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ログイン2015年10月9日
環太平洋経済連携協定(TPP)が12ヶ国間で大筋合意に達しましたが、最後まで残った難航分野がオーストラリアと米国のバイオ医薬品のデータ保護期間とニュージーランドと米国の乳製品輸出拡大協議の2点でした。
日本ではあまり知られていませんが、中国は昨年既にオーストラリアとニュージーランドの2ヶ国とFTA(自由貿易協定)を締結しており、関税撤廃や削減が実施されています。
その結果、今回のTPP交渉を先取りする形で大量の牛乳や乳製品が両国から中国に入って来ています。今回は中国の牛乳と乳製品産業を取り上げます。
中国と香港のボーダー(出入国検査、中国語では「辺検」)ではスーツケースをいっぱいにした大勢の運び屋を見かけます。
彼らが中国に持ち帰る品物は、粉ミルク、おむつ、歯磨き粉、食器洗い洗剤などの家庭用生活必需品ですが、自分のために国境を越えて重い荷物を運んでいるわけではありません。
中国では増値税17%がかかりますが、香港の消費税はゼロですので、同じ製品であれば香港の方が安く買えます。
境界線の反対側に同じ業者(会社)が売り価格と買い価格を明示して、運び屋に手数料を支払うシステムになっています。
価格もさることながら、香港で売られている製品は本土より品質がいい、偽物がないと信じられており、その需要のトップに挙げられるのが乳幼児用粉ミルクなのです。
日本での爆買商品にも粉ミルクは必須アイテムで、必ずお土産品に入っています。
さて本題に戻ります。中国は牛乳・乳製品の生産大国・輸入大国であり、牛乳生産量は世界第3位、乳製品の輸入量は世界第1位です。
昨年(2014年)牛乳の生産量は前年比5.5%増の3,725 万トン、乳製品の輸入量は前年比13.9%増の181 万2,600 トン、輸入金額は前年比23.6%増の64 億1,300 万米ドル(約7,890億円)でした。
そのうち、粉ミルクの輸入量は前年比8.1%増の92 万3,400 トン、牛乳の輸入量は前年比68.9%増の32 万8,900 トンと急増しています。
中国国家統計局によりますと、14 年の時点で牛乳及び乳製品製造企業数は631 社、14 年の売上高は前年比18.1%増の3,297 億7,300 万元(約6兆2,700億円)、総利益は25.6%増の225 億3,200 万元に達していますが、そのうち赤字企業は約100 社あり市場競争による淘汰が進行中です。
消費者の生活水準の向上に伴い牛乳・乳製品への需要が増加、さらに健康志向の高まりを背景に、市場の方向性はロングライフ牛乳(常温で保存できる牛乳)から低温殺菌牛乳へと移り変わっています。
中国の日系スーパーで売られている牛乳、例えば朝日緑源の「唯品」や明治醇壹鮮牛乳は日本と同じ低温殺菌牛乳ですが、価格は23元(440円)前後と日本の3倍もする高級品です。
日本と同じ品質を維持するには乳牛・搾乳設備・製造工程管理などコストがかかります。
伊利乳業など中国の大手企業も豪州やニュージーランド企業と組んで中国で低温殺菌牛乳分野に進出しており15元前後の価格で売られています。
一方、最近の積極的な中国企業海外進出に押され、乳製品の海外生産拠点確保も進んでおり、伊利乳業は年間4万7,000トンを生産する粉ミルク工場を今年に入ってニュージーランドで稼働しています。
2008年に起きた食品安全問題(メラミン混入粉ミルク事件)の再発防止のためにも、更なる品質向上と低温殺菌牛乳の生産設備完備、生産技術の向上が期待されるところです。
以上
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