収などがその好例である。

 

中韓経済関係における今ひとつの内容に、中国企業の韓国での工事請負と「労務協力」(中国側の労務輸出)もある。中国商務省の統計によると、2005年末までに中国企業が韓国で完成した請負工事営業額は累計で4億3000万ドル、契約金額で6億6000万ドルとなっている。労務輸出の完成営業額は累計で23億6000万ドル、契約金額で28億3000万ドル、2005年末まで中国企業が韓国に派遣した労務人員は延べ5万2000人に達している。

 

4.資金協力と人員交流の発展

 

中韓政治関係の改善を背景に、中韓間の資金協力も進んでいる。中韓国交樹立後の1993年からアジア通貨危機発生直前の1997年前半にかけて、韓国は中国側に2億3000万ドルの政府借款(ODA)を供与した。他方、アジア通貨危機で韓国経済が大きな打撃を受けていた際、中国は韓国に対して約7000万ドルの資金援助(IMF=国際通貨基金経由)と、3億ドルに上る貿易融資を提供した。

 

中韓経済関係の緊密化に伴い、両国間の人的交流も盛んに行われている。2005年には中韓間の人的往来は延べ440万人に達し、うち韓国訪問の中国人は85万人、中国訪問の韓国人は355万人と、いずれも史上最大の数字を示している。なかでも韓国人の中国入国者数は、中国入国外国人総数でトップの座を占めている。

 

韓国人の中国留学生の増加ぶりも目を見張るものがある。2005年末現在、中国留学中の韓国人留学生は中国滞在外国留学生総人数の4割強に相当する約4万7000人に達している。同期間、韓国留学の中国人学生も1万3000万人を数えている。

 

中国の経済系名門大学の一つである対外経済貿易大学の外国留学生(2006年9月現在)は、合計1850名、79カ国から来ているが、うち最も大きなシェアを占めているのは韓国人留学生である。韓国人留学生は全体の43%に相当する791名に達し、うち「学歴生」(語学研修を除く、学歴を取得するための留学コース)だけで585名と、韓国人留学生全体の4分の3(74%)を占めている。

 

これに対して、日本人留学生は合計84名、うち「学歴生」は26名と、それぞれ韓国人留学生の1割強と4%強にとどまっている。ちなみに欧米諸国からの留学生は310名(うち「学歴生」は105名)、インドネシア人留学生は232名(うち「学歴生」は87名、タイ人留学生は136名(うち「学歴生」は81名)をも大きく下回っている。 (06年12月記3,187字)

 

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