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内部統制【第三回】:2.不正の牽制

国際ビジネスレポート 内部統制
川島 肇

川島 肇

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2015年11月5日

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米国の公認不正検査士協会(ACFE, Associated of Certified Fraud Examiners)の不正報告では、2014年度の例を上げると、報告件数ベースでの構成比率は、資産横領85%、汚職37%、不正会計9%となります。つまり現実に起こる多くの不正には「資産の横領」が関わっている事になります。(上記の合計額が100%を超えるのは、互いの不正を兼ねているケースがある為です)

中国に進出されている日系企業でも「不正」=「資産の横領」というイメージが強いと思います。購買担当者が通常より高い値段で購入先より購入し、見返りとしてキックバックやリベートを受け取る不正、費用の水増し請求、裏金やプール金など、疑いだしたらキリがないと。そして「内部統制の厳格な運用がとんだ藪蛇になる」というような話しの流れにもなります。

しかし一方では、「手が打てるならんとかしたい」という経営者の方も多くいらっしゃるのではないかと思います。ここで内部統制の構築や運用のお手伝いをするという話しですが、これは「不正の実態の白黒をはっきりさせ、不正を行った者を罰する」という事を直接、意図しているものではありません。むしろ「不正の牽制」という事に重きを置いています。

不正は当初は小さな金額から始まり、不正を重ねるごとに金額が膨らみ大きな不正につながっていきます。この不正を行う者が「見つからない」と思っている現在の仕組みを、内部統制のコントロール下で変えていく事がその狙いです。又、業務フローチャートを作成して行く過程で、ブラックボックス化している重要な仕事を棚卸しして行き、承認権限を再確認する事で、本来ならば与えられる権限のないスタッフに権限が委譲されてしまっている事実などを確認し、自然な形で業務改善をするきっかけも作ります。ここにデータ分析によるCAAT(Computer-Assisted Audit Techniques)を加える事で、少額ではあるが不自然な取引や異常点を継続的にモニタリングする事が可能となり、不正実行者(あるいはその動機のある者)に「気付かれている事に気付かせる」事が有効的に行えるようになります。通常のサンプリングを用いる監査に対し、このCAATは、「検出的コントロール」の機能をUPさせる事が期待でき、その費用対効果でも十分にメリットがでると思われます。

最後に、不正発生後の対応についてですが、これは不正調査のプロセスになります。その場合、初期の段階から、法律や訴訟のプロである弁護士と相談しながら対応を検討する必要があるかもしれません。特に不正に関与した者へのヒアリングは、初回が極めて重要であると言えますから、ここで自白が得られなければ、二回目以降の自白も極めて困難な状況となります。手持ちの証拠が十分に揃っていて、言い逃れができない状況にあるという事を、当事者に悟らせて追い込む為には、経験によるノウハウが必要となります。不正のレベルが、懲戒上の責任か、刑事上の責任か、民事上の責任かによっても、対応は大きく変わってきます。
 
以上

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川島

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