こんにちわ、ゲストさん

ログイン

人事労務は経営者の仕事:保全部隊は製造現場に放り込め!

中国ビジネスレポート 労務・人材
小島 庄司

小島 庄司

無料

2015年10月8日

コラム概要
保全部隊と言えば、社内でも名うての職人集団。なかなか組織的な業務展開に馴染みません。これで腕が超一流ならまだしも、自意識だけが一流だったりすると、自社の生産性を高める上でボトルネックになりかねない。今回はそんな保全部隊を鮮やかに変革させた事例です。
【1,583字】

——————–
このコラムで過去に『プロスポーツの監督に学ぶ』シリーズを書きました。ちょうど、サッカーの日本代表監督が決まった時期でしたが、その後の経緯は皆さんご存じの通り。1年持ちませんでした。次の監督は1年更新で、との報道を目にしましたが、1年で結果を出すのは至難の業ですよね……(この元原稿を書いたのは2015年2月です)。

これを読まれているのは中国駐在の方が多いと思いますが、皆さん赴任されて何年目ですか?
残り3年あればたいていの改革は定着まで可能です。残り2年あれば、人事制度の見直しや組織の新陳代謝など改革の実行が可能。残り1年だと、問題社員のケジメ付けやスリム化など改革前の地ならしまでは間に合います。私に声を掛けていただければ、残り任期から逆算して改革のスピードをつくってしまいますよ♪

さて、今回は製造業の保全(会社によっては工務と呼ぶ)部隊における現状打破の話。

製造設備の保守や修理、改善を通して、製造設備が原因で品質不良やライン停止を生じさせない、速やかに停止から復帰させる、さらには品質や安全性や生産性の向上に寄与するのが保全部隊。経験と知識と腕の蓄積が必要な、スペシャリスト集団です。

スペシャリスト集団だけに、経営者にとっては頭の痛い問題もあります。多くの場合、彼らは管理が苦手。計画的な人材育成も苦手。中国では予防保全の発想も苦手。いわば保全部隊内で徒弟制を組む火消し職人集団のようになっていることが少なくないはず。これについては私の仕事領域も影響を受けています。経験上、評価制度の構築、運用が最も難しいのが保全なのです(ちなみに二番目は財務会計。どちらもスペシャリストを自認しているという共通点が)。

これでは、他部署との連携は期待できない(製造は保全の直し方が悪いといい、保全は製造の使い方が悪いという水掛け論&責任のなすりつけ合い)。経営者への対応だって親分の気分次第。予防保全も絶望的。たまたま腕のいい親分がいれば修理は何とかなるけれど、自立できる後進を育てないので親分の切れ目が保全の切れ目。とにかく、経営の観点から見れば、管理ができず、計画も立たず、リスク低減や革新的挑戦もできない領域だったりすると、正直困るわけです(どの会社でも保全は全てこうだ、というわけではありません)。

●説得するよりも利害を一致させる

この問題に解決法はあるのか。実際に鮮やかな成果を上げている例を製薬業界で伺いました。製薬業界と言えば品質管理の厳しさでは最も厳しい部類。やはり私が挙げたような問題に悩む日系企業さんが、ある大手の国内系企業を視察して目の当たりにした手法です。

ここも以前は他社のように保全部門を置いていたそうです。しかしこれでは保全力が上がらず設備生産性も上がらない。ということで、生産部門の各ラインから最も設備に長けたベテラン作業者を選抜させて、保全担当として集中教育。彼らを生産ラインの所属とし、ライン長に管理を一任。同時にラインの生産目標に連動した賞与を設定しました。

これで、設備が停止しようと、不良を出そうと、稼働復帰が遅れようと、結果責任はすべてラインで負うことに。この結果、生産担当と保全担当の目標意識が完全に一致し、ライン内の保全レベルが劇的に上がったそうです。視察した日系企業の中国人幹部は「次元が違っていた」と驚嘆していました。

この方法が素敵なのは、説得も強要もなく、ただ仕組みを変えるだけで現場が勝手に努力、成長するように仕向けたことです。これは他でも応用できるはずです。

□部下を指導育成しない→指導育成した人から昇格する仕組みへ。
□部署間連携には誰も手を出さない→声を掛けて主導した人が評価や任免で優遇される仕組みへ
□遅刻や当日欠勤が減らない→皆勤者が明らかに得をする仕組みへ

百の説得より一の仕掛け。ぜひ工夫してみてください。

ではまた次回!

(1,754字)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