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ログイン2013年3月29日
近年、中国は人民元の国際化の推進に力を入れ、すでにその効果が見え始めている。クロスボーダー人民元貿易から始まり、国境を行き来する人民元業務は、すでに「その他の経常項目、海外直接投資、海外貸付業務」などの業務分野をカバーし、且つ「人民元業務清算銀行」、「人民元業務代理銀行」、「国外機関の人民元銀行決済口座」(「人民元NRA口座」という)という3通りの方式を主体とする人民元資金決済手段を形成している。本文は、人民元国際化をつかさどる政府主管部門である中国人民銀行が先頃「国外機関の人民元銀行決済口座の開設と使用の関係事項に関する通知」[1](銀発[2012]183号)を発布したことをきっかけに、「国外機関の人民元銀行決済口座管理弁法」[2](銀発[2010]249号)、「クロスボーダー人民元業務関係事項を明確にすることについての通知」[3](銀発[2011]145号)などの関係する法律文書に基づき、実務経験と併せ、Q&A形式により、ご参考までに人民元NRA口座の開設および使用について簡潔に振り返り、まとめる。
Q1:人民元NRA口座とは何か?
A:人民元NRA口座とは、中国国外(香港、マカオ、台湾地域を含む)にて適法に登録し、成立した機関(「国外機関」という)が法に照らしてクロスボーダー人民元業務を取り扱い、人民元資金の決済上の必要から、中国国内の中国資本および外資銀行(「銀行」という)に開設を申請するクロスボーダー銀行口座[4]をいう。
人民元NRA口座は、国内機関が開設する人民元銀行決済口座とは異なり、オフショア口座としての機能をもち、口座の前に「NRA」(Non-Resident Account)と特別に表示される。
Q2:なぜ人民元NRA口座を開設する必要があるのか?
A:人民元口座は、国外機関がクロスボーダー人民元業務を取扱う際に必要な前提である。「人民元業務清算銀行」や「人民元業務代理銀行」などの方式と比べると、国外機関が人民元NRA口座を開設することのハードルは低く、取扱も簡単であり、しかもひとたび開設すると、原則として、国外機関はその存続、資金のやりとりなどについて自主的に管理することができ、中国の法律がこれを拘束することも少ないため、国外機関の業務経営および資金管理上のニーズに一層対応できる。
国外機関が開設する人民元NRA口座は、本質上、中国国内企業との業務提携に役立つものである。人民元を媒介とする業務提携は、中国国内の企業に多くの利便を提供し、国外機関と中国国内企業との提携の機会を増やし、互いに利益をもたらし合うよう促進するものである。これらの「利便」とは具体的には主に以下のものが挙げられる。
1. 中国国内企業のコストを節約する。一般的な企業にとっては、人民元を貿易決済の通貨とすれば、換金の必要がなく、外貨換金、決済およびオプション取引による利益確保などの方面でのコストを節約することができる。多国籍会社グループにとっては、人民元決済の使用は、企業にとってグループ資金管理方式が一つ多くなることになり、グループ資金運営効率を高めることができる。
2. 中国国内企業の融資ルートを拡大する。クロスボーダー貿易人民元決済に関する貿易融資(ユーザンスクレジット、リファイナンス、協議支払、前受け延払いを含むがこれらに限定しない)は、現行の外債管理対象とはならず、且つ支払い期日の延期がしやすく、中国国内企業に新たな融資ルートを提供している。
3. 手続を簡素化し、効率を引き上げる。人民元を使用して決済する場合、輸出入外貨照合抹消手続を行う必要がなく、税関に照合抹消用紙を提出する必要がなく、異地での外貨による支払いの際に届出を行う必要がない。輸出時の外貨受取りにおいて調査を受ける必要はなく、税金払戻と代金の受領を同時に行い、申請通貨と払戻税の通貨が一致しており、為替レートの換算による損失を回避し、従来のオペレーションの段階を減らすことができる。決済資金は中国国内で清算し、収支のルートが明白であり、時差の影響を受けることなく、資金運営の効率を引き上げ、決算のスピードアップが可能である。
Q3:人民元NRA口座の開設条件と原則とは何か?
