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企業登録資本登記制度改革のその後:中国企業信用システムの構築(前半)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2014年10月15日

2014年2月7日、国務院は「登録資本登記制度改革方案の公布に関する国務院の通知」(国発〔2014〕7号)を公布し、全国範囲で登録資本登記制度改革方案(以下「改革方案」という)を実施することを正式に許可した。改革方案においては、登録資本引受登記制の実施を規定した以外にも、中国企業信用システムを構築する構想の初期段階の策定を終え、企業信用拘束システムの強化、中国企業の全体的な信用レベルの引上げを目指している。信用システム構築の具体的な措置には企業年度報告公示制度の実施、市場主体信用情報公示システムの構築、経営異常名簿などの名簿制度の確立などが含まれる。

改革方案の公布後、国務院およびその部門、地方政府は付帯規定を制定しまたは現在制定中であり、上記信用システム構築の関連措置は既に様々な地域範囲において実施されている。

以下の文において、筆者は現在の立法および実施状況に照らして、企業が注目している企業年度報告公示制度、市場主体信用情報公示システム、経営異常名簿などの名簿制度の3項目の措施について、簡潔な紹介と解読を行う。

1.信用システム構築措置その一:企業年度報告公示制度

改革方案によると、工商企業年度検査制度の実施を停止し、企業年度報告公示制度に変更して実施する。即ち、企業は年度の定められた期間内に、市場主体信用情報公示システムを通じて工商部門へ年度報告を申告し、社会に向け公示する。

現在、一部の省市、特別区域は既に企業年度報告公示制度の具体的な実施弁法を公布済みである。中国(上海)自由貿易試験区(以下「自由貿易区」という)を例にすれば、上海市工商行政管理局は2014年3月3日に「中国(上海)自由貿易試験区企業年度報告公示弁法(試行)」を発布し、即日実施を始めている。当該弁法は自由貿易区内企業の年度報告申告期間、報告内容、申告および公示などの手順、期限どおりに申告しなかった場合の法的責任などについて明確な規定を設けた。

全国的な規定について言えば、2014年4月17日、国務院法制弁公室は「企業情報公示条例(意見募集案)」(現時点では正式な文書は公布されていない)を公布し、当該意見募集案は企業年度報告公示制度を更に詳細にした。具体的には以下の通りである。

・企業が年度報告を申告し社会へ公示する期間を明確にした。毎年1月1日から6月30日まで。
・年度報告の内容を明確にした。(一)有限責任会社の株主または株式会社の発起人が引き受けおよび払い込んだ出資額、出資時間、出資方法などの情報、(二)企業従業員数、連絡住所、郵便番号、連絡電話、電子メールボックスなどの情報、(三)企業の開業、存続、事業休止、清算などの経営状態の情報、(四)対外投資設立企業情報、(五)ウェブサイトまたはオンラインショップの名称、リンク先などオンライン経営への従事に関する情報、(六)企業の資産合計、負債合計、売上高、主力業務収入、利益合計、純利益、納税額合計、所有者権益の合計情報。その中、企業は(一)から(五)までの情報を公示しなければならず、(六)の情報を公示するかを選択することができる。
・企業が年度報告公示義務に違反した場合の責任を明確にした。例えば、企業年度報告に記載された連絡方法を通じて連絡が取れない企業は経営異常名簿に記載される。公示情報に隠匿、瞞着があった場合、重大違法企業名簿に記載される。


【筆者の観点】

・全国で適用される「企業情報公示条例」が未だ制定を終えていないため、地方性規定が公布されていない地区(例えば上海市の自由貿易区以外の区域)においては、理論上、企業は当面の間年度報告を申告する必要はない(実務において、各地の工商部門には異なる要求があると思われるが、上海市について言えば、工商部門は差し当たり自由貿易区以外の区域の企業に対し年度報告の申告を求めていない)。2013年の年度報告をどの時点で、どのように申告するかの問題(時期は順延する必要があると思われる)については、筆者の推測するところ、工商部門は「企業情報公示条例」の正式公布後に、別途通知を行うものと思われる。

・外商投資企業について言えば、工商年度検査制度が廃止されたため、従来の商務、財政、税務、外貨など部門が工商部門と共同で実施していた「連合年度検査」は、既に商務、財政、税務、外貨などの部門で組織される「連合申告」に変更されている。筆者の見るところ、外商投資企業は「2014年外商投資企業年度経営状況連合申告作業の実施に関する通知」に基づき、2014年6月30日までに「連合申告」の年度報告を記入し提出しなければならないことに留意しなければならない。

・「企業情報公示条例」で意見募集案に含まれていた年度報告内容に関する規定が残された場合、今後、企業は取引相手、提携先などの年度報告を通じて、その従業員規模、対外投資、オンライン経営状況などの情報を迅速に把握することができ、更にはその資産、負債、利益などの財務情報をも把握することが可能となり、これは企業がDD調査を行ううえでのコストを大幅に引き下げることになる。

・「企業情報公示条例(意見募集案)」によれば、年度報告公示義務に違反した場合の法的責任は信用システム、経営異常名簿などと連動するとされており、併せて確認し、把握する必要がある。

(里兆法律事務所が2014年7月14日付で作成)

備考:
「中国(上海)自由貿易試験区企業年度報告公示弁法(試行)」
https://www.sgs.gov.cn/shaic/html/govpub/2014-03-06-0000009a201403060001.html
「企業情報公示条例(意見募集案)」
http://www.chinalaw.gov.cn/article/cazjgg/201404/20140400395727.shtml
「2014年外商投資企業年度経営状況連合申告作業の実施に関する通知」
http://file.mofcom.gov.cn/article/gkml/201404/20140400554154.shtml

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