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ログイン2019年8月28日
今回は現地化を切り口に、現地と本社のあり方を考えてみましょう。
ちなみに、現地化という観点で前回の『大本営主義』を捉えると、「現地化という名の本社化」と言えます。
2000年代ぐらいまでは、「どう現地化を進めるか」が日系企業の大きなテーマでしたが、その後、現地化が進み、「現地化を進めた結果、その弊害が出てきた」という相談も増えてきました。
確かに、
駐在員数を減らすため組織の現地化を進めた→適性や力量が足りず対客先や組織内部で様々な問題が噴出→火消しのため日本から支援者を投入したり空輸で緊急対応したり→結果的にコストはあまり下がらず客先の評価や組織の求心力だけが低下
……という実例を見たりしてしまうと、本来の目的とは異なる結果、むしろ逆効果?と感じるようなケースもあります。
現地化というと、無意識のうちに「どう現地化するか」を考えがちですが、そろそろ原点に立ち返って、以下のようなことを冷静に考えた方がよいように思います。
①なぜ現地化するのか ②何をどこまで現地化するのか ③いつまでに実行するのか ④現地化せず残すものは何か |
①なぜ現地化するのか
現地化とは一種の方法ですから、無条件に肯定したり推進したりすると、経営情報システムや成果主義の導入が流行ったときの多くの会社と同じように、扱いに困ったり、経営が混乱したりします。
現に、経営者や市場開拓手法を現地化した結果、会社を畳んでリセットを余儀なくされたり、多大な労力を払って軌道修正したりする会社があります。
では、なぜ現地化するのか。
答えは一つではないでしょうが、重要な目的の一つが「継続的に利益を確保するため」であることは間違いないと思います。
逆に言えば、継続的な利益確保に反するにも関わらず現地化する合理的な目的はまずないでしょうし、あったとしても長く続けられません。
現地化を進めるのは、それが先進的経営だからでも、顧客に褒めてもらえるからでも、現地の会社は現地人に任せるのが自然だからでもなく、継続的に利益を確保するため。もちろん、目先のコスト削減のために現地化を図り、顧客の評価を下げたり、大局的な費用対効果を悪化させたりするのも、誤った現地化。
この原点・目的を見失わないようにしつつ、現地化を考えたいと思います。
②何をどこまで現地化するのか
管理人材や調達先を現地化するのも現地化ですが、他にもあります。列記してみると、
□人材・管理の現地化 □市場の現地化 □技術の現地化 □研究開発の現地化 □資金調達・運用の現地化 □戦略・方針策定の現地化 □意思決定の現地化 |
……全体像を図に整理してみました。
こうして整理してみると、目的に応じて大きく三段階の現地化があるように思います。
段階一:製造のための現地化 コスト削減を狙いとした一部機能の現地化。現地競合なし→製造、人材(作業者)などの現地化 |
段階二:顧客のための現地化 現地での取引のための事業機能の現地化。現地競合少→段階一+調達、人材(管理者・技能者)、販売先(既存先中心)の現地化 |
段階三:生存繁栄のための現地化 現地での市場開拓・生存を目的とした現地化。現地競合は熾烈→最終的にはすべての現地化が必要 |
現地法人が次にどの段階を狙うのかによって、現地化の範囲と程度を決めていくことになります。
ここで一つ、留意点として挙げたいのは、日系企業の「意思決定の現地化」は、ときに事業展開を阻害するほど消極的だという点です。たとえば、コピー機一台、管理者一人の採用を、現地の総経理や管理部長が決裁できないという話はよく聞きます。
現地で意思決定できないと、経営のスピードを直撃します。また、現地経営層の権威確立にもダメージとなります。強いボスやリーダシップが存在してこそ安定する中国の組織運営において、現地側(ここで言う現地側とは現地人材だけではなく駐在員も含めて)の意思決定権が小さすぎるというのは、組織の安定・求心力にとってマイナスです。
一方で、現地の意思決定権を拡大することは、現地経営陣の責任が重くなることでもあります。その重さに対応できる体制かが問われます。また、統制やチェックなしの野放図な権限委譲が不正を招くことは皆さんご存じの通り。とりあえず意思決定を現地化すればいいという話でもありません。
これらを総合して、意思決定の現地化については、深刻に検討されてもよいように思います。
(以上)
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