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CAAT(コンピュータ利用監査技法)を使い始めて (第9回)

国際ビジネスレポート 内部統制
川島 肇

川島 肇

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2019年8月29日

今まで、ヒストグラム、バブルチャート、ベンフォード分析、年齢調べとグラフ化できる便利なツールを紹介し、見栄えのする機能を説明してきました。其処では、グラフ化によりデータの傾向を可視化し、更に異常値となるポイントを選びドリルダウンする事で、詳細な情報をつかむことが可能になります。内部監査ではその異常値を実際に現場に行って精査する事で、監査効率を大きく高めることができるようになり、又、プレゼンの際にも、全体から細部へと分析する事で、全体像と要点がより明確に伝わるようになります。

今後、監査ソフトは、間接部門の自動化をテーマとしたRPA(Robotic Process Automation)に対応していく事と思いますが、そのロボット自体を監査ソフトへ取り入れていく事で、継続的監査への対応が図られるようにもなってきました。具体的には、ロボットを導入し、監査手続きを自動化したログ(監査ソフトのコマンドを自動実行する為の簡易的なプログラム)をロボットに取り込む事で、スケジュール管理が自動化されるようになります。このテーマは非常に重要なものなので、今後どこかで紹介したいと思います。

今回からは話のテーマ自体を少し変えて、日頃、内部監査の現場で出てくる身近な話題について話しをしていきます。中国拠点の内部監査で、監査ソフトをどのような場面で使ったら有効か、試行錯誤しながら考えているテーマです。

1. ERP等システムを利用する際、各種マスタリストは常に有効に保たれているか

1-1. 製品単価マスタ、顧客マスタのデータが登録申請書の内容と一致しているか?

マスタデータへ入力する顧客情報、仕入先情報、製品情報、仕入単価情報、売価情報などは、各部門の担当者が登録申請書を作成し、承認者が承認した後にシステムにマスタ登録されますが、その手続きが有効に行われているかを確認するプロセスです。作成者、承認者、入力者、入力データ確認者などが関わってきますが、承認者によって正しく承認されているか捺印の有無を確認していきます。1-2以降の項目は、実際に監査ソフトを使用したデータ監査の領域ですが、1-1自体は、実際にはマニュアルによる目視の対応になります。(もしRPAを導入し、申請書自体をOCR処理でデータ化していれば、監査ソフトによる突合せが可能ですが、現時点ではここはマニュアル対応としておきます。)

1-2. 仕入、在庫、販売の各実績(データ)とマスタリストの整合性が取れているか?

ここでは、仕入、在庫、販売の実績レポートで使用されている単価が、マスタリストに登録されている単価と一致するかの突合せになります。マスタリスト上の単価には適用日があり、現行で使用される単価はVALID、単価変更されて現在は使用されていないものはINVALIDというようにステータス区別されるのが通常です。販売実績の資料がシステムからアウトプットされる場合、通常はマスタリスト上の単価と一致するはずですが、監査対象としては押さえておきたい項目です。

1.3 エラーリストつぶし込み作業、修正データの反映が適切か?

システムのオペレーションでは、エラーリストを出力し、そのエラーを潰しこむという作業が行われます。例えば、1.2で扱った単価マスタで、仮単価の意味で0.01が入力されている場合、あるいは仮単価のフラグ表示がなされている場合では、月次締めまでに仮単価を正式単価に修正しないと、仕入、在庫、販売、利益などの金額が月次レベルで正しく表示されない事になってしまうので、オンタイムの潰しこみが必須となりますが、この状況を監査ソフトで検証します。

1.4 注文データ(EDI)取込み時に、数量や単価差異をどのように処理しているか?

電子媒体化が進み、EDIによる取り込みが主流になりつつあると思います。(あるいは、紙媒体の受注でもOCR処理によりデータ化という手段も考えられると思いますが)
注文データ取込み時に各マスタとの整合性を検証して、差異が生じた場合どのように処理しているか、監査ソフトを使用して分析し、正しい処理がなされているかを検証します。

1-5 月次単位で異常値レポートを出力し、原因分析・対応がされているか?

例えば、売上実績において製品別の粗利計算を行い、異常値(高粗利あるいは低粗利)を正しく検証できているかをチェックしていく事などがテーマになります。1-3と関連しますが、マスタリスト上の入力で原価が未登録でゼロの場合や、仮単価の0.01のままで月次決算を迎えた場合などでは、粗利ほぼ100%という結果となり異常値として抽出されます。又、外貨登録でJPYとUSDを間違えた場合や、数量単位でキログラムとグラムを入力間違えた場合などで粗利異常値として報告される事が考えられます。

各項目により監査ソフトでは別々のコマンドを利用し分析していきますが、監査手法について言うと、特に1-3, 1-4, 1-5のケースでは日数分析が有効であると思います。例えば、
1-3では、エラーリストの処理が月末までに完了しているかは、修正日が当月末までの日付であるかどうかで判定する事ができます。
1-4では、コストダウン要求で新単価が決定していない場合、取込んだ注文データと社内マスタの整合性が取れないケースがありますが、マスタデータへの販売単価の修正入力日、あるいは、注文データの再取り込み実施日を検証する事で状況は明らかになります。
1-5では、修正データの入力日が月次決算後であった場合では、当月の月次決算に大きな影響がでることが予想されます。

今回はマスタリスト絡みの項目を洗い出しましたが、次回は在庫トランザクションをテーマにしたいと思います。

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