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【中国深読みコラム】第11回~日中間の四つの政治文書~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2014年9月19日

記事概要

【1,149字】

9月4日の北京共同電に、“中国の習近平国家主席は9月3日、「抗日戦争勝利記念日」に合わせた重要講話を発表し「中国は中日関係の発展に努力し四つの政治文書を基に中日関係の長期の安定的で健全な発展を望んでいる」と述べ、両国関係の改善に意欲を示した。昨年12月に安倍晋三首相が靖国神社を参拝後、習氏が公の場で日中関係の改善に意欲を表明したのは初めて。一方で習氏は「歴史を否定することは許されない」とも述べ安倍政権をけん制した。”との記事が掲載されました。説明なしで「四つの政治文書」とありますが、これらの文書とは一体何を指すのでしょうか?来る11月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳級会議で日中首脳会談は実現するのか、の試金石とも言える日中間の四つの政治文書を今回は深読みしたいと思います。

日中双方の国民の80%以上が相手国に良くない印象を持つとの世論調査が発表され、現在は戦後最悪の日中関係と言われておりますが果たしてそれは事実でしょうか?来年で終戦後70年になりますが、前半の27年間は日本と中国は交戦状態が終了しておらず、貿易や人の往来は途絶しており、最悪の日中関係の深さは現在の比ではありませんでした。1972年度の貿易額は10億ドル、人的往来は僅か1万人ですが、2013年度の貿易額は3,125億ドル、日中間の往来は418万人です。尖閣問題や抗日デモで前年度より大きく落ち込んでも、現在の日中関係は国交回復前よりは良好であり、その基礎を作ったのが四つの政治文書なのです。

1. 1972年:日中共同声明(国交回復文書)
日本側:田中角栄首相、中国側:周恩来首相
2. 1978年:日中平和友好条約(日中間のすべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は威嚇に訴えないことを確認)
日本側:園田直外務大臣、中国側:黄華外務大臣
3. 1998年:日中共同宣言(毎年、日中一方の国家指導者が相手国を訪問することを確認)
日本側:小渕恵三首相、中国側:江沢民国家主席
4. 2008年:日中共同声明(戦略的互恵関係)
日本側:福田康夫首相、中国側:胡錦涛国家主席

これらを見ると、日本側代表はいずれも自民党の首相や外務大臣です。1992年の天皇訪中を挟み、1972年から40年の長きに渡り、先人がこつこつと川原の石を一つずつ積み上げて来た歴史がよく解ります。それを一挙に突き崩し、四つの政治文書の一部が履行されない状況になったのが、民主党政権時代の尖閣問題であり(きっかけは石原都知事)、それに追い打ちをかけたのが安倍首相の靖国参拝問題です。残された2ヵ月間で、突き刺さった日中間の棘が抜けるのか、日中首脳会談は再開されるのか、注目したいと思います。

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