A:人民元NRA口座の開設条件と原則の概要は以下の通りである。
1. 中国国外に適法に登録設立した国外機関であれば、同社が中国国内で実施しまたは実施しようとしている経営活動が中国の関係法規に適合しまたは政府主管部門の許可を獲得した場合、いずれも銀行に申請し、人民元NRA口座を開設し、人民元資金の決済に使用することができる。
2. 国外機関は国内に基本預金口座を一つしか開設できず、この口座の開設にあたっては、事前に中国人民銀行の認可を受けなければならない。基本預金口座を開設した後、国外機関はクロスボーダー人民元業務手続を行う必要に基づき、一般預金口座と専用預金口座[5]を開設することができる。
3. 人民元NRA口座の預金者、口座および責任者の名称は、中国語または英語とすることができる。国外機関が国外で適法に登録設立したことの証明文書、責任者の有効な本人証明書上に中国語の名称が記載されている場合は、中国語を採用し、中国語以外または英語以外の名称が記載されている場合は、翻訳後の中国語を使用しなければならない。
Q4:人民元NRA口座は、どのように開設するか?
A: 基本預金口座を例に挙げると[6]、人民元NRA口座を開設する際の基本的な流れは以下の通りである。
Q5:人民元NRA口座の使用条件と原則は何か?
A:
1. 国外機関が開設する基本預金口座、一般預金口座、専用預金口座は、現金業務に使用してはならない。基本預金口座および専用預金口座にてどうしても現金業務を取扱う必要がある場合には、中国人民銀行の許可を受けなければならない。
2. 原則として、人民元NRA口座内の資金は、外貨に換えて使用してはならない。ただし、国外機関が係る手続を履行した後は、口座内の資金を外貨転したうえで送金することができる。
3. 国内機関と人民元NRA口座間の資金のやりとりは、クロスボーダー取引として管理を実施し、国内の受渡銀行は、人民元クロスボーダー取引管理の関係規定に基づきこれを取扱うことになる。
4. 人民元NRA口座の資金の国外への送金、および人民元NRA口座間の送金は、原則として、銀行は国外機関の指示に基づき直接に取扱うことができる。
5. 国外機関は、人民元NRA口座の資金を国内での質権設定対象として使用し、国内での融資手続を行うことができる。
Q6:人民元NRA口座をどのように使用するか?
A: 人民元NRA口座は、以下の方式によって資金のやり取りを行うことができる。
1. 以下の収入は、人民元NRA口座に送金することができる。(1)クロスボーダー貨物貿易、サービス貿易、収益および経常移転などの経常項目の人民元決済収入。(2)政策にて明確に認められているまたは許可を受けた資本項目の人民元収入(例えば、外商直接投資プロジェクト)。(3)クロスボーダー貿易人民元融資資金。(4)同名またはその他の人民元NRA口座から獲得した収入。(5)中国人民銀行が定めるその他の収入。
2. 以下の支出は、人民元NRA口座から送金することができる。(1)クロスボーダー貨物貿易、サービス貿易、収益および経常移転などの経常項目の人民元決済支出。(2)政策にて明確に認められているまたは許可を受けた資本項目の人民元支出(例えば、外商直接投資プロジェクト、国内銀行が国外に貸し付けた資金の使用)。(3)クロスボーダー貿易人民元融資利息および融資金の返還。(4)中国人民銀行が定めるその他の支出項目。
3. 人民元NRA口座に資金の収支が発生した場合、国外機関は人民元クロスボーダー業務管理に関する規定に基づき、銀行が当該資金の収支の真実性および適法性を確認し審査するうえで協力しなければならない。
Q7:人民元NRA口座をどのように管理するか?
