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【中国深読みコラム】第29回~2016年最新の中国石油事情~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2016年4月5日

 最近レギュラーガソリンの価格が100円を切るガソリンスタンドがよく見かけられます。第20回(2015年7月)で中国のエネルギー資源産業を取り上げましたが、当時と較べ原油価格が半値以下になり世界の石油事情は激変しています。世界2位の石油消費大国である中国もその影響は甚大で、さまざまな方面に影響が出ています。ちなみに世界1位の消費国はアメリカの年間10億トン、2位が中国の5億トン、3位が日本の2億トンです。また、アメリカは世界一の石油産出国で、中国もサウジアラビア、ロシアに次ぐ世界4位の2億トンを産出していますが、日本は全量を輸入に頼っています。まずこの数字を頭に入れて以下の本文をお読み下さい。

 中国税関総署の今年1月13日発表によると、昨年12月の原油輸入量は前月比21.4%増の3,319万トン、前年同月比では9.3%増となり、2015年の年間原油輸入は3億3,550万トンとなっています。海外から年間2億トンを輸入している日本の2倍に迫る大変な数字です。更に今年の最新統計では、2016年2月の中国の原油輸入量は前年比19%増の3180万トンとなり昨年12月に次ぐ高い水準となりました。今年中国の石油輸入依存率は62%まで上昇する予想です。中国全体で2月の輸入額が前年度比14%も落ち込んでいる中での異常に突出した状態となっており、今回はその背景を深読みしたいと思います。

 40年前になりますが筆者の20代の職場は天津郊外の南古林という場所にある天津石油化工廠でした。勝利油田からパイプラインが引かれ、石油コンビナート建設にはドイツのクルップ社、日本から日揮、東レ、帝人などが参加していました。その勝利油田が閉鎖されるというニュースが2月17日のロイター電として飛び込んで来たので驚きました。前日の2月16日発行の中国石油化工新聞によると、「国際原油相場の低迷がこれら老朽化した油田の生産に響いている」ためだと書かれ、「原油相場下落を受けて2015年に92億元(約1,650億円)、2016年1月に29億元(約520億円)の損失を被った」との内容です。勝利油田は2014年まで毎年黒字を計上していましたが、2015年は1974年の創業以来初の赤字に転落したとのことです。

 その後3月8日付北京青年報でも、「大慶油田で150万トン減産し、遼河油田でも減産する」と伝えられました。理由は原油価格の低迷で原油生産はコスト割れしているとされています。では中国の石油生産の採算は一体いくらなのでしょうか?3月16日付米国紙ブルームバーグによりますと、中国国内の油田の採算ラインは1バレル=約50ドルとされており、業界関係者は「このまま原油価格が長期的に1バレル=30ドル前後で低迷する場合、生産が停止される中国の油田はさらに増えるだろう」と予測しています。

 更に鉄鋼産業と並ぶ石油産業の過剰設備問題があります。全国人民代表大会会期中の3月8日、中国石油化工集団傘下の中国石化銷售(販売)北京石油分公司の陳立国総経理は、「国内の製油能力が年間2億トン過剰になっているとして製油工場の新設を抑制すべきだと主張。次期5カ年計画(2016年~2020年)内で同産業の位置づけを見直し厳しく製油能力を抑制していく必要があると訴えた。」と同日の北京晩報は報じています。2015年全国の製油能力は7億7,400万トンで実際の製油量に対して2億トンが過剰になっているという内容で、原油価格の低迷で製油コストも低くなるため、今後国内で製油工場向けの投資が増えていけば更に過剰能力を拡大しかねないと懸念されている、とのことです。

 石油の価格がこのまま低迷すると国内の投資が減りGDPに影響しますが、海外より買った方がコストの安い調達が可能であれば、当分は輸入量が漸増していくと予想されます。同時に海外で石油を調達する油田権益の投資も活発で、3月21日付中国証券報によると、石油探査や油田開発を手掛ける洲際油気(海南省海口市)は第三者割当増資で82億元(約1,400億円)を調達しカナダの油田開発企業バンカーズ・ペトロリアムの株式100%を取得、同社が保有するロシアやアルバニアの油田資産を買収、また3月24日付上海証券報には、上海新奥集団がオーストラリアの石油・天然ガス開発大手サントスの株式11.72%を49億600万元(約860億円)で譲り受け、浙江省舟山市にLNGの受け入れ・貯蔵・気化を行う施設を建設して原料の安定調達を図る、との記事が掲載されるなど、ここに来て資源権益獲得の動きが活発化しています。
 
 今年1月19日、習近平国家主席は中東歴訪最初の訪問国としてサウジアラビアを選び、首都リヤドでサルマン国王と会談しました。サウジアラビアは中国にとって最大の原油輸入先です。サウジアラビアは中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設メンバーでもあり、今回の首脳会談でサルマン国王は中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を支持すると表明しました。中国の2番目の原油輸入先はロシアでプーチン大統領との首脳会談は頻繁に行われています。これらの動きを冷徹に見ると、中国がなぜ南シナ海にこだわるのかも垣間見えるような気がします。

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