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企業登録資本登記制度改革のその後:中国企業信用システムの構築(後半)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2014年10月17日

2014年2月7日、国務院は「登録資本登記制度改革方案の公布に関する国務院の通知」(国発〔2014〕7号)を公布し、全国範囲で登録資本登記制度改革方案(以下「改革方案」という)を実施することを正式に許可した。改革方案においては、登録資本引受登記制の実施を規定した以外にも、中国企業信用システムを構築する構想の初期段階の策定を終え、企業信用拘束システムの強化、中国企業の全体的な信用レベルの引上げを目指している。信用システム構築の具体的な措置には企業年度報告公示制度の実施、市場主体信用情報公示システムの構築、経営異常名簿などの名簿制度の確立などが含まれる。

改革方案の公布後、国務院およびその部門、地方政府は付帯規定を制定しまたは現在制定中であり、上記信用システム構築の関連措置は既に様々な地域範囲において実施されている。

以下の文において、筆者は現在の立法および実施状況に照らして、企業が注目している企業年度報告公示制度、市場主体信用情報公示システム、経営異常名簿などの名簿制度の3項目の措施について、簡潔な紹介と解読を行う。
(前半はこちら

2.信用システム構築措置その二:市場主体信用情報公示システム

改革方案は市場主体信用情報公示システム(以下「当該システム」という)の構築を求めており、同時に工商部門は当該システム上で市場主体の登記、届出、監督管理などの情報を公開し、企業は当該システム上で年度報告および取得した認証要件・認証要件資格に関する情報などを公示するように求めている。

「企業情報公示条例(意見募集案)」は当該システムの関連事項についてより具体的な規定を設けており、以下の内容が含まれる。
・工商部門は当該システム上で以下の企業情報を公示しなければならない。(一)企業登記、届出情報、(二)動産抵当登記情報、(三)持分抵当権設定登記情報、(四)行政処罰事件情報、(五)その他の法により公示しなければならない情報。
・その他の政府部門は当該システム上で以下の企業情報を公示しなければならない。(一)企業が取得した行政許可に関する情報、(二)企業が受けた行政処罰に関する情報、(三)その他の法により公示しなければならない情報。
・企業は当該システム上で年度報告を公示した上、以下の情報が形成された日から20業務日以内に当該システム上で公示しなければならない。(一)有限責任会社の株主または株式会社の発起人が引き受けおよび払い込んだ出資額、出資時間、出資方式などの情報、(二)行政許可の取得および変更に関する情報、(三)知的財産権質権設定登記情報、(四)受けた行政処罰に関する情報、(五)その他の法により公示しなければならない情報。
・企業が規定に従って当該システム上で関連情報を公示しなかった場合、重大違法企業名簿への記載などを含む法的責任を負わなければならない。

この他、「企業情報公示条例(意見募集案)」に付随して、国家工商総局は2014年5月12日に「企業公示情報抜取検査弁法(意見募集案)」を公布し、工商部門が企業の公示情報の真実性などについて抜取検査を行う制度を定めた。2014年6月6日には「企業信用情報公示システムを通じた工商行政管理機関行政処罰事件情報の公示に関する規定(意見募集案)」を公布し、各級工商部門が当該システム上で工商行政処罰情報を公示する手順などを定めた。

【筆者の観点】

・「企業情報公示条例(意見募集案)」によれば、工商部門とその他の政府部門はいずれも当該システム上において企業の関連情報を公布するため、本方面においては各部門の情報共有の実現に有利となり、企業が多くの部門に係わる事項を処理するに便利となる。また、行政処罰情報がシステム上で共有されれば、企業がある部門から処罰を受けた違法行為は、速やかにその他の部門の知るところとなり、その職権と関連する場合、より迅速に反応し、企業に対し更なる調査と処罰が行われるものと思われる。

