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【中国深読みコラム】第22回~中国の食糧事情~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2015年9月9日

日本はアメリカを上回る食糧廃棄率で年間1,800万トン、金額にして約11兆円もの食べ物を捨てています。その内の1,000万トンが家庭より出る食品廃棄物で、その処理費用に年間2兆円が使われています(旧科学技術庁「資源調査会第123回報告」)。それでは世界第2位の経済大国=中国の食糧事情はどうなっているのでしょうか?
 
6月2日付の上海紙「東方早報」に、余った食材を集め、生活困窮者に寄付する「フードバンク」が上海市浦東新区塘橋センターで始まった、と報じています。センターは社会福祉団体の緑洲公益が主宰、光明都市野菜園と提携し、流通できない生鮮食品、ケーキ、牛乳、米などを塘橋の団地内の倉庫に貯蔵。これらの食材は各団地から選ばれた住民に無料配布される、というものです。この記事の最後に、中国では貯蔵・輸送・加工の各段階で年間合計3,500万トンの食材が廃棄され、消費段階では2,000億元(約4兆円)分の食料が浪費されている、との報告がありました。

今回は世界最大の13億人の胃袋を賄う中国の食糧事情を考察してみたいと思います。
人口の半分が農村人口である中国では、三農(農村・農業・農民)問題の取り組みが、政府の最重要課題として毎年取り上げられており、国民生活の基礎である食料品価格の安定確保が常に重要な政策課題となっています。
中国は下記の様に主要穀物のいずれにおいても世界有数の生産国であり農業大国です。

主要穀物 1位 2位 3位 4位
中国 インド インドネシア ベトナム
小麦 中国 インド 米国 ロシア
トウモロコシ 米国 中国 ブラジル メキシコ
大豆 米国 ブラジル アルゼンチン 中国

しかしながら13億の人口と近年の所得水準の向上に伴い、国内需要が生産高を上回り2007年以降中国は食糧の輸入国となっています。
 
米、小麦、トウモロコシについては、輸出はできないまでも、ほぼ自給自足で賄っていますが、大豆に関しては輸入依存率が7割に達しており、アメリカとブラジルより大量に購入しています。日本も豆腐やサラダ油の原料として年間400万トンの大豆を輸入していますが、中国の輸入量は12倍の5,000万トンです。過去中国は日本向け大豆の輸出国でしたが、なぜ輸入国になったのでしょうか?
 
中華料理で使われる大量の食用油、マックやKFCなどのファーストフード店の急成長、ここ10年で大豆の需要量は5倍に増えました。一方、生産量は1.4倍しか増加しておりません。
この需給ギャップが最大要因ですが、あと二つ理由があります。一つが単位面積当たりの収穫量が低くアメリカの約半分です(日本も同様)。よって生産者価格が国際価格より高くなり作るより買った方が安い、という現象が生じています。
 
もう一つの理由は水不足です。大豆は米と同様大量の水を必要とします(1KGの生産に約2,300リットル必要)。工業化・都市化の進展を背景に、中国では水資源問題が深刻化しており改善には長期的対策が必要です。大豆の輸入拡大は食糧の安定供給と工業・生活用水の確保を両立させる選択の結果といえるでしょう。
 
国連食糧農業機関の報告では、毎年世界で飢餓による死亡が1,500万人も存在するとのことですが、アメリカ・中国・日本の世界三大経済大国で廃棄される膨大な食糧を改めて考え直したいものです。

以上

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