A:人民元NRA口座は、以下の方式に基づき管理する。
1. 本口座は普通預金口座であり、口座預金は、中国人民銀行が公示する普通預金金利に基づき利息計算する。現時点では、定期預金に振り替えたりまたはそれをもって財テク商品(構造的預金など)の手続に使用することによって、普通預金の利息よりも高い収益を獲得することは認められない。
2. 本口座の資金残高は、現行の外債管理の対象とはならない。
3. 次のいずれかに該当する場合、国外機関は遅滞なく当該口座の取消手続を行わなければならない。
1) 国外機関が口座開設時に依拠する法規または政府主管部門の許可文書で有効期間が設定され、且つ有効期間が満了したとき。
2) 国外機関が国内で係る活動を継続することを中国政府主管部門が禁止したとき。
3) 国外機関の所在国または所在地域の法律の規定に基づき、国外機関の主体資格が消滅したとき。
4. 本口座の開設取消情報、基本情報の変更、残高情報および関係する国内、国外主体間の資金送金情報、業務情報などはいずれも人民元クロスボーダー決済情報管理システムに入力しなければならず、システム情報は中国人民銀行と国家外貨管理局が共有する。
5. 本口座を通じて、国外、国内間で発生する人民元資金のやりとりおよびこれにより生じる口座残高の変更は、いずれも関係規定に基づき国際収支統計申告手続を行わなければならない。
6. 銀行は、すでに開設した人民元NRA口座について年度検査制度を実施し、主には本口座の適法性を検査し、口座開設資料の真実性を確認する。
人民元NRA口座はケース毎の試行から現在の立法と口座開設規模にてひととおりの雛形が形成されるまで約4年の歳月を要している。「人民元の国際化」が日増しに高まり、そして立法が絶えず整備されるに伴い、本口座を開設し、使用することは、日常化していくものと思われる。多国籍会社グループおよびクロスボーダー業務を取扱う国内企業にとっては、人民元NRA口座は、その資金の受け入れおよび運用に新たな選択肢が用意されることを意味し、本件については注意を払うのがよいであろう。
(2012年11月 里兆法律事務所作成)
[1]本法律文書は、中国人民銀行が2012年7月26日に発布したものであり、全文は北大法律信息網などの法規検索サイトで検索できるが、現在のところ、中国人民銀行のオフィシャルサイトではまだ正式に収録されていない。
[4]以下の口座は、自己の管理規範があり、通常いわゆる「人民元NRA口座」には該当しないため、本文では説明を割愛する。(1)国外中央銀行(通貨当局)が通貨の互換オペレーションなどの必要から国内銀行に開設した人民元銀行決済口座。(2)国外銀行が清算または決済サービスを提供する必要から、国内銀行に開設した人民元同業往来口座。(3)国外適格機関投資家が国内で証券投資を取扱うために開設した人民元特別口座。(4)国外中央銀行(通貨当局)、香港・マカオ地区の人民元業務清算銀行およびクロスボーダー貿易人民元決済の国外参加銀行などの機関が、銀行間の債券市場の人民元資金を投資するために開設が必要な口座。
[5]基本預金口座、一般預金口座および専用預金口座は、中国人民銀行が人民元銀行決済口座の資金用途に基づき行う口座分類であり、具体的には「人民元銀行決済口座管理弁法」に照らして実施される。
[6]国外機関が一般預金口座および専用預金口座を開設する場合、基本預金口座を開設した際に獲得した口座開設許可証を提出すれば、通常、第3および第4のステップを改めて踏む必要はない。
[7]たとえば、クロスボーダー貿易活動を行う場合、「クロスボーダー貿易人民元決済試行管理弁法」を法規上の根拠とすることができる。外商直接投資業務を行う場合は、「クロスボーダー人民元直接投資の関係事項に関する商務部による通知」および「外商直接投資人民元決済業務管理弁法」を法規上の根拠とすることができる。実践においては、銀行はこれらの法規についてはいずれも詳しく、国外機関が口座開設の申請を行う場合、必ずしもこれらの法規の提供を必要とはしない。
[8]特別機関コードは、国外機関が人民元NRA口座を開設する際の前提条件ではないが、当該口座の資金の国際収支申告など手続を行う際に使用することになるため、原則として、国外機関は外貨管理部門から特別機関コードを早急に獲得しておく必要がある。
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