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ログイン2015年12月17日
2014年12月9日、中国国務院は「税収などの優遇政策の見直し規範化に関する通知」(国発[2014]62号、以下「62号文」という)を公布した。また、同月22日には、財政部が「国務院が下した税収などの優遇政策を見直し規範化する決定手配の実施徹底に伴う若干事項に関する通知」(財預[2014]415号、以下「415号文」という)を公布した。これにより、中国は税収などの優遇政策を全面的に見直し、規範化する作業を開始した。
長期にわたり、税収などの優遇政策は、ある程度において中国各地区の投資増加、産業集中および社会の発展などを促進してきたが、以下の点に気付くこととなった。①地方政府は地元経済の発展を加速するため、税収などの優遇政策を企業誘致の切り札と見ており、税収などの優遇が過剰、氾濫する現状を招いた。②過剰、氾濫する税収などの優遇政策は同時に市場の資源配置機能を大幅に阻害し、同時に税収法の権威および公平性を損ない、国家税収の流失を招いた。③少なからぬ地域のいわゆる税収などの優遇政策が実際には法律が定めた枠組みを逸脱している(更には管理無秩序の状態にある)など。このため、過去の年度において複数回の見直し要求を提起した後に、中国国務院、財政部は改めて62号文、415号文を公布し、税収などの優遇政策を全面的に見直し、規範化する作業を開始した。
今回の税収などの優遇政策の見直しおよび規範化作業は、多くの物議を醸し出した。62号文、415号文に対する公式メディアの主流観点は主に、長期的に見て、本件は現代財政体制の確立、税制の統一、規範化および税収は法律で定める原則の実現において、積極的な作用を及ぼし、公平な市場競争秩序の確立にも有利であるとしている。
以上の通りではあるが、これは同時に外商投資企業を含む市場経営主体への大きな圧力となり(ある程度において、関係企業の税負担を重くする)、また、地方政府の権威を損なうものと思われ、特に地方政府が承諾していた関係企業への優遇政策(更には書面契約を締結している優遇政策)が取り消されまたは規範化されるとなれば、なお更である。このため、情報筋によれば、62号文、415号文は地方政府、企業からの反対(または「消極的な対応」)を受けた。そのうち、実務処理の過程において、突出している問題は以下の通りである。
1. 地方政府の伝統的な税収優遇による企業誘致方式が打撃を受け、特に現在行われている中西部地区の企業誘致への影響が最も顕著であり、客観的に中国経済の下降圧力を一段と高めることになる。
2. 62号文、415号文で使用している語調は強硬であり、例えば、「法令に違反し、法令根拠のない優遇政策は断固廃止する」、「法律違反、規則違反の優遇政策は2014年12月1日から一律に実施を停止する」などであり、理論上は、今次見直し(廃止)後の税収などの優遇政策は、即時発効、移行期間なし、補償なしであり、多くの「既に契約締結済みであるが実施を完了していない」投資プロジェクトが停滞し、成り行きを見守る苦境に直面している。
3. 「既存の優遇政策を変更できるか」、「制定済みの一連の政策、締結済みの契約が継続的に有効であるか、過去に遡る問題は存在しないか」などについては、62号文、415号において更に明確にする規定は設けられておらず、地方政府に契約違反のリスクをもたらし、地方政府の公信力の擁護に不利となっている。
上述した様々な意見および直面すると思われる苦境に基づき、実際に、2015年3月の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)の期間において、中国財政部部長は、優遇政策見直し活動は全国で統一的に手配されるが、マクロ経済情勢が大きな下降圧力に直面している現状においては、経済情勢に応じて手配を進めることを公式に表明した。
2015年5月10日、国務院は「税収などの優遇政策関連事項に関する通知」(国発[2015]25号,以下「25号文」という)を公布し、62号文の実施を一時停止することを明確に示したが、これも昨年年末に始まった税収などの優遇政策の見直し作業が棚上げされたことを意味する。25号文の公布後、一部の意見では、これは62号文の否定であり、税収優遇の見直し、規範化作業の後退を意味するとの見解も聞こえている。
