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ログイン2012年12月25日
予想利益とは、契約を履行した後で実現し取得できる利益をいう。契約当事者の主な目的は、取引を通じて予想利益を追求することにあり、もしも当事者の一方が違約した場合、相手方にもたらす損失には、実際の損失が含まれるだけでなく、予想利益の損失も含まれると考えられる。
2012年7月1日から施行された「売買契約紛争案件の審理に適用する法律に関する最高人民法院による解釈」[1](以下「解釈」という)の中では、契約の違約における予想利益の認定および計算ルールが定められているが、主には、予見可能性ルール、損失拡大防止ルール、過失相殺のルールおよび損益相殺のルールが含まれる。
本文では、「契約法」および「解釈」の関係規定と併せて、前述のルールについて簡潔に分析し紹介する。
1.予見可能性ルール
「契約法」第113条の規定によると、損失賠償額は、契約違反当事者の一方が契約締結時に予見したまたは予見すべきであった契約違反によりもたらされるであろう損失を上回ってはならないとされている。つまり、違約当事者は、自己が契約締結時に予見できた損失についてのみ賠償責任を負うものであり、予見できなかった損失については賠償責任は負わないというものである。
このルールには、4つの要素が含まれる。
1)予見主体: 損失を予見する主体は違約当事者であって、損失を被った当事者ではない。
2)予見時期: 違約当事者が契約を締結した時点であり、違約時ではない。
司法の実践においては、違約当事者の契約締結時における予見状態を過去に遡って確認するのが難しいことから、裁判官は、違約時の予見状態を基準とすることもあると思われる。理論の次元においては、違約時を予見時期としたほうが、予想利益と実際の損失を一層一致させることができるとの主張もある。
3)予見内容: 違約によってもたらされるであろう損失。
これについては、違約当事者が契約締結時に、違約がもたらすであろう損失の分類を予見できさえすれば、実際に生じた損失額の大きさを問わずして、違約当事者はいずれもこの分類の損失について賠償責任を負わなければならないという見方もある。
また、違約当事者は損失の分類だけでなく、おおまかな損失金額についても予見した場合、予見した損失金額を過度に超えた部分については、違約当事者は賠償責任を負う必要はないという別の見方もある。
4)予見基準: 予見できること、または予見すべきであること。
司法実践においても、通常は、一人の一般的な人間の基準で違約当事者が予見できるかどうかを判断するが、損害を被った当事者が開示する情報(すでに違約当事者に契約目的、考えられる違約損失を告知しているかどうか)、違約当事者の経験(契約対象物に対する把握情況、契約目的に対する認識)、契約対価(通常、契約対価が高ければ高いほど、負担する予見責任は大きくなる)などについても総合的に勘案することになる。
2.損失拡大防止ルール
「契約法」第119条の規定によれば、適切な措置を講じなかったために損失を拡大させてしまった場合、拡大した損失について賠償を求めてはならないとされている。
つまり、損失を被った当事者は、もともと適切な措置を講じていれば回避できた損失については、賠償を獲得してはならないのである。
理論上の認識として、損失を被った当事者が適切な措置を講じなかったために損失を拡大させてしまった場合、その部分の損失については、損失を被った当事者自身の不作為によりもたらされたものであって、違約当事者の違約行為とは因果関係が存在せず、違約当事者はこの部分の損失については責任を負う必要はないというものである。
損失拡大防止ルールの適用条件は以下の通りである。
1)損失を被った当事者は、客観上は、損失の拡大を防止する適切な措置を講じることができ、つまり、損失を被った当事者には、適切な措置を講じるための能力、可能性がある。
2)損失を被った当事者が適切な措置を講じなかったために損失の拡大を招いてしまった。
これには2通りの状況が考えられ、一つは損失を被った当事者が適切な措置を講じられるのに如何なる措置も講じなかったというケース。もう一つは、損失を被った当事者が措置は講じたがそれが適切ではなかったというケースである。
前者のケースに対しては、比較的容易に認定できるが、後者のケースについては、損失を被った当事者が講じた措置が適切でなかったかどうかをどのように判断するのかという問題が存在する。
実践においては、損失を被った当事者が措置を講じた際の主観的心理、損失拡大防止措置を講じたタイミング、方法および支出した費用などから判断することができる。
ただし、損失を被った当事者が適切な措置を講じさえすれば、かりに損失拡大防止の効果はなかったとしても、違約当事者は、損失を被った当事者がもっと有効な措置を選択して損失の拡大を防止できることを理由に抗弁することはできないことに注意したい。
損失を被った当事者が、適切な措置を講じたために発生した費用について、違約当事者は、損失拡大防止の効果がなかったことを理由に支払いを拒否してもならない。
3.過失相殺のルール
「解釈」第30条の規定によると、売買契約の当事者の一方が違約したことで相手方に損失をもたらした場合で、相手方もその損失の発生について過失があったとき、違約当事者は、係る損失賠償額の控除を主張することができる。
つまり、損失を被った当事者は、違約による損失の発生またはその拡大について、自己もその過失がある場合、違約当事者の賠償責任を軽減することができる。
過失相殺ルールの適用条件として、損失を被った当事者に過失があり、その過失には故意および過失という2通りの形態が含まれていることと、損失を被った当事者の過失行為が損失の発生または拡大を招いていることである。
つまり、損失を被った当事者の過失行為と違約当事者の違約行為が共に作動して損害結果の発生をもたらした場合、損害を被った当事者の過失の度合いに応じて、違約当事者の賠償責任を軽減することができる。
4.損益相殺のルール
「解釈」第31条の規定によると、売買契約の当事者の一方が、相手方の違約により利益を獲得した場合、違約当事者は、損失賠償額の中からこの部分の利益の控除を主張することができる。
つまり、損失を被った当事者が損失発生と同一の原因のために利益を獲得した場合、損失賠償額からは自己が獲得した利益が控除されることになる。
損益相殺ルールを適用する条件として、損失を被った当事者が違約行為により損失を被っただけでなく、一定の利益(たとえば、対象物の残余価値)も獲得していることと、損失を被った当事者の損失と利益は、同一の違約行為によって生じたものであり、利益の獲得と違約行為との間に因果関係が存在していることである。
なお、予想利益の認定と計算は、主には効力が生じている契約を履行する段階での違約責任により生じた賠償責任に適用される。無効契約、契約締結段階にある契約、成立したが効力が生じていない段階での契約などについては、通常、予想利益は適用されない。
また、契約当事者が契約中で予想利益の金額と計算方法をすでに約定している場合には、通常、上記の認定および計算ルールではなく、その約定が優先して適用されることになる。
(里兆法律事務所が2012年8月29日付で作成)
[1] http://www.court.gov.cn/qwfb/sfjs/201206/t20120606_177344.htm
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