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その国を進出先に選んだ理由

中国ビジネスレポート 投資環境
森辺 一樹

森辺 一樹

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2012年2月6日

 海外進出と言うと多くの企業が中国を選ぶ。中でも圧倒的なのが上海だ。しかし、なぜ進出先に中国を選んだのか?なぜ上海を選んだのか?そう尋ねて明確な回答が返ってくることは稀である。中国を選んだ理由の多くは、著しい経済成長や13億人を超える人口を挙げる。上海に関しては、中国で最も繁栄している都市だから。富裕層が多いから。中国と言えば上海だ。日系企業も皆上海だから等々いささか進出先の選定理由が不明確に聞こえる。

 確かに中国は近年10%程度の経済成長を維持し、総人口も13億人を超えている。上海の常住人口は2,300万人を超え、東京都の1,300万人を大きく上回る。しかし、この2,300万人の中に、本当に自社のターゲットとなる層がどれ位いるのか、またどこに居るのかを理解している企業は少ない。13億の総人口に関しても、人口が中国を進出先に選んだ理由だとするならば、その巨大な市場全体を中長期でどう取るのかが重要だ。中国に進出していながら一部の地域や層だけを狙うのでは13億人の総人口など進出理由には何の関係もない。

 一方で、アジアという地域に目を向けた時、私はシンガポールという国にとても注目をしている。2010年度、シンガポールは14%以上の経済成長を達成した。中国を遥かに超えた近代国家であるにも関わらず、この経済成長率は驚異的だ。人口に関しては、2010年、500万人を突破し、1990年比で1.6倍も増加している。また注目すべきは、シンガポールの一人当たりGDPが約5万5,000ドルで2009年には既に日本を超えていることである。この数字は中国の1万ドルの5倍以上あるのだ。言い換えれば、500万人の豊かな国民が極限られたエリアに集中しているのだ。中国の様に広大なエリアに点在し、それを見分けることもままならない市場より遥かに攻め易い。また、金融インフラも確りと整備されている。税金に関しても法人税が17%と中国やその他の国と比較しても断然メリットが高い。

 ではビジネスの拡大可能性はどうだろうか?所詮500万人強の人口だとビジネスの広がりは限定的になるのではないかと想像しがちだ。しかし、シンガポールは、東南アジアの中で最も近代的な都市として、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム等のASEAN諸国の富裕層や中間層に対してのトレンド発信基地として強い影響力を持つ。この地で成功を納めれば、ASEAN全体での成功の足がかりになるのだ。中国も省が違えば国が違うと言って過言ではない程、国民性や地域性があり、距離もあるのだから、シンガポールを拠点にASEANを狙うのと何ら変わらないのだ。

 日本企業はアジアに進出する際、進出する国を選んだ理由をより明確にしなければならないと感じる。この最初の一歩が不明確な企業にその国での成功はあり得ない。

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