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ログイン2015年4月3日
使用者は取決めに従って公平合理的に労働者の職務内容を変更することができる
Key Point:
使用者は生産経営の必要に基づき、契約の取決めに従って公平合理的に労働者の職務内容を調整することができる。ただし、関連調整により労働者に対し不利な影響を与えてはならない。
基本背景:
1.胡某は2010年6月3日に某機械会社に入社した。双方は労働契約において、胡某の業務を射出成型作業場での射出成型作業とし、また、会社は生産経営の必要に応じて、合理的、信義誠実の原則に照らし法に従って胡某の勤務配置を変更できると取り決めた。
2.労働契約締結後、会社は民主的手順を通じて制定した「従業員賞罰制度」を胡某に渡した。当該「従業員賞罰制度」には、従業員が会社の合理的な業務手配に従わず、労働の提供を拒否し、注意教育後も効果がない場合、会社は労働契約を解除できると定められていた。
3.2013年5月20日、射出成型作業場の生産業務は不足しており、組立作業場ではある製品を緊急に客先へ納品する必要があったため、会社は組立作業場の処理工程の中、比較的簡単な作業を射出成型作業場に分配して行った。胡某は当該作業が射出成型作業場の作業に該当しないと考え、会社の業務手配を拒否し、労働を提供しなかった。
4.2013年5月24日、会社は教育後も効果がないと判断し、労働組合に意見を求めた上で、会社規則制度への重大違反を理由に胡某との労働契約を解除した。胡某は労働仲裁を申立て、労働契約の違法解除に伴う賠償金の支払いを求めた。
5.労働仲裁委員会は、会社が胡某の職務内容を一方的に調整したことは、法令の規定ならびに双方の取決めおよび公序良俗に違反するものではなく、胡某が会社の業務手配に従わなかったために、会社がその労働契約を解除したことは不当にあたらないと判断し、胡某の仲裁請求を支持しない仲裁判断を下した。
事件の焦点:
1. 「公平合理」をどのように判断するか
たとえ使用者が労働者との労働契約において「使用者は経営の必要に応じて労働者の勤務配置を変更できる」と取り決めているとしても、実際に変更する際には、使用者は必ず「公平合理」であることを証明しなければならない。「公平合理」とは、主に「生産経営に必要である、変更後の職務と変更前の職務には一定の関連性がある、変更後に従業員の降格・減給を行わない、変更後の職務内容は一般的に許容可能な範囲に該当する、公序良俗に反しない」などの点から判断する。本件においては、会社が一時的に調整した胡某の職務内容は、胡某の通常作業ではないとしても、会社の行った胡某の職務内容の調整が会社の生産経営の客観的な必要に基づくものであり、且つ当該作業の処理工程が簡単である上に、本人の労働密度を加重せず、賃金待遇も引き下げていないため、一般的に許容可能、合理的な変更範囲に該当する。このため、会社が一方的に胡某の職務内容を調整したことは、「公平合理」の要求に合致している。
2. 労働契約における勤務配置の変更に関する取決めをどのように理解するか
勤務配置は通常、労働者の職務内容に関する重要な体現方式であり、職務内容は労働契約の必須条項でもあるため、多くの使用者は労働者との労働契約において勤務配置の変更についての取決めを設けている。本件では、双方は労働契約において、会社は生産経営の必要に応じて、合理的、信義誠実の原則に照らし法に従って胡某の勤務配置を変更できると取り決めているため、会社が変更の合理性を証明しさえすれば、原則として取決めに基づいて変更することができる。ただし、契約における取決めは勤務配置を変更できるかを判断する際の必要条件とはならない。実務においては、たとえ双方が労働契約において何の取決めも行っていないとしても、「十分な合理性」を備えていれば、使用者はやはり労働者の勤務配置を一方的に変更することができる。なお、一度労働仲裁または訴訟手順に進んだ場合、これらの状況においては、使用者の「合理性」を証明しなければならない挙証責任は更に重くなる。
3.勤務配置を合理的に変更したが、労働者が従わない状況において会社はどのような措置を講じることができるか
使用者が労働者の勤務配置を合理的に変更したにもかかわらず、労働者が従わない場合、使用者は会社の「就業規則」または「賞罰制度」などの規定に基づいて、相応する過失の記録、労働契約の解除などの措置を講じることができる。本件では、会社の「従業員賞罰制度」は民主的手順を通じて制定されたものであり、事前にその内容を胡某に確認させていたが、胡某は本状況においても依然として業務手配に従わず、会社の正常生産秩序に影響を与えているため、その行為は会社の規則制度への重大違反を構成し、会社は胡某との労働契約を解除することができる。
弁護士の意見:
1.勤務配置の変更は原則として労働契約内容の変更に該当し、「労働契約法」第35条では、「使用者は労働者と協議合意の上、労働契約で取り決めた内容を変更することができる。労働契約の変更は、書面形式を採用しなければならない」と規定している。このため、使用者が労働者の勤務配置を変更する際、事前に従業員と十分な協議を行い、従業員の理解と協力を得た上で、書面による変更協議書を締結することが望ましい。労働契約の主要内容を変更しない、または変更はあるが確かに使用者の生産経営に必要であり、且つ労働者の報酬およびその他の労働条件について不利な変更を行っていない場合、原則として、労働者は手配に従う義務がある。本状況において、従業員が勤務配置の調整について使用者と合意を得られない場合、使用者は雇用自主権を行使し、当該従業員に対し合理的な配置転換を行うことができる。
2.使用者に雇用自主権を行使する権利があることは、恣意に労働者を支配できることを意味するものではない。使用者が契約の取決めまたは規則制度に定められた条件および手順に従って配置転換を行う際には、調整後の職務が労働者の実際の履行における困難を生じないこと、調整前後の職務勤務場所および職務内容が大きくかけ離れないことなどを保証しなければならない。実際に発生した事件では、ある企業が経営上の必要を理由に、技術者を守衛に調整し、事務職を清掃係に調整したが、これは明らかに一般的に許容可能な範囲を超えており、その合理性について労働仲裁機関および法院から認可を得ることは困難である。
3.労働契約の主な内容を変更しない前提の下、原則として使用者は雇用自主権を行使し、合理的な調整を行うことができる。このため、使用者は従業員と締結する労働契約において、勤務場所および勤務配置をやや広く取決め、例えば職務を管理職、現場職などと取決め、双方の労働契約に違反しない前提の下で、従業員の勤務配置を転換できるようにすることが望ましい。
4.使用者は労働者の勤務配置変更の際に合理性を証明する挙証義務を負うため、使用者が配置転換を行う際には、職務の変更が労働者に与える不便について、合理的な措置を講じて補填することが望ましい。例えば、勤務場所の変更を行う場合は送迎バスを用意しまたは通勤手当を支給し、作業内容の変更を行う場合は技術指導を行うなどである。使用者は、調整の合理性を証明するため、変更が労働者に与える不利な要素をできる限り軽減しなければならない。
(里兆法律事務所が2015年3月6日付で作成)
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