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担保物権実現手順は債権回収を容易にするか

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2014年6月3日

2013年から、新たに改正された中国「民事訴訟法」が実施されている。その中、第十五章「特別手順」において新規追加された第196条、197条の「担保物権実現事件」に関する規定は、条件を満たす申立人が、その担保物権を実現するため、裁判所へ担保財産の競売、換金を申し立てることを認めている(以下「担保物権実現手順」という)。訴訟を経る必要がないため、多くの時間、経済的コストを節約し、裁判所が下す裁定を実施の根拠とすることができるため、理論上では、担保物権実現手順は債権回収を大幅に簡素化することができるはずであるが、実際の状況は本当にそうなのであろうか。

担保物権実現手順に関する法律規定は、現時点では、「民事訴訟法」における二つの規定に限られている。ご参考まで、現在の実務における一般的な取扱方法に照らし、当所は担保物権実現手順における各主要段階およびその注意点を以下の通り簡潔に整理した。

段階1:申立て –   担保物権実現手順は申立人が裁判所へ申し立てることで始まり、受理裁判所は担保財産所在地の裁判所または担保物権登記地の裁判所となる。
注意点 1.   「民事訴訟法」第196条の規定によれば、申立人となれるのは、①担保物権者、②その他の担保物権実現を請求できる者である。いずれの者が「その他の担保物権実現を請求できる者」に該当するかについては、現在の実務において統一的な基準はない。
2.   浙江省高級人民法院が公布した「担保物権実現事件の審理に関する意見」によれば、一定の条件を満たす担保人(抵当権設定者、質権設定者、財産が留置された債務者など)が、浙江地区において担保物権実現を請求できる者に該当すると規定している。その他の多くの地区では、現時点で類似する明確な規定は存在しない。
段階2:審査  –   裁判所は、申立てを受けて立件した後、被申立人(通常は担保者または担保財産の実際の占有者)に対し受理通知書を発行する。
–   裁判所が審査過程において必要と判断した場合、当事者への質問または聞き取りを行うことができる。裁判所が事件事実に紛争があることを把握した場合、当該手順の終結を裁定した上、申立人に対し別途提訴するよう告知する。
注意点 1.   担保物権実現手順は特別手順に該当し、特別手順は紛争の解決には関与しない。「民事訴訟法」第179条によれば、特別手順に照らして事件を審理する過程で、民事所有権の帰属紛争に該当することが判明した場合は、特別手順の終結を裁定した上、利害関係者に別途提訴が可能であることを告知しなければならないと規定されている。
2.   裁判所の担保物権実現事件に対する審査は形式的審査であり、形式的審査は実質問題の処理を行わず、形式において担保物権実現の条件が成立するかを審査するだけであり、審査において事件に民事権益紛争が存在した場合、裁判所は実質的審査を行わず、直接担保物権実現手順を終結した上、申立人に別途提訴するよう告知する。
段階3:異議   –   被申立人が通知書を受け取った後、またはその他の利害関係者が被担保財産の担保物権実現手順開始を知った後、裁判所に対し異議を申し立て、証拠を提出し証明することができる。裁判所が審査した後、異議内容に確かに紛争があると判断した場合、担保物権実現の申立てを棄却する裁決を行った上、申立人に別途提訴するよう告知する。
注意点  1.   裁判所が申立人またはその他の利害関係者からの異議を受けた後、異議に対し審査を行う。異議内容が確かに証拠により証明できる場合、事件は民事権益紛争にかかわることを意味し、担保物権実現手順が処理可能な範囲に該当せず、裁判所はこれに基づき担保物権実現の申立てを棄却する。
2.   担保物権実現手順が被申立人およびその他の利害関係者に対し十分な救済手段を与えられる。異議権の濫用により担保物権実現手順が無効となることを回避するために、裁判所は証拠を提出して証明することができない、漠然とした異議は、通常では受理しない。
段階4:裁定  –   裁判所は、審査を経て、担保物権実現条件が成立しており、事件が民事権益紛争にかかわらないことが確定した場合、担保財産の競売、換金を認める裁定を下す。
–   裁判所は、審査過程において同一の担保物に複数の担保物権者の弁済順位を確認した場合、裁定において競売、換金後の弁済順位を併せて確定する。
注意点  1.   同一の担保財産上に複数の担保物権が存在する場合、各担保物権の権利確認および優先順位が複雑であるため、現行の法令および司法解釈はこれについていずれも明確な規定を設けていない。関連規定の欠落は、各地の裁判所の本問題に関する議論を大きなものにしており、非訟手続において類似事件を処理する際、認定基準がそれぞれ異なることから、裁判所は審査結果に基づき裁定を下す可能性もあり、また、民事権益紛争が存在すると判断して直接手順を終結する可能性もある。
2.   本問題については、最高人民法院の副院長が昨今の発言において個人的な意見を述べており(ただし、司法解釈のレベルにはなっていない)、参考価値は高い。これについて当所は以下に要点をまとめた。
・ 申立人が提起した申立てが法律の規定または事前の取決めに合致し、且つ民事権益紛争を生じていない場合、申立人が提起した申立てに基づき裁定を下す。
・ 申立人が提起した申立てが法律の規定または事前の取決めに合致しないが、民事権益紛争を生じていない場合、法律の規定または事前の取決めに基づき裁定を下す。
・ 申立人が提起した申立ておよび法律の規定または事前の取決めの如何を問わず、民事権益紛争を生じている場合、特別手順を終結し、申立人に別途提訴するよう告知する。

今後の実務においては、各地の裁判所の観点が異なることから、上述の原則に基づいて認定を行う際に用いる尺度もそれぞれ異なるものと思われる。

段階5:執行 –   裁判所が競売、換金を認める裁定を下した後、申立人は裁定に基づき裁判所へ執行を申し立てることもできる。
注意点  担保物権実現手順は非訟手続であり、非訟手続の判決後も依然として訴訟を提起することができる。申立人が獲得した弁済が不足する場合、依然としてその基本的な債権債務関係に基づき、債務者に対し訴訟を提起することができる。

以上をまとめると、担保物権実現手順はある程度において司法ルートで債権回収を実現する手順を簡素化したが、法的関係が複雑で、金額が大きな担保物権に適用されることは困難である。

現代商業の発展において、融資条件は絶えず引き上げられており、企業は通常、自己財産の担保価値を十分に利用し、一物件一担保という単純な担保関係は徐々に少なくなるものと思われる。関連司法解釈、付帯法規が公布されるまでの間、実務においては、やはり上述した関連紛争が生じ、更には担保物権実現手順の適用が不能となることも大いに考えられる。これに対し、企業は注意を払い、担保権者となる状況においては、関連契約書、証票、やり取りの情報などの証拠の留保に努めた上、担保物権実現手順の進展が頓挫した場合には、直ちに通常の訴訟手順に立ち返って準備することが望ましく、担保者またはその他の関連利益者となる状況においては、担保財産が担保物権実現手順を申し立てられた場合は、速やかに異議を申し立て、担保財産が誤って執行されることを回避しなければならない。

(里兆法律事務所が2014年4月14日付で作成)

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