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フィリピン小売市場

アジアビジネスレポート その他アジア
森辺 一樹

森辺 一樹

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2014年10月23日

GDPの30%以上にあたるフィリピン小売市場。マニラ経済圏を中心に所得の上昇が人々の購買意欲を掻き立てる。その欲求に答えるべく、モダン・トレード(近代小売)が更なる店舗展開を進めている。

フィリピンの近代小売の主役はなんといっても、『SM』、『Puregold』、『Robinsons』『Rustans』の4社だろう。中でもSMの存在感は一段と大きい。SMは、フィリピンを代表する中華系財閥であるシー財閥の企業だ。富裕層や中間層をターゲットとしたSM系デパート、モール、スーパー、ハイパー等は、圧倒的な存在感を放つ。
財閥内には小売以外に、銀行や不動産、建築関係の企業がある。特にBanco de Oro、通称BDO銀行は、フィリピン全土に770以上の支店を持つ、フィリピン最大の商業銀行だ。また、SMは、香港のWatson’sや米Ace
HardwareとのJVでフィリピンでもWatson’sとAce Hardwareを展開している。

Puregoldは、スーパーを中心にフィリピン全土で200店舗以上を展開する上場企業だ。価格の安さや、サリサリ(フィリピンの伝統的小売の名称)等のホールセール機能としても大きな存在である。

RobinsonsもSM同様に中華系財閥のゴコンウェイ財閥傘下の小売で、Robinsonsのスーパーもまたルソン島を中心に至るところにある。更に、Robinsonsは、三菱商事とミニストップと共にJVでミニストップをフィリピンで展開している会社でもある。

そしてRustansだが、ここも富裕層をターゲットとしたデパートやスーパー、またShopwiseやWelcomeのブランドで、中間層向けスーパーも展開している。

その他、フィリピンの小売市場で忘れてはならないのがフィリピン全土に900店以上を展開するMercury Drugとアヤラ財閥率いるAyala Mallだ。Mercury Drugは、基本的にはドラッグストアだが、店舗の半分はコンビニ化しており、ドラッグ・スーパーストアの形態を取っている。フィリピンのドラッグストアでは圧倒的のナンバーワンだ。Ayala
Mallを運営するアヤラ財閥は、フィリピンでは唯一のスペイン系の大手財閥で、不動産や銀行、保険、通信、食品などの業界で幅広く事業を行っている。Ayala Mall以外では、マカティ地区にある完全に富裕層をターゲットとした超大型複合施設のGreenbeltが有名だ。世界中のブランドが店を構え、飲食店も多く出展している。

近年、これら近代小売のプレイヤーの成長は著しく、SMを筆頭に流通マージン以外に多額のリスティングフィー(配架料)や棚代などを求めるようになっており、残る8割のトラディッショナル・トレード(伝統小売)の市場を同時に攻略していくチャネル戦略がメーカーには求められる。8割の伝統小売が短期間で近代化することは考え難く、伝統小売の市場は当面続く。伝統小売の攻略は不得意とされる日本メーカーだが、この領域で勝てなければ、近代小売でいくら売れても利益は殆ど残らないだろう。今後の日本企業のチャネル戦略に期待したい。

(執筆日:2014年4月29日)

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