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改正後の「高齢者権益保障法」は従業員に対し「実家に頻繁に帰省すること」を求めているが、企業は別途休暇を与える必要があるか

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2013年11月11日

2013年7月1日から、改正後の「中華人民共和国高齢者権益保障法」(以下、「高齢者権益保障法」という)が施行された。「高齢者権益保障法」第18条によれば、「高齢者と別居している家族メンバーは、高齢者を頻繁に訪問、または見舞わなければならず(即ち、現在社会世論で言われる「実家に頻繁に帰省すること」)」、使用者は国の関連規定に基づき扶養者の帰省休暇の権利を保障しなければならないと規定している。これについて、筆者は以下の通りに考えている。

1. 「高齢者権益保障法」は労働法律、法規以外の法律文書として、労働法律関係における使用者と労働者の間に相応の法的義務を設けており、このような状況はあまり見られない。

2. 「高齢者権益保障法」の上記法律条項は使用者に労働者の「実家に頻繁に帰省すること」を保障する法的義務を設けはしたが、同時に踏み込んで具体的な条件を
設けることはしておらず、単に、漠然と「国の関連規定」に照らして実施するとのみ説明している。

「高齢者権益保障法」以前にも、中国には「実家に頻繁に帰省すること」に関する規定があり、主なものとして国務院が1981年3月14日に公布施行した「従業員の帰省待遇に関する国務院の規定」(以下、「国務院帰省規定」という)および各地で当該規定に基づき発布実施された地方政策(例えば、上海市人民政府が1981年4月22日に発布実施した「上海市従業員帰省休暇待遇規定に関する実施細則」)がある。ただし、筆者は「国務院帰省規定」は外商投資企業に適用されないと考えている。その理由は以下の通りである。

1. 「国務院帰省規定」が定める帰省休暇の適用範囲は国家機関、人民団体、国有企業・事業機関であり、外商投資企業は含まれていない。つまり、たとえ外商投資企業の従業員に「実家に頻繁に帰省すること」の必要があったとしても、企業には「国務院帰省規定」に基づいて帰省休暇を与えなければならない義務はない。

2. 旧労働部が発布した「外商投資企業労働管理規定」第24条では、外商投資企業の従業員も帰省休暇などの法定休暇を享受すると規定したことがある。ただし、外商投資企業の従業員の帰省休暇の享受に関する唯一の法律根拠である前述の法律文書は、既に2007年11月9日に旧労働社会保障部から明文をもって廃止されている。

外商投資企業が「国務院帰省規定」を実施する直接の法律根拠はないにも関わらず、実際には、一部の地方(例えば、上海、江蘇など)の労働行政部門は、外商投資企業も「国務院帰省規定」に定められた条件および基準を参照して、従業員に帰省休暇を与えるべきと考える傾向がある。しかし、筆者の知るところ、実際には多くの外商投資企業が「国務院帰省規定」を実施しておらず、またこれについて労働行政部門は相応の管理措置を講じていない。筆者は、主な原因は以下の通りであると理解している。

1. 現在、交通事情は改善されており、「国務院帰省規定」発布時に定めた「公休日に団欒ができない」という前提条件が、多くの場合既に成り立たなくなること。

2. 「従業員年次有給休暇条例」などの法規、規則の発布により、従業員の法定休暇は「国務院帰省規定」発布時と比べ明らかに増加しており、大多数の従業員は年次有給休暇、法定祝日などを利用して「実家に頻繁に帰省すること」ができるため、全体として専用の帰省休暇の必要は切迫していない。また、実際には、少なからぬ企業が法定の年次有給休暇以外にも、会社の福利としての有給休暇を定めている。

以上をまとめると、「高齢者権益保障法」の上記条項は、使用者に対し従業員の法に則った「実家に頻繁に帰省すること」を保障する義務を定めているが、具体的にどのように実施するかについては、付帯規定の発布により確定する必要がある。それまでの間、外商投資企業について言えば、従業員から法に則った「実家に頻繁に帰省すること」の要求があった場合、使用者は依然として当年度に使用可能な年次有給休暇、法定祝日などを利用して行うようにと告知することが可能である。

(里兆法律事務所が2013年7月26日付で作成)

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