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リスクに対する概念を変えろ

中国ビジネスレポート 投資環境
森辺 一樹

森辺 一樹

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2011年11月1日

新興国市場でビジネスをする際に最も重要なのはリスクに対する概念を変えることだ。日本のリスクに対する概念をそのまま新興国に持ち込めば、ビジネスは絶対に成功しない。日本では当然“避けるべきリスク”でも、新興国では取らざるを得ないケースが多々ある。また、そもそも、それをリスクと判断していては、ビジネスが成り立たないケースもある。新興国でビジネスをするということは、そのこと自体が既にリスクであるし、新興国ではやること成すこと全てにリスクが伴うと言っても過言ではない。要は、リスクに対する基準を日本本社に合わせていたら新興国でのビジネスなどできないということだ。

しかし、これを本当の意味で理解できている日本企業は少なく感じる。2000年代前半、欧米企業の内販(国内販売)の実態を知る私は、多くの日本企業に中国、アジアの内販を提案していた。しかし、大半の企業からは、「理屈は非常に理解できるが、まだまだリスクが」との回答が返ってきた。当時、内販はリスクが高いと見なされ、限定的に行なわれていたのだ。結果、アジア市場で日本企業は、欧米企業に10年出遅れた。その間、韓国、台湾企業の追い上げに合い、今では格下であったはずの彼らを競合視しなければならないどころか、負けるケースも珍しくない。

欧米企業は新興国で日本企業より遥か前からリスクを取り続けてきている。そもそも”リスクの語源は欧州であり、また、英語には“high risk, high return”という言葉があるように、アメリカ的経営を行なう企業には“リスクを取る”というDNAが企業の中に確りと存在している。だから彼らは豊かになってもリスクを取ることを辞めない。この時点で日本企業とは大きな差が存在する。
日本企業が最もライバル視すべき韓国、台湾、そして新興各国の現地企業も凄まじい成長意欲の中、リスクを取って市場席巻に挑んでいるし、日本企業が感じるリスクなど、彼らはリスクと認識していないようにも見受けられる。

暫く前に、「チャイナ・リスク」や「カントリー・リスク」などという言葉が流行ったが、今はどうだろうか?完全に死語である。今では逆にそのような言葉を口にする経営自体がリスクだ。圧倒的な経済成長がリスクを遥かに上回っているのだ。これは別に特別なことではなく、新興国とは、そもそもこういうものなのだ。

日本企業もかつてはリスクを取っていたはずだ。戦後、リスクを取り続けた結果が今の豊な日本を創ったのだから。20年もの長い年月に渡り景気低迷が続き、我々は今、崖っ淵に立たされている。楽観的に将来を考えるのはもう限界だろう。そろそろ好景気をただ待つのを止め、リスクを取って掴みに行くことが必要だと強く感じる。

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