・「企業情報公示条例(意見募集案)」は企業に対し、株主が引き受けおよび払い込んだ出資額などの状況に変更が生じた場合、当該システム上で直ちに更新するように求めている。筆者が見るところ、本要求は登録資本引受登記制の実施とセットであると判断する。引受登記制の実施後、払込資本は工商登記事項ではなくなり、大衆は直接企業の営業許可証からその払込資本の状況を把握することができなくなるため、企業に対し当該システム上で当該情報を公示するように求めることで、その他の企業および社会大衆は当該システムを通じて関連企業の払込資本状況を把握し、その資金力を判断することができる。

・「企業情報公示条例(意見募集案)」は企業に対し、その行政許可の取得および変更に関する情報を公示するように求めており、これは企業が特定の資格要求のある(例えば危険化学品経営資格)取引において、潜在的な提携相手の資格状況を把握して、判断し選択するうえで一層便利となる。

3.信用システム構築措置その三:経営異常名簿などの名簿制度

改革方案は名簿制度の確立を提起しており、主に「経営異常名簿」と「重大違法企業名簿」(即ちブラックリスト)が含まれる。

「企業情報公示条例(意見募集案)」、「企業公示情報抜取検査弁法(意見募集案)」、及び国家工商総局が2014年5月12日に別途公布した「経営異常名簿管理弁法(意見募集案)」は、名簿制度について具体的な規定を設けており、以下の内容が含まれる。
・経営異常名簿に記載される状況:企業が法に従って年度報告公示義務を履行しなかった。企業が法に従って即時情報公示義務を履行しなかった。企業が登記した住所(経営場所)を通じて連絡が取れなかった。
・重大違法企業名簿に記載される状況:企業が経営異常名簿に記載されて満3年が経過する日から遡って60日を過ぎたときから、工商部門は企業信用情報公示システムを通じて、それに対し関連義務の履行を催告するが、期間満了後も依然として義務を履行していない場合、企業は重大違法企業名簿に記載される。
・名簿の記載、削除と利害関係者の異議申立てなどの手順。
・企業が名簿に記載された場合の好ましからぬ結果として、例えば、政府部門の行政許可、認証要件資格認定、監督管理、政府調達、工事入札募集・入札、国有地払下げなどの作業においては、企業情報を重要な勘案要素とするため、重大違法企業名簿に記載された企業およびその法定代表者または責任者は法により参入を制限しもしくはあ禁止される。

【筆者の観点】

・企業が名簿に記載されれば、行政許可、認証要件資格認定、工事プロジェクトなどを獲得できなくなるものと思われ、影響は大きい。よって、企業は名簿に記載される状況などに関する規定に注意を払い、期日までに年度報告を申告しなかったり、公示情報に瑕疵があるなどの状況をできる限り避けることが望ましい。

・「経営異常名簿管理弁法(意見募集案)」は名簿からの削除、利害関係者の異議申立てなどの制度を定めており、名簿に記載される状況が生じた場合には、企業は当該制度を十分に活用し、速やかに名簿から削除されるように努めることが望ましい。

改革方案および関連意見募集案の構想によれば、上述した複数項目の措置は有機的な結合、相互補完を行い、共同で中国企業信用システムを構築していく。今後、「企業情報公示条例」などの法令が正式に公布、施行された際、上記改革措施はある部分において本文で紹介および解読した内容と異なる可能性がある。これについて、筆者は継続して留意していく。

(里兆法律事務所が2014年7月14日付で作成)

備考:
「中国(上海)自由貿易試験区企業年度報告公示弁法(試行)」
https://www.sgs.gov.cn/shaic/html/govpub/2014-03-06 0000009a201403060001.html
「企業情報公示条例(意見募集案)」
http://www.chinalaw.gov.cn/article/cazjgg/201404/20140400395727.shtml
「2014年外商投資企業年度経営状況連合申告作業の実施に関する通知」
http://file.mofcom.gov.cn/article/gkml/201404/20140400554154.shtml
「企業公示情報抜取検査弁法(意見募集案)」
http://www.saic.gov.cn/gzhd/zqyj/201405/t20140512_145052.html
「企業信用情報公示システムを通じた工商行政管理機関行政処罰事件情報の公示に関する規定(意見募集案)」
http://www.saic.gov.cn/gzhd/zqyj/201406/t20140606_145766.html

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