筆者の理解では、経済の下降圧力が増大する現状において、地元経済の成長促進に対する地方政府の積極性に打撃を与えぬよう、25号文の公布は、ある程度において、中央と地方の駆け引きの過程において、中央から地方に対する一つの「妥協」または「譲歩」と見ることができるが、25号文の通知内容自体から判断すれば、筆者の見るところ、前述の意見は完全に正確ではなく、25号文の理解は62号文に対する「婉曲な調整」であると思われる。具体的には、状況に応じて25号文は異なる要求を定めている。
項目 | 簡潔な説明 |
国家が統一的に制定した財税優遇政策 | ・プロジェクト毎に完了まで実施しなければならない。 |
各部門および地方政府が公布済みの優遇政策 | ・移行期間の緩和調整政策を明確にした。それは以下の通りである。 ⇒優遇政策に期間の定めのある場合、所定の期間に基づき実施する。 ⇒期間の定めのない、または確かに調整が必要な場合、地方政府および関係部門が周期掌握、安定維持の原則に照らして移行期間を設定し、移行期間においては継続的に実施する。 |
各地が企業と締結済みの契約における優遇政策 | ・尊重、承認する(企業誘致時に締結した関連契約を含む)。それは以下の通りである。 ⇒過去に取り決めた優遇政策は継続的に有効とする。 ⇒履行済みの部分については、過去に遡らない(返還を求めることはない)。 |
今後制定公布する新たな優遇政策 | ・関連政策の具体的な内容に応じて異なる要求を提起した。それは以下の通りである。 ⇒法律、行政法規に規定がある事項を除き、税収または中央の許可を受けて設定された非税収入にかかわる場合、国務院に報告し許可を受けた上で実施しなければならない。 ⇒それ以外は地方政府および関係部門の許可を受けた上で実施するものとし、そのうち、支出の手配は通常、企業が納める税収または非税収入と関連させてはならない。 |
上記規定によれば、25号文の最大の特徴は、税収優遇などの政策見直し作業に対し「新旧区分」(即ち、現行の優遇政策については基本的に承認するとし、実施完了できる)を実行することである。上記の通りではあるが、留意すべき点として、25号文は依然として「税収は法律で定める」原則を貫徹し、強調しており、例えば、地方政府がこれまで頻繁に採用していた税収の「先行徴収事後返還」による財税補助優遇政策は、将来的に25号文の規定への違反に起因して継続的に採用することはできなくなると思われる。このほか、25号文の最後では、62号文で定める個別の見直し作業については、今後、別の手配が行われるのを待って改めて進めることを示しており、本点も今後の税収などの優遇政策の全面的な見直しおよび規範化作業に「余地」を残している。
「税収優遇、特に地域税収優遇などの政策に対する規範化管理の強化」が第十八期三中全会において明確に提起されており、現在、一部地方に存在する税収などの優遇政策が既に国家税制の規範化および市場の公平競争に大きな影響を及ぼしていることから、たとえ25号文の公布により地方政府および関係企業に一つの移行期間を与えたとしても、長期的に見れば、規範的でない税収などの優遇政策が廃止されるのはやはり自然な成り行きであろう。
以上から、投資者としては、25号文の規定に照らせば、「各部門および地方政府が公布済みの優遇政策」および「各地が企業と締結済みの契約における優遇政策」の部分については、現在のところ継続的に享受することができ、過度に心配する必要はない。ただし、同時に留意すべき点として、中国経済の下降圧力が徐々に軽減された後、元の62号文で定める個別の見直し作業が再開されるか、企業が享受している「税収は法律で定める」原則に一致しない税収優遇が再度「清算」のリスクに直面するかについては、依然として大きな不確実性が存在する。今後の関連政策の具体的な動向などについては、筆者も引き続き注目していく。
(里兆法律事務所が2015年8月3日付けで作成